Laval Virtualとは? わかりやすく解説

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Laval Virtual

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/03/22 08:30 UTC 版)

Laval Virtual(ラバルバーチャル)は、フランスマイエンヌ県ラヴァル市で毎年開催される、仮想現実(VR)・拡張現実(AR)・複合現実(MR)など没入型技術に関するヨーロッパ最大級の国際展示会・カンファレンスである[1]。1999年の第1回開催以来、毎年3月から4月にかけて開催されており、2026年で第28回を迎える[2]

展示会に併設して、優れたVR/AR/XRプロジェクトを表彰するLaval Virtual Awards(ラバルバーチャルアワード)が授与される。また、学術国際会議VRIC(Virtual Reality International Conference、後にVRIC ConVRgenceに改称)や、デジタルアート展Recto VRsoも同時開催される。

概要

Laval Virtualは、VR/AR/MR(XR)技術の展示・カンファレンス・コンペティションを柱とする国際イベントである。会期は通常5日間で、前半の3日間は業界関係者向け、後半の2日間は一般公開となる[3]

近年の規模は、330以上の出展者が9,000平方メートル以上の展示スペースに集い、200名以上の講演者、18,000人以上の来場者を記録している[3]。展示対象はVR・ARのみならず、3Dインタラクション、ロボット工学人工知能モーションキャプチャブレイン・コンピュータ・インタフェース(BCI)、音声認識バイオメトリクス、ボリュメトリックビデオなど多岐にわたる[3]

歴史

創設(1999年)

Laval Virtualは、元フランス研究担当大臣でラヴァル市長を務めたフランソワ・ドベール(François d'Aubert)の発意のもと、1999年に創設された[3]。コンセプトの設計には、アンジェ大学教授でフュチュロスコープの共同創設者でもあるベルナール・タラヴェル(Bernard Taravel)、GART事務局長のギ・ル・ブラ(Guy Le Bras)、アール・ゼ・メティエ(Arts et Métiers ParisTech)教授のシモン・リシール(Simon Richir)が携わった[3]

1999年6月に開催された第1回では、8,000人以上の来場者を集め、広範なメディア報道と日本の大学の積極的な参加が注目された[3]。VRに特化した世界初の展示会として、ラヴァル市はテクノロジーの街としての地位を確立する大きな賭けに成功した。

成長と発展

ラヴァル市は1996年に設立したラヴァル・マイエンヌ・テクノポール(Laval Mayenne Technopole)を核に、VRを重点分野としたイノベーション推進戦略を展開していた[4]。人口約5万人のラヴァル市は、VRクラスター、スタートアップ企業群、研究所、テクノロジー移転センター、高等教育機関を擁する「ヨーロッパのVR首都」と称されるようになった[4]

2017年には、Laval Virtual協会、研究センターCLARTE、アール・ゼ・メティエ・ラヴァルキャンパスを集約したLaval Virtual Center(ラバルバーチャルセンター)が設立された[1]

COVID-19とバーチャル開催(2020年)

2020年、新型コロナウイルス感染症の影響により、Laval Virtualは史上初の完全バーチャル開催に移行した。「Laval Virtual World」と名付けられたこのバーチャル展示会は、VirBELAのプラットフォームを利用して2020年4月22日〜24日に実施された[5]。当初1,500人の参加を想定していたが、11,200人が登録し、6,000以上のアバターが会場を行き交った[6]

国際展開

2017年、Laval Virtualは中国・青島市崂山区政府との協定に基づき、Laval Virtual Asiaを開催した[7]。初回は2017年11月9日〜11日に開催され、90の出展者と4,000人のビジネス来場者を集めた。第2回(2018年)は27か国から123の出展者が参加した。青島市は没入型技術分野に5億ユーロを投じ、この分野の主要拠点になることを目指した。

主催組織

Laval Virtualは、没入型技術(VR/AR/MR)分野のフランスの非営利団体(association)である。本部はラヴァル市のLaval Virtual Centerに置かれている[1]

協会は「Gather(適切な人材を集め、ポジティブで意義ある影響を生む)」「Inspire(今日のイノベーターを明日のリーダーに育てる)」「Valorize(人類に貢献するイノベーションの価値を高める)」の3つの理念を掲げている[1]

共同創設者のシモン・リシールは、アール・ゼ・メティエの教授でもあり、LAMPA研究室の「Presence & Innovation」研究チームを率いている[8]

Laval Virtualは、フランスの没入型技術関連8団体で構成されるCNXR(Conseil National de la XR)の構成メンバーでもある[9]

Laval Virtual Awards

概要

Laval Virtual Awards(ラバルバーチャルアワード)は、1999年の第1回開催時から毎年授与されているVR/AR/XR分野の国際アワードである[10]。国際的な専門家の審査委員会が、応募プロジェクトの創造性、技術的品質、潜在的インパクトを評価し、各部門の最優秀プロジェクトを選出する。

アワードは大きく一般部門(General Categories)とReVolution コンペティションに分かれる。さらにGrand Prix(大賞)とIVRC賞が特別賞として授与される。

