遺伝力とは? わかりやすく解説

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遺伝力

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遺伝率

(遺伝力 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/30 02:04 UTC 版)

遺伝率(いでんりつ、: heritability)は、ある表現型の遺伝的要因の重要性を測る尺度である。遺伝力とも呼ばれる。全表現型分散に対して遺伝分散が占める割合で定義される。量的遺伝学において平均への回帰の程度を示す量であり、小さいほど回帰が大きい。また近親個体間の相関を示す量である。育種学行動遺伝学でもよく用いられる。

概要

遺伝率は、身長や体重などの、多くの遺伝子が関与する量的形質において、集団内での差異を遺伝要因と環境要因に分割したときに、遺伝で説明できる割合を指す。集団内での差異は数学的には分散で表される[注 1]

実用的には、遺伝率は平均への回帰の程度を表す。例えば、ある動物の体重の遺伝率が60%として、この動物の中から、集団平均よりも平均して10kg重い個体を選抜して掛け合わせると、子の平均体重は集団平均よりも6kg重くなる(ここでオスとメスの体重の分散は同じとしている。異なる場合は補正する必要がある)。遺伝率はあくまで集団としての統計値として意味があり、特定の個体に対して遺伝の影響度を示すものではない。例えば体重が小さい個体がいたとして、その原因の60%が遺伝だとはいえない。遺伝的には大きくなりやすい個体なのに、たまたま栄養状態が悪い環境で育ったため体重が小さくなったのかもしれない。

遺伝率は遺伝と環境の相対的な影響力を示しており、同種の生物でも、測定対象とする集団によって値が変化する。環境の変化が大きい集団と小さい集団、遺伝的に差異が大きい集団と小さい集団では、遺伝率は異なる。

よく誤解されるが、遺伝率は「親から子へ遺伝する確率」ではない。例えば、欧米人の双子を用いた研究では、身長の個人差の8割程度は遺伝的要因によって生じていると報告されているが[1]、このことは「背の高い親から80%の確率で背の高い子どもが生まれ、20%の確率で子どもの背は低い」ということを意味してはいない。また遺伝率が高くても、親の特性がそのまま子に伝わる訳ではない。ペアをなしている染色体のうち、どちらか一方のみがランダムで子に伝わるので、仮に遺伝率が100%だとしても子の表現型値はかなりばらつく[2]。また遺伝率が100%だとしても環境が変われば表現型値は変化する。例えばある植物を完全に同一の環境で育てることができれば、背丈の差は遺伝のみによって決まり遺伝率100%となるが、それとは異なる栄養状態の土壌で育てれば背丈は変わってくる。ヒトの身長の遺伝率はかなり高いが、20世紀にいくつもの国で平均身長が急激に伸びている。これは栄養状態が改善したことによる。

「健康か、病気か」のような二分法で考えられる特性に対しても、背後に連続的な変数を仮定し、それがある閾値を超えたときに罹患するというモデルを用いることで、遺伝率が算出されている。例えば統合失調症自閉症薬物依存症利き手などの遺伝率が求められている[3]。閾値形質の遺伝率は直感的な理解が難しいので注意が必要である[4]。例えば統合失調症の遺伝率はおよそ80%であるが、片親が統合失調症のときに子供が罹患する確率は約10%である[4]

定義

ポリジーン遺伝による表現型値 P は、遺伝の効果 G と環境の効果 E の和 P = G + E でモデル化できる。

表現型値のばらつきは分散 V によって表現できる。遺伝と環境の相関を無視できるときは

人為的な選抜実験において、全集団と選抜された集団の平均値の差Sと、選抜群の子世代と元の集団の平均値の差Rには、R=h2Sの関係がある。ただし親については中間親(両親の平均)の値を用いる。

人為選択によって、ある集団の一部を選別して交配することを考える。ある表現型について、中間親(両親の平均)の分布のうち、偏った個体を選別して交配する。中間親の平均値と、選択された中間親の平均値の偏差をSとし、同じくその子集団の平均値と元の集団の平均値の偏差をRする。 このとき選択に対する応答は

フランシス・ゴルトンが示した親と子の身長の関係。横軸が中間親、縦軸が子。(1889年のデータ)

ある表現型に対して血縁個体間の回帰係数と相関係数はどちらも



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