S/2025 U 1とは? わかりやすく解説

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S/2025 U 1

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/24 03:36 UTC 版)

S/2025 U 1
2025年2月2日ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって観測された S/2025 U 1 の画像。天王星とその環の近くを公転する他の13個の衛星(コーディリアのみ映っていない)も映っている[1]
見かけの等級 (mv) 25.5 ± 0.2Hバンド[2]
分類 天王星の衛星
規則衛星
発見
初観測日 2025年2月2日(画像撮影日)[2]
発見者 Maryame El Moutamid et al.[2]
発見場所 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡
軌道要素と性質
軌道長半径 (a) 56,250 ± 250 km[2]
離心率 (e) ≈0[2]
公転周期 (P) 0.402 [2](9.648 時間
平均軌道速度 896°/日[2]
軌道傾斜角 (i) ≈0°
天王星の衛星
物理的性質
半径 4 - 5 km[2]
(アルベドの仮定値に基づく)
アルベド(反射能) 0.05 - 0.10(仮定)[2]
Template (ノート 解説) ■Project

S/2025 U 1 は、天王星公転している衛星の一つである。天王星のすぐ近くを公転している内衛星であり、2025年ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測から発見された。

発見と命名

2025年2月2日アメリカサウスウエスト研究所英語版の研究者である Maryame El Moutamid らによる研究チームがジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) に搭載されている近赤外線カメラ (NIRCam) を用いて天王星の環やその近くを公転している小型の内衛星の観測を行い、 約36分間に渡る露出時間を持たせた10枚の近赤外線画像を撮影した[2][3]。この観測で撮影された画像の解析から、天王星の環のすぐ外側を公転している新たな衛星と思われる天体が発見された[1][2][4]。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による観測から新たな衛星の存在が示されるのは S/2025 U 1 が初めてである[5]

この発見は同年8月19日天文電報中央局 (CBAT) が発行している Central Bureau Electronic Telegram (CBET) にて公表され、S/2025 U 1 という仮符号での名称が与えられた[2]小惑星センターが発行する小惑星電子回報 (Minor Planet Electronic Circular) や査読プロセスを経た学術論文には S/2025 U 1 の記載はまだ無いが[1][5]、今後、国際天文学連合 (IAU) による承認を得た上で正式に固有名が命名される予定となっている[1][4]。天王星の衛星はウィリアム・シェイクスピアおよびアレクサンダー・ポープの作品に登場する人物から固有名が命名されるのが慣例となっているが、S/2025 U 1 の発見に関わった共同研究者である Mark R. Showalter は科学雑誌ニュー・サイエンティストでのインタビューにおいて「命名の議論はすでに行われているが、最終的な候補はまだ決まっていない」と述べている[6]

特徴

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって撮影された10枚の長時間露出画像を繋げたアニメーション。白丸が S/2025 U 1 であり、他の内衛星と共に天王星の周りを公転している様子が分かる。

S/2025 U 1 は天王星の5個の大型衛星よりも内側を公転している小型の内衛星としては14番目に発見された衛星であり[1]、この前に天王星の内衛星の発見が報告されたのはマブキューピッド2003年まで遡る[7]。天王星中心からの軌道長半径は 56,250 km であり、これは天王星の環で最も明るく見えるε環のすぐ外側のオフィーリアビアンカの間に位置していることになり[2]、3番目に天王星に近い既知の衛星となる[5][8]公転周期は約9.6時間で[2]、ほぼ完全に円形の軌道を公転していることから、S/2025 U 1 は現在の位置付近で形成された可能性が示唆されている[1][4]

アルベド(反射能)が周囲の内衛星と同程度の 0.05 から 0.10 であると仮定すると、S/2025 U 1 の半径は 4 km から 5 km と推定され[2]、これはそれまでに知られていた小型の内衛星の中よりも小さい[1]。S/2025 U 1 の発見までに知られていた内衛星の中で最も小さいとされていたのは半径が約 9 km と推定されていたキューピッドで[9]不規則衛星まで含めた全ての天王星の衛星の中で最も半径が小さいと推定される S/2023 U 1 の約 4 km とほぼ同等である[8]近赤外線波長で観測するHバンド英語版でもその明るさは25.5等級であり、1986年に天王星のフライバイ探査を行ったボイジャー2号地球周回軌道上のハッブル宇宙望遠鏡による観測では暗すぎて検出できなかったと考えられている[1][2][4]。S/2025 U 1 の発見は天王星とその周囲の衛星と環に及ぶ複雑な構造について、多くのことが分かっていないことを示す発見であるとも評されている[4]

出典

  1. ^ a b c d e f g h NASA WebbMission Team (2025年8月19日). “Blogs - James Webb Space Telescope | New Moon Discovered Orbiting Uranus Using NASA’s Webb Telescope”. NASA. 2025年8月20日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p Green, Daniel W. E. (2025年8月19日). “CBET 5593: S/2025 U 1”. Central Bureau Electronic Telegram. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 2025年8月23日閲覧。
  3. ^ Maryame El Moutamid et al. (2024年12月12日). “JWST Proposal 6379 - Structure and Dynamics of The Rings and Inner Moons of Uranus”. Space Telescope Science Institute. 2025年8月23日閲覧。
  4. ^ a b c d e Brett Tingley (2025年8月19日). “Scientists find tiny new moon around Uranus with the James Webb Space Telescope (photos, video)”. 2025年8月20日閲覧。
  5. ^ a b c 彩恵りり (2025年8月21日). “天王星の新衛星「S/2025 U 1」を発見 JWSTによる初の惑星の衛星の発見に”. 2025年8月23日閲覧。
  6. ^ Sparkes, Matthew (2025年8月19日). “New moon discovered orbiting Uranus is its smallest one”. New Scientist. 2025年8月23日閲覧。
  7. ^ Daniel W. E. Green (2003年9月25日). “IAUC 8209: S/2003 U 1, S/2003 U 2; P/2003 S2”. International Astronomical Union Circular. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 2025年8月23日閲覧。
  8. ^ a b Scott S. Sheppard. “Moons of Uranus”. Earth and Planets Laboratory. Carnegie Institution for Science. 2025年8月23日閲覧。(この一覧表では衛星の大きさは「直径」で記載されていることに留意)
  9. ^ Ćuk, Matija; French, Robert S.; Showalter, Mark R. et al. (2022). “Cupid is not Doomed Yet: On the Stability of the Inner Moons of Uranus”. The Astronomical Journal 164 (2): 38. arXiv:2205.14272. Bibcode2022AJ....164...38C. doi:10.3847/1538-3881/ac745d. ISSN 1538-3881. 

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