一般部門(General Categories)

一般部門のカテゴリは時代とともに変遷してきた。2026年時点の部門構成は以下の通りである[11]

部門名 対象
XR Devices and Interactions Products ハードウェアソリューション、VR/ARと対話するための革新的システム
Developer & Authoring Tools 没入型体験の設計を容易にするXR開発・制作ツール
XR for a Cause 社会的・環境的・社会的に好影響をもたらす没入型プロジェクト
Enterprise & Productivity Solution パフォーマンス、コラボレーション、ビジネス変革のためのXRアプリケーション
Education & Training 学習・教育・職業訓練を支援する没入型体験
Consumer Experience & Entertainment ゲーム、インタラクティブエンターテインメントなど、一般消費者向けXR体験

過去には「Industry」「Healthcare」「Services」「Sports」「Virtual Worlds」「Marketing or Advertising Campaign」「VR for a Cause」などの部門も設けられていた[12]

ReVolution コンペティション

ReVolution(レボリューション)は1999年からLaval Virtualと同時に設けられたコンペティションで、VR/AR分野の新興人材を顕彰する[10]。参加は無料で、受賞者はイベント期間中に展示ブースが提供され、業界の専門家からフィードバックを受けることができる。2023年時点のカテゴリは以下の通りである。

  • ReVolution #Research - 大学・研究機関・研究系企業が対象。最優秀受賞者にはSIGGRAPHへの渡航が贈呈される。
  • ReVolution #Startups - 設立3年以内の企業が対象。ヘルスケア、研修、不動産、観光など分野横断的。
  • ReVolution #Experiences - コンテンツクリエイター、開発者、スタジオが対象。
  • ReVolution #Students - Demo - 学生プロジェクトが対象。受賞者は日本のIVRCに招待される。
  • ReVolution #Students - Limited Time - 30時間のハッカソン形式。10チームがリアルタイムでVRアプリケーションを制作する。

主な受賞作品

部門 受賞作品 受賞者・組織
2013 Grand Prix / Interface and Materials AquaTop Display 電気通信大学 小池英樹研究室 日本
2014 Grand Prix du Jury Pixie Dust 落合陽一筑波大学 日本
2018 Grand Prix du Jury Voyage au cœur de l'Évolution フランス国立自然史博物館 / Fondation Orange / Manzalab フランス
2019 Grand Prix du Jury Apollo Moon Operations Orbital Views フランス
2020 VR/AR for a Cause Inveion The Parallel
2020 VR/AR for Productivity Braind 4.0 FIFTHINGENIUM イタリア
2020 VR/AR for Learning & Training AFT-SNCF VR Training Virtuose Reality Studio フランス
2021 Grand Prix VirtySens VirtySens
2021 Industry SenseGlove Nova SenseGlove オランダ
2021 Education & Learning Neoma Virtual Campus NEOMA Business School フランス
2021 ReVolution #Startups Olfy Olfy フランス
2021 IVRC Award Rebirth 2.0 Arts et Métiers フランス
2022 Healthcare Diva パスツール研究所 / CNRS フランス
2022 VR for a Cause Éternelle Notre-Dame Emissive フランス
2022 Entertainment & Medias JumpersVR Delusion
2023 Enterprise & Productivity Synergiz Harbor Synergiz フランス
2023 Hardware VIVE XR Elite HTC Vive 台湾
2023 XR for a Cause Meta Table β 神奈川工科大学 / オリィ研究所 日本
2023 ReVolution #Research Grand Prix MEcholocation 岐阜大学 日本
2024 XR Devices & Interaction Products VIVE Ultimate Tracker HTC Vive 台湾
2024 Enterprise & Productivity Nawo Live HRV Simulation フランス
2024 Developer & Authoring Tools PopcornFX Persistant Studios フランス
2024 ReVolution #Research Embrace 国立清華大学 台湾
2024 ReVolution #Experiences SEN CinemaLeap Inc. 日本

日本人・日本関係の受賞

日本はLaval Virtualとの関わりが深く、第1回開催時から日本の大学が積極的に参加してきた。主な日本関連の受賞には以下がある。

  • 2013年: 電気通信大学の的場やすし(博士後期課程)らによる「AquaTop Display」がGrand PrixおよびInterface and Materials Awardを同時受賞[13]
  • 2013年〜2017年: 落合陽一がLaval Virtual Awardを4年連続・計5回受賞。2014年には超音波浮揚技術「Pixie Dust」でGrand Prix du Jury(審査員大賞)を受賞した[14]
  • 2023年: 神奈川工科大学とオリィ研究所による「Meta Table β」がXR for a Cause部門を受賞[15]
  • 2023年: 岐阜大学のOGISO Naoki、SAKAI Hiroki、SAKAI Kokiらによる「MEcholocation」がReVolution #Research Grand Prixを受賞[16]
  • 2024年: CinemaLeap Inc.の「SEN」(日本の茶道を再現するインタラクティブ没入体験)がReVolution #Experiences部門を受賞。

