飯田みち代
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飯田 みち代(いいだ みちよ、本名:飯田 実千代、英語表記:Michiyo Iida)は、日本のソプラノ歌手。ヨーロッパと日本を拠点に活動し、現代オペラから宗教曲、歌曲に至るまで幅広いレパートリーを持つ。 その歌声は「天から金色の雨が降ってくる」と評された[1]。
経歴と演奏活動
愛知県出身。京都大学教育学部心理学科にて、河合隼雄、山中康裕のもとで臨床心理学を学ぶ[2][3][4]。
卒業後は一般企業に就職し、働きながら引田リエ子に師事して歌の勉強を始め、コンクール受賞をきっかけにウィーンで研鑽を積む。マルタ・ランティエリ、スザンナ・ギオーネ、ヴィックス・シュラバートに歌唱法を師事[5]。ドイツ歌曲はデビッド・ルッツ、指揮法を井﨑正浩に師事[6]。
帰国後は日本各地のオペラ公演や演奏会に多数出演し、またハンガリーやドイツなど欧州でも活動[7]。とりわけ《ルル》《メデア》《アイナダマール》などの現代オペラにおける演技力と音楽表現は高い評価を受けた[8][9][10]。
主な受賞歴
- 1989年:日伊音楽協会主催「イタリア声楽コンコルソ」予選通過(『毎日新聞』1989年3月29日付)
- 1990年:同コンコルソで金賞受賞(『毎日新聞』1990年4月8日付)
- 1992年:飯塚新人音楽コンクール大賞受賞[11]
- 1995年:日伊声楽コンコルソ第2位受賞
- 2005年3月14日:平成16年度(2004年度)愛知県芸術文化選奨 文化賞(個人)受賞(受賞名義:飯田みち代/本名:柳田実千代)[12]
- 2025年3月20日:春日井市芸術文化選奨 文化賞受賞[13]
主な出演歴(抜粋)
- 《ねじの回転》家庭教師役(1994年)[14]
- 《夕鶴》つう役(2001年)[19]
- 《ラ・ボエーム》ムゼッタ役(2006年)[20]
- 《死の都》マリー・マリエッタ役(2014年)《死の都》[21]
- 《夜長姫と耳男》夜長姫役(2008年)《夜長姫と耳男》[22]
- 《メデア》メデア役(2012年)《メデア》[23]
- 《アイナダマール》マルゲリータ・シグレ役(2014年)《アイナダマール》[24]
- 《白峯》美福門院役(2014年)
- 《万葉集》額田王/太伯皇女(二役)(2016年、2017年)
- 2025年:ソルノク市立交響楽団(ハンガリー)[25]、ホセ・カレーラス白血病基金コンサート出演(ドイツ)
評価・批評
- 『音楽現代』:「十二音技法によるベルクの前衛オペラ《ルル》、タイトルロールの飯田みち代が出色。歌唱力抜群で、陰陽自在な発声で多層の女性像を魅力的に描き出す」と、歌唱技術と音楽表現・演技を高評価
- 『産経新聞』:「歌は天命、にじみ出る内面」と、難病克服の人生と音楽への信念を紹介(2004年10月27日)。
- 『日経新聞』樋口隆一:「可憐で表情豊かな飯田みち代のイゾルデは、この役の本来の性格を思い出させてくれた」(2005年)と演技を高く評価。
- 『朝日新聞』:「ルル役で貧しい育ちゆえに幸せも満足も知らない。それでも必死に生きる。飯田のけなげさも相まってルルはそんな女になった」演技を高評価(2009年10月9日)/「《金閣寺》乱れた母親役を演じた飯田みち代の艶めかしい笑いが良かった」(2015年12月21日)。
- 『読売新聞』:「《メデア》とりわけ題名役(飯田みち代)が愛を失い、異国で一人追いつめられていくさまが切ない。とくに子供たちとの面会を許される場面では「感謝いたします。お優しい王様」と猫なで声をだしつつ陰鬱な笑みを浮かべる。狂気の目つきに胸が痛んだ」(2012年11月13日)
録音・CD
- 『Michiyo Iida singt Richard Strauss und Alban Berg』Preiser Records(廃盤)
- 収録:リヒャルト・シュトラウスおよびアルバン・ベルクの歌曲
- ピアノ:デーヴィッド・ルッツ:2008年収録[26]
出典
※以下の新聞・雑誌より:
- 『毎日新聞』1989年3月29日/1990年4月8日
- 『産経新聞』2004年10月27日
