逆転写酵素
英訳・(英)同義/類義語:reverse transcriptase, Reverse transcriptases
RNAを鋳型にDNAを合成する酵素。原始的なDNAポリメラーゼともいえ、レトロウイルスやレトロトランスポゾンにコードされている。遺伝子クローニングに使われる重要な酵素。
酵素タンパク質モチーフなど: | 触媒サブユニット 誘導タンパク質 軽鎖 逆転写酵素 遅延性カリウムチャネル 運搬体タンパク 遺伝子抑制タンパク |
逆転写酵素
【概要】 人間の細胞ではDNA(デオキシリボ核酸)の情報が、RNA(リボ核酸)に伝えられるのが本来の流れであり、これを転写という。ところがHIVの遺伝子はRNAだから、そのままでは人間の遺伝子に入り込むことができない。レトロウイウスの仲間は、感染するときにコピイ機というべき逆転写酵素を細胞内に一緒にもちこむ。この酵素はRNAからDNAへの転写(コピイ)をしてしまう。逆転写酵素は一種のDNAポリメラーゼであると言える。この酵素の働きを邪魔する薬(=逆転写酵素阻害剤)があればHIV感染症の治療薬として有効である。

逆転写酵素
![]() | この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2023年1月) |

逆転写酵素(ぎゃくてんしゃこうそ、英: reverse transcriptase、EC 2.7.7.49)は、RNA依存性DNAポリメラーゼ (RNA-dependent DNA polymerase) のこと。逆転写反応 (reverse transcription) を触媒する酵素。1970年、ハワード・マーティン・テミンとデビッド・ボルティモアによるそれぞれ別の研究により見出された。
この酵素は一本鎖RNA を鋳型として DNA を合成(逆転写)するもので、レトロウイルスの増殖に必須の因子として発見された。それまで、DNA は DNA自身の複製によって合成され、遺伝情報は DNA から RNA への転写によって一方向にのみなされると考えられていた(セントラルドグマ)が、この酵素の発見により遺伝情報は RNA から DNA へも伝達されうることが明らかとなりセントラルドグマの例外とも言われていたが、しかしこれは充分に起こり得ることであり真に起こりえないのはタンパク質のアミノ酸配列からゲノムが転写される方である(一つのアミノ酸コードに対し複数のゲノム配列があるため。及びアミノ酸をコードしない配列があるため)。
逆転写酵素はまた cDNA の合成に利用され、遺伝子工学や細胞で活動している遺伝子の同定など分子生物学的実験には必須の道具となっている。
レトロウイルスは RNA しか持っていないため逆転写して cDNA を作る。HIV などの増殖に必須であり、阻害剤が治療薬剤として使用される。エイズの治療薬として有名なアジドチミジン (AZT) をはじめとして、ddC、ddI、ネビラピン、ピリジノン、HEPT などの抗エイズ薬は HIV の逆転写酵素の作用を阻害する。
レトロウイルス以外にも、DNAウイルスであるB型肝炎ウイルス (HBV) の増殖にも必須の因子であることが分かっている。B型肝炎ウイルスは転写でプレゲノムRNAを生成したのちに逆転写によってDNAを合成している。B型肝炎の治療薬として用いられるラミブジン、アデフォビル、エンテカビル、テノフォビルといった薬剤はHBVの逆転写酵素の作用を阻害する。
関連項目
脚注
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