2つの三角形 の外部の相似の中心O 。O と各頂点の距離と、図形の辺長は比例の関係にある。
幾何学 において、相似の中心 (そうじのちゅうしん、英 : homothetic center, center of similarity, center of similitude )は、二つの図形 が相似 であるとき、その点を中心として拡大縮小(英語版 ) によって、一方の図形をもう一方の図形へ重ねることができる点 である。 単に相似中心 ともいう[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] 。相似の中心は、外相似点[ 5] または外心[ 6] [ 7] (External center;相似外心[ 8] )と、内相似点(Internal center; 相似内心)または内心に分けられる。外相似点での相似比は正、内相似点での相似比は負になる。
2つの図形の外相似点S 。∠ABC , ∠A'B'C' は等しい。
一般の図形
円の相似の中心。上は外側の相似中心、下は内側の相似中心。
2つの図形が相似の中心を持つには、相似の中心において、対応する頂点との成す角が一致し、対応する点が同じ距離の比になければならない。2つの図形及びその相似の中心は、同一平面上にある 必要はない。
円
任意の円 はすべて相似 である。一般の位置にあり、同半径でない二つの円には内側と外側の相似中心が存在する。二つの相似中心は2円の中心と共線 (line of centers )である[ 9] 。点円(半径0の円)の円や虚円(半径が負の円)の相似中心も定義できる。
相似中心の計算
図3:2円の相似中心。内相似点I と外相似点E 。 二円の半径r 1 , r 2 、相似中心の距離d 、相似の位置にある点の組A 1 , A 2 とB 1 , B 2 。
与えられた2円について、様々な方法で相似中心を見つけることができる。解析幾何学 の観点では、内相似点は重み付き平均(英語版 ) (重みはもう一方の円の半径)として定義できる。内相似点と円の中心との距離の比はもう一方の円の半径の比となる。それぞれ中心(x 1 , y 1 ), (x 2 , y 2 ) 、半径r 1 , r 2 である円C 1 , C 2 の内相似点(x 0 , y 0 ) は
(
x
0
,
y
0
)
=
r
2
r
1
+
r
2
(
x
1
,
y
1
)
+
r
1
r
1
+
r
2
(
x
2
,
y
2
)
.
{\displaystyle (x_{0},y_{0})={\frac {r_{2}}{r_{1}+r_{2}}}(x_{1},y_{1})+{\frac {r_{1}}{r_{1}+r_{2}}}(x_{2},y_{2}).}
図4:対応する逆相似の位置にある点通る直線はは2円の根軸上で交わる。点Q, P' とS, R' はそれぞれ逆相似。 4点は共円 である。さらにこの円と元の二円の根心 は先述の2直線の交点である。
一般に、相似中心を通る直線はそれぞれの円と二点で交わる。これら四点において、二点が対応している(homologous ; 相応、相当)とは、相似中心を通る直線とその点における半径が成す角が等しいときのことを指す[ 11] [ 12] 。図4ではQ, Q' が対応する点となる。相似中心とは共線であるが、対応していない点を反相応(antihomologous ; 反相当)であるという[ 13] [ 14] 。図4ではQ, P' のことを指す[ 13] 。
円上の相応点
同じ相似中心を通る2つの直線について、反相応な点は共円である。
図4の様に三角形△EQS , △EQ'S' を想定する。
∠
Q
E
S
=
∠
Q
′
E
S
′
,
E
Q
¯
E
Q
′
¯
=
E
S
¯
E
S
′
¯
,
{\displaystyle \angle QES=\angle Q'\!ES',\quad {\frac {\overline {EQ}}{\overline {EQ'}}}={\frac {\overline {ES}}{\overline {ES'}}},}
図5:2円に接するすべての円の接点は反相応
図5の様に2円の中心をO 1 , O 2 、外相似点をE とする。E を通る直線により、円との交点P, Q, P',Q' を決める。O 1 Q , O 2 P' を延長して、その交点をT 1 とすれば、T 1 はQ, P' で各円と接する円になる。これは△O 1 PQ , △O 2 P'Q' の相似性と
O
1
P
¯
=
O
1
Q
¯
{\displaystyle {\overline {O_{1}P}}={\overline {O_{1}Q}}}
図6: 双方の円に外接する円の族
図7:一方に外接し、もう一方に内接する円
図8:接する円の根軸は根軸を通る。
ある2円について、2円に接するすべての円の根心は同一であり、また2円の相似中心と一致する。図8のように、相似中心E を通る2つの直線が与円と交わっているとし、その線上の反相応点を接点とする円T 1 , T 2 を書く。前項では、これら4つの接点が同一円周上にあることを示した。更に、T 1 , T 2 の根軸は相似中心E を通る。
図5の様にすべての接点が共線であるとき、相似性より
E
P
¯
E
P
′
¯
=
E
Q
¯
E
Q
′
¯
;
E
P
¯
⋅
E
Q
′
¯
=
E
Q
¯
⋅
E
P
′
¯
.