- 『日経新聞』2005年7月
- 『朝日新聞』2009年10月9日、平成27年12月21日
- 『読売新聞』2012年11月13日
- 『音楽現代』2009年11月号
- 公式プログラム、主催者発行パンフレットなど
脚注
- ^ 『ACT4』2005年9月号、64ページ、「ACT4 STYLE」特集、執筆者不明。《トリスタンとイゾルデ》でイゾルデ役を演じた飯田みち代について、「『天から金色の雨が降ってくる』と賞される彼女の歌声」と記述されている。
- ^ 飯田みち代さんインタビュー(京都大学オフィシャル・アルムナイ、2022年11月掲載)
- ^ 京都大学創立125周年記念音楽祭 出演者一覧(京都大学公式、2022年11月26日開催。「飯田みち代(教育)」と記載)
- ^ 「創立125周年に寄せて:飯田みち代」『京都大学』公式サイト、2020年12月17日、https://www.kyoto-u.ac.jp/125th/alumni/45/
- ^ 大府市公式サイト 、2022年11月26日開催、2025年6月閲覧
- ^ 大府市公式サイト、2022年11月26日開催、2025年6月閲覧
- ^ “Dalok szoprán hangra és zenekarra – Szolnoki Szimfonikusok” (ハンガリー語). szolnokiszimfonikusok.hu. 2025年6月23日閲覧。
- ^ 『音楽現代』2009年11月号、「十二音技法によるベルクの前衛オペラ《ルル》、タイトルロールの飯田みち代が出色」
- ^ 『読売新聞』2012年11月13日、「《メデア》の狂気と陰鬱な演技に胸が痛んだ」
- ^ 『朝日新聞』2009年10月9日、「飯田のけなげさも相まってルルはそんな女になった」
- ^ “飯塚新人音楽コンクール受賞者一覧”. 飯塚文化連盟. 2025年6月23日閲覧。
- ^ “平成16年度愛知県芸術文化選奨 受賞者一覧”. 愛知県. 2025年6月23日閲覧。
- ^ “音楽のまち・かすがい「リレーコンサート」”. 春日井市 (2023年9月11日). 2025年6月23日閲覧。
- ^ “《ねじの回転》2002年公演記録”. 昭和音楽大学オペラ研究所オペラ情報センター. 2025年6月23日閲覧。
- ^ “兵庫県立芸術文化センター「魔笛」公演詳細(2005年)”. 兵庫県立芸術文化センター. 2025年6月23日閲覧。
- ^ “東京二期会《魔笛》2005年公演情報”. 公益財団法人東京二期会. 2025年6月23日閲覧。
- ^ “ルル(2003年 日生劇場公演)”. 公益財団法人 東京二期会. 2025年6月23日閲覧。
- ^ “ベルク作曲《ルル》(フリードリヒ・チェルハ補筆完成版)”. 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール. 2025年6月23日閲覧。
- ^ “平成13年度愛知県文化振興事業団主催オペラ《夕鶴》”. 愛知県芸術文化センター. 2025年6月23日閲覧。
- ^ “ラ・ボエーム(2006年東京二期会公演)”. 公益財団法人 東京二期会. 2025年6月23日閲覧。
- ^ “『死の都』”. びわ湖ホール. 2025年6月23日閲覧。
- ^ “夜長姫と耳男”. 昭和音楽大学オペラ情報センター. 2025年6月23日閲覧。
- ^ “オペラ《メデア》2012年公演パンフレット” (PDF). 二期会. 2025年6月23日閲覧。
- ^ “アイナダマール”. 昭和音楽大学オペラ情報センター. 2025年6月23日閲覧。
- ^ “Dalok szoprán hangra és zenekarra – Szolnoki Szimfonikusok” (ハンガリー語). szolnokiszimfonikusok.hu. 2025年6月23日閲覧。
- ^ CD『Michiyo Iida singt Richard Strauss und Alban Berg』、Preiser Records、PR 90755(2008年)
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