Cレーション

Cレーション(英:C-ration)とは、アメリカ軍が第二次世界大戦前の1938年から開発し、1945年にかけて製造、配給したレーション(戦闘糧食)の一区分(分類)である。
当時の米軍にはすでに「Aレーション」および「Bレーション」があり、それらについで登場した区分なので「Cレーション」と命名された。
Aレーションが駐屯地給食用の未調理生鮮食材、Bレーションが包装済み未調理食材であったのに対し、Cレーションは缶詰にされた調理済みの料理であり、なおかつ兵士が1日3食で1日に必要な栄養素・熱量を摂取できるよう設計されていた。
なお1961年から生産・支給されたMCIレーション(Meal, Combat Individual、個人用戦闘糧食)も缶詰を中心とした構成であり「Cレーション」と通称されることがある。
概要
- 歴史
Cレーションの起源は第1次世界大戦中に遡る。兵士1人が1日3食で必要な栄養を得られ、保存性・味・栄養バランスも良く、補給の便や携帯性も良い、という条件を設定し開発が行われた。戦後も研究は続き、兵站研究所(Quartermaster Subsistence Research and Development Laboratory)の初代所長であるW.R.マクレイノルズ少佐によって、Cレーションが開発された。
マクレイノルズ少佐はそれまでの味が単調なビスケット等を中心とした保存糧食に「ビーフシチュー」や「肉入り麺」、「アイリッシュシチュー」といった家庭的なメニューを12オンス(340g)入りの長方形の缶詰にしたものを加える事を提案した。
1939年の6月には容器形状が円筒形とし、9月には当初10種類のメニューが予定されていた中から3つの肉ユニット「ミート&ビーンズ」「ミートポテトハッシュ」「ミート&ベジタブルシチュー」と3つのビスケットユニットとで構成されるレーションとして開発。この1日分の糧食が6つの缶で構成される試作品は好評で、補給本部の技術委員会から、リザーブレーションの後継としての開発を認められた。だが開発延長用の資金としては、300ドルしか研究所に与えられなかった。
1939年までに研究所は10種類の主食案を提案し、それまでの12オンス(340g)入りの長方形缶の代わりに16オンス(454g)入りの円筒缶を用いる事とした。1日分6缶のレーションは、熱量4437キロカロリー、重量5ポンド10オンス(2.5kg)とした。1939年の9月には、主食のメニューは当初10種類であったが、生産設備の関係で、「肉と豆の煮込み」「肉と野菜のハッシュ」「肉と野菜のシチュー」の3種類に減らされた。
1939年に陸軍のレーションに関する基準を変更によって、「合衆国陸軍野戦レーションC(U.S. ARMY Field Ration C)」として公式に発表された。また、Cレーションは陸軍の作戦時に調達されるレーションとされた。
1940年には厳しい実地試験が行われ、缶が大きすぎて邪魔になる、主食の種類が少なすぎる、主食の量が多すぎる、主食については肉よりも豆が多すぎる等の問題点が指摘されたものの、栄養的には十分であり、陸軍で支給されてきた野戦レーションの中で最も優れたレーションであると認められた。
実地試験の結果から、16オンス(454g)缶から12オンス(340g)缶に変更され、Bユニットのビスケットの数が減らされる一方でチョコレートとインスタントコーヒーが追加された。生産の経験から主食の品質が改善された。また、1941年の終わりには個別包装されたキャンディとチョコレートキャラメルが採用された。
1941年の8月には戦争準備の為に、初期ロットとして150万個のCレーションが生産された。その後、第2次世界大戦を通じて、Cレーションは「フィールドキッチンが使用不可能な際の主要な作戦食」の座を占めた。
1944年にメニューが全般的に見直され、Mユニットのメニューは12種類に飛躍的に増え、またBユニットもアクセサリーパックとなって内容物が改善されたが、第二次世界大戦中はそれまでに生産されたCレーションの在庫が無くならなかったため、新メニューはほとんど前線には届かなかった。
内容物
1941年当時のCレーションの内容物を下記に示す。
通常Mユニット1缶とBユニット1缶がセットで1食分であった。なお、缶は付属するキー(鍵状の穴の開いた金属棒、「巻き取り鍵(まきとりかぎ)」とも呼ばれる)で開缶するため、一般的な缶切りは不要であった。
Mユニット
- Meat Stew with Beans(肉と豆のシチュー)
- Meat with Vegetable Hash(肉と細断野菜の煮物)
- Meat Stew with Vegetables(肉と野菜のシチュー)
の3種のメニューがあった。

缶詰の中にビスケットなどが入っている。
Bユニット
ギャラリー
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Cレーションを食べるアーニー・パイル(1944年5月18日)。缶から直接食べている例。
参考文献
- ワールドフォトプレス:編『コレクターズマガジン PX』No.3 1986刊 1986年
- 糧食再現について
関連項目
外部リンク
- Cレーションのページへのリンク