ニギス目とは? わかりやすく解説

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ニギス目

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/06 07:31 UTC 版)

ニギス目
ハゲイワシ属の1種(Alepocephalus tenebrosus
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
上目 : 原棘鰭上目 Protacanthopterygii
: ニギス目 Argentiniformes
下位分類
本文参照

ニギス目(学名:Argentiniformes)は、硬骨魚類の分類群の一つ。2亜目6科57属で構成され、ニギスデメニギスなど202種が所属する。全種が海水魚で、ほとんどが水深200m以深の深海に生息する。

概要

ニギス目の魚類はそのほとんどが深海魚で、熱帯から温帯域にかけて広範囲に分布する。特にハナメイワシ科・セキトリイワシ科の魚類は、極海を含めた海洋のほぼ全域に進出している。ニギス科の一部(ニギスなど)が食用として漁獲される以外、ほとんどの種類は利用されることがない。

ニギス目はサケ目キュウリウオ目カワカマス目と近縁で、これら4目は原棘鰭上目としてまとめられている。上目内部での位置付けは多くの変遷を重ねており、ニギス類が現在のように独立のとして扱われるようになったのはNelson(2006)の体系以降である[1]

形態

ニギス目の仲間に共通する形態学的な特徴として、鰓の上部に「crumenal器官」と呼ばれる複雑な構造を有することが挙げられる。腹鰭が腹部の中央に位置すること、脂鰭をもつ種類ともたない種類があること、および基蝶形骨・眼窩蝶形骨を欠くことなどは、キュウリウオ目と共通する特徴である。

分類

ニギス目はニギス亜目とセキトリイワシ亜目の2亜目からなり、6科57属202種で構成される[1]。かつて本目はキュウリウオ目とともにサケ目に含められていたが[2]、まずニギス亜目・キュウリウオ亜目の2亜目13科からなる独立のキュウリウオ目とされた後[3]、さらにNelson(2006)によってニギス亜目が単独の目として分離された[1]

ニギス亜目

ニギス亜目 Argentinoidei は3科19属からなり、約72種を含む。銀色の体色をもつものが多い。小型(1-3mm程度)のから孵化し、成長の過程において海底近くで生活する幼生期がある。

背鰭は体の中央付近にあり、尾鰭は二又に分かれる。多くの種類は脂鰭をもつ。口は小さく、上顎のがない。上主上顎骨を欠く。浮き袋がある場合は、消化管とは不連続である。

ニギス科

ニギス科の1種(Argentina silus
デメニギス科の1種(Opisthoproctus soleatus)。真上を向いた管状の眼が特徴

ニギス科 Argentinidae は2属23種で構成される。脂鰭は臀鰭の真上に位置し、背鰭の起始部は腹鰭よりも前方にある。胸鰭の基底部は腹側近くにある。

  • カゴシマニギス属 Argentina
  • ニギス属 Glossanodon 

デメニギス科

デメニギス科 Opisthoproctidae は6属11種からなる。眼球が円筒形に伸びた管状眼となっており、真上を向いているのが大きな特徴。胸鰭の基底部は体の側面にある。

  • クロデメニギス属 Winteria
  • デメニギス属 Macropinna
  • ヒナデメニギス属 Dolichopteryx
  • ムカシデメニギス属 Bathylychnops
  • ヨツメニギス属 Rhynchohyalus
  • Opisthoproctus

ミクロストマ科

ギンサケイワシ属の1種 Nansenia groenlandica (ミクロストマ亜科)
ヤセソコイワシ属の1種 Bathylagus sp. (ソコイワシ亜科)

ミクロストマ科 Microstomatidae は2亜科11属38種を含む。

ミクロストマ亜科
  • ミクロストマ亜科 Microstomatinae 3属18種。側線および側線鱗は尾部にまで伸びる。後擬鎖骨があり、中烏口骨を欠く。胸鰭の基底は体の側面にある。ギンサケイワシ属のみ脂鰭をもつ。
ソコイワシ亜科

セキトリイワシ亜目

セキトリイワシ亜目 Alepocephaloidei には38属130種が記載される。体色は暗い色の種類がほとんどである。卵は比較的大型で、幼生期を経ずに成長する。

背鰭は体の後方にあり、脂鰭をもたない。口が大きく、オニイワシ属を除き上顎に歯をもつ。浮き袋はない。

ハナメイワシ科

ハナメイワシ科 Platytroctidae は13属37種。地中海を除く全海洋に分布する。肩部に袋状の器官があり、側線の前に開いた放出孔から発光液を分泌することができる。多くの種類は発光器をもち、水深300-1,000mの中深層に生息する。

  • カンタイハナメイワシ属 Holtbyrnia
  • コノハイワシ属 Platytroctes
  • ネッタイハナメイワシ属 Mentodus
  • ハナメイワシ属 Sagamichthys
  • マウルイワシ属 Maulisia
  • 他8属

Bathylaconidae 科

Bathylaco 属の1種(Bathylaco nigricans)。大きく発達した上顎が眼の後方、鰓の近くにまで伸びる
ノコバイワシ Talismania antillarum(ヒレナガイワシ属)
コツブイワシ Xenodermichthys copei(ツブイワシ属)
セキトリイワシ属の1種(Rouleina attrita

Bathylaconidae 科 は2属3種。上顎が眼の後方に伸びる。大きな円鱗をもつ。以前はセキトリイワシ科の亜科として分類されていた。

  • Bathylaco
  • Herwigia

セキトリイワシ科

セキトリイワシ科 Alepocephalidae は23属90種からなり、全ての海域に分布する。発光器をもつが、ハナメイワシ科のような分泌器官はない。水深1,000m以深に分布する種類が多い。オニイワシ属はかつて独立のオニイワシ科 Leptochilichthyidae として分類されていた。

  • ウケグチイワシ属 Bajacalifornia
  • オニイワシ属 Leptochilichthys
  • クログチイワシ属 Narcetes
  • セキトリイワシ属 Rouleina
  • ソコノコギリイワシ属 Bathyprion
  • ツブイワシ属 Xenodermichthys
  • ナメライワシ属 Leptoderma
  • ハゲイワシ属 Alepocephalus
  • ヒレナガイワシ属 Talismania
  • Asquamiceps
  • Aulastomatomorpha
  • Bathytroctes
  • Bellocia
  • Conocara
  • Ericara
  • Photostylus
  • Rinoctes
  • 他6属

出典・脚注

  1. ^ a b c 『Fishes of the World Fourth Edition』 pp.190-194
  2. ^ 『Fishes of the World Second Edition』 pp.160-168
  3. ^ 『Fishes of the World Third Edition』 pp.178-189

参考文献

外部リンク




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