IVRCとの連携

日本で毎年開催されるIVRC(Interverse Virtual Reality Challenge、旧称: International collegiate Virtual Reality Contest)とLaval Virtualは、2004年から国際協力協定を結んでいる[17]

この提携により、相互にアワードが設けられている。

  • 日本のIVRCでの「Laval Virtual賞」受賞チームは、フランスのLaval Virtualに招待される。
  • Laval VirtualのReVolution #Students部門の受賞チームは、日本のIVRCに招待される。

この交流の橋渡しには、白井暁彦(IVRC実行委員・Laval Virtual評議員)が大きな役割を果たしている[18]

IVRCの起源は1993年に遡り、岐阜県が1990年代にVR技術による地域振興を構想して設立した「VRテクノセンター」や、IAMAS(現・情報科学芸術大学院大学)に端を発する。Laval Virtualの現メンバーにも、この時期に日本のVR国際会議に参加した人物が含まれている[19]

VRIC(学術会議)

VRIC(Virtual Reality International Conference)は、Laval Virtualに併設される国際学術会議である。後にVRIC ConVRgenceに改称された。XR技術(VR/AR/MR)に関する基礎研究から産業応用まで幅広いトピックを扱い、研究者の議論と交流の場となっている[20]

論文集はACMから出版されており、優秀論文は International Journal of Virtual Reality に掲載される。

Recto VRso

Recto VRso(レクトヴェルソ)は、Laval Virtualに併設されるデジタルアート・没入型アートの国際展覧会・フェスティバルである[21]。アーティスト、研究者、学生、表現者が仮想現実・複合現実を素材として制作した作品を展示する。「Art&VR Gallery」では、国際公募で選出された約15作品の公式展示が行われるほか、ラヴァル旧市街の各所でもインスタレーションが展開される。

歴代開催

会期 備考
第1回 1999年 1999年6月 来場者8,000人以上、日本の大学が積極参加
第22回 2020年 2020年4月22日〜24日 COVID-19により初の完全バーチャル開催(Laval Virtual World)、6,000アバター
第25回 2023年 2023年4月12日〜16日 25周年記念
第26回 2024年 2024年4月10日〜12日 来場者5,500人
第27回 2025年 2025年4月 来場者5,000人、出展者160社
第28回 2026年 2026年4月8日〜10日 予定

関連項目

脚注

  1. ^ a b c d About us - Laval Virtual”. Laval Virtual. 2026年3月22日閲覧。
  2. ^ Laval Virtual - from 8 to 10 April 2026”. Laval Virtual. 2026年3月22日閲覧。
  3. ^ a b c d e f About Laval Virtual”. Le Blog de Laval Virtual. 2026年3月22日閲覧。
  4. ^ a b Laval Virtual Reality Cluster”. Interreg Europe. 2026年3月22日閲覧。
  5. ^ Laval Virtual 2020, a 22nd edition out of reality”. Le Blog de Laval Virtual. 2026年3月22日閲覧。
  6. ^ Laval Virtual World 2020 Event Draws Over 6,600”. Virbela. 2026年3月22日閲覧。
  7. ^ The Laval Virtual Center, a concentrate of innovation”. Le Blog de Laval Virtual. 2026年3月22日閲覧。
  8. ^ Simon RICHIR - Professor - Arts et Métiers”. ResearchGate. 2026年3月22日閲覧。
  9. ^ Le Conseil National de la XR (CNXR) est officiellement lancé à Laval Virtual !”. Augmented Reality (2022年4月). 2026年3月22日閲覧。
  10. ^ a b ReVolution competitions: VR/AR innovations in the spotlight”. Le Blog de Laval Virtual. 2026年3月22日閲覧。
  11. ^ General Categories - Laval Virtual Awards”. Laval Virtual. 2026年3月22日閲覧。
  12. ^ All the winners of the Laval Virtual Awards 2021”. Le Blog de Laval Virtual. 2026年3月22日閲覧。
  13. ^ 的場やすしさんらがLaval Virtual 2013でGrand Prix および Interface and Materials Awardを同時受賞”. 電気通信大学. 2026年3月22日閲覧。
  14. ^ ピクシーダスト”. 落合陽一公式ページ. 2026年3月22日閲覧。
  15. ^ 「Meta Table β」が Laval Virtual Award 2023(XR for a Cause)を受賞”. 大学プレスセンター. 2026年3月22日閲覧。
  16. ^ GU Students win the Grand Prix at "Laval Virtual"”. Gifu University (2023年5月). 2026年3月22日閲覧。
  17. ^ Overview - IVRC2022”. IVRC. 2026年3月22日閲覧。
  18. ^ Akihiko Shirai, ambassador of virtual technologies in Japan”. Le Blog de Laval Virtual. 2026年3月22日閲覧。
  19. ^ The Future of XR at Laval Virtual Festival 2023 — Part 1”. STYLY. 2026年3月22日閲覧。
  20. ^ Proceedings of the Virtual Reality International Conference - Laval Virtual 2017”. ACM. 2026年3月22日閲覧。
  21. ^ Recto VRso”. Recto VRso. 2026年3月22日閲覧。

外部リンク




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