アワビ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/08 10:05 UTC 版)
食中毒
希に、春先のアワビ類の中腸腺の摂食により、光過敏症の中毒症状を発症することがある[4]。これは、アワビの餌である海藻のクロロフィルに由来するピロフェオホルバイドaとクロロフィルaによる物であるが、季節性を持つ蓄積の理由は明らかになっていない。この光過敏症に関しては、東北地方には「春先のアワビの内臓を食べさせるとネコの耳が落ちる」という言い伝えがある。
症状
中腸腺の摂食後、日光に当たり1-2日で、顔面、手、指に発赤、はれ、疼痛などを起こす。重症例では、やけどの様な水泡を生じ化膿することもある。全治には3週間程度を要する。対策は、春先に中腸腺を摂食しないこととなるが、色で見分けることもできる。
- 無毒な中腸腺:灰緑色ないし緑褐色、有毒な中腸腺:濃緑黒色
薬用
中国医学ではアワビ属のミミガイ、フクトコブシ、エゾアワビなどの貝殻を、「石決明」(せきけつめい)と称して、薬用にしてきた。「清肝明目」(せいかんめいもく)、即ち、肝機能を改善し、同時に目の機能を高める効果があるとする。主成分は炭酸カルシウムであるが、現在は中国においても日本においても局方には入っていない。
セラミック
アワビの貝殻は大変丈夫でハンマーで叩き割ろうとしても簡単には割れないほどであり、アワビの貝殻の構造をヒントに割れにくい丈夫なセラミックの開発が進められている[5]。このセラミックは宇宙船や人工関節、義歯、省エネ素材などへの利用が期待されている。
その他
貝殻をボタンやネクタイピン、真珠、ネックレス、指輪等の装身具などに用いる。また、殻の裏側には非常に美しい真珠光沢(干渉色)があり、ごく薄く切り出したものを螺鈿細工などの工芸材料に用いる。
また、鮑玉と呼ばれる[6]天然真珠を作り出すことに着目し、殻の真珠層を利用して真珠の養殖に使われることもある[7]。
漁業
養殖・放流事業
養殖の稚貝には餌として、褐藻類を与えるものと、人工飼料やアラメ等を与えるものがある。後者は、殻が青から緑色になっており、成貝となってもこの色が消えることはない。
陸揚げ漁港
- 2002年度(平成14年)
注:漁獲量は年度により異なる。また、貝も同種ではない。市町村単位、県単位でも順位が異なる。
密漁
密漁の対象となりやすく、2018年現在、日本で流通するアワビの45%が密漁品であると推測する者もいる[8]。
その結果として、比較的よく利用される世界の54種のうち20種について、天然物が絶滅の危機にある。
- ^ “魚介類の名称表示等について(別表1)” (PDF). 水産庁. 2013年4月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月29日閲覧。
- ^ “乾鮑について”. 吉浜漁業協同組合. 2012年10月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年1月25日閲覧。
- ^ a b c d 『甲州食べもの紀行』(山梨県立博物館、2008年)、pp.30 - 31
- ^ 自然毒のリスクプロファイル:巻貝:ピロフォルバイドa(光過敏症) 厚生労働省
- ^ ネイチャーテック|ハンマーで殴っても、車でひいても大丈夫!丈夫なアワビの貝殻の秘密
- ^ 『万葉集』巻第六・933番に「鮑珠」と表記が見られる。
- ^ 向井広樹 ほか、アワビ真珠層の構造と成長機構について 日本鉱物学会・学術講演会,日本岩石鉱物鉱床学会学術講演会講演要旨集 2007, 179, 2007-09-22, NAID 10019865601
- ^ “暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」のリアル”. 東洋経済オンライン (2018年10月6日). 2018年11月23日閲覧。
- ^ Haliotidae Rafinesque, 1815 WoRMS
- ^ Haliotis Linnaeus, 1758
- ^ 千家尊統『出雲大社』(学生社、1968年8月25日)167頁
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