{\displaystyle {\frac {\overline {EP}}{\overline {EP'}}}={\frac {\overline {EQ}}{\overline {EQ'}}};\quad {\overline {EP}}\cdot {\overline {EQ'}}={\overline {EQ}}\cdot {\overline {EP'}}.}
図9:3円と相似中心。3つの外相似点は一直線上 。
図9の様に3つの円が書かれた平面を用意する。3円の半径の比と同じ分、対応する中心から垂直に上に上がった点A',B',C' を書く。この3点のうち2点を通る直線と元の平面の交点をHAB , HBC , HAC とする。 △HAB AA', △HAB BB' の相似からが分かる。
H
A
B
B
¯
H
A
B
A
¯
=
r
B
r
A
{\displaystyle {\frac {\overline {H\!_{AB}B}}{\overline {H\!_{AB}A}}}={\frac {r_{B}}{r_{A}}}}
図10:6つの相似中心は4つの直線上にある。
ここで、HAB , HBC , HAC は元の面とA',B',C' を通る面の交線上にあるから、これを元の平面において見れば、HAB , HBC , HAC の共線が示される。同様にして、他の相似中心の組においても共線が分かる。
図11:青い線は赤い円C 1 , C 2 の根軸。C 1 , C 2 に接する円らの一つの相似中心は根軸上にある。 つまり根軸は相似中心の共線としての意味を持つ。
C 1 , C 2 を与えられた3円に接する共役な円とする(図11)。ただしここで共役とは、2円が与円に対して同じ族にあることを意味する。前項の議論より2円に接する円のすべての根軸は2円の相似中心を通る。よって、与えられた3円の2円の組の相似中心の一つはC 1 , C 2 の根軸上に位置する。
この性質を活用して、ジェルゴンヌ はアポロニウスの問題 の一般解を求めた。3つの与円について、 解円の根軸は相似中心の共線にある。勿論、共軸な円は無数に存在するので、相似中心による議論のみでは、証明は完結しないことに注意する。
関連項目
出典
^ a b 中村慶次郎『実力養成幾何学問題集』有朋堂書店、1926年、55頁。NDLJP :921090 。
^ 林鶴一 『新撰幾何学教科書 平面之部 訂10版』開成館、1912年、26頁。NDLJP :828763 。
^ 原浜吉『平面幾何学講義 下巻 訂3版』金刺芳流堂、1905年、566,655頁。NDLJP :828859 。
^ 一松, 信 、畔柳, 和生『重心座標による幾何学』現代数学社、2014年、43頁。
^ 多々羅恕平『平面幾何学 2版』敬業社、1888年、290頁。NDLJP :828827 。
^ ジョン・ケージ『幾何学続編』有朋堂、1909年、105頁。NDLJP :828521 。
^ 井田継衛『普通幾何学 : 中等教育 平面ノ部』積善館、1895年、266,302頁。NDLJP :828803 。
^ a b 宮本久太郎『幾何学 下』春陽堂、1901年、173,176,184頁。NDLJP :828425 。
^ 菊池大麓 『幾何学講義 : 初等幾何学教科書随伴 第2巻』大日本図書、1906年、139頁。NDLJP :828493 。
^ 森本清吾 『数学問題集 : 新制高等学校用 初等幾何の部』牧書店、1949年、34頁。NDLJP :1369272 。
^ 長沢亀之助 『幾何学辞典 : 問題解法 続 訂補10版 (数学辞典叢書)』長沢亀之助、1912年、491頁。NDLJP :952919 。
^ ショヴネー 著、真田兵義 訳『幾何教科書 上巻』開新堂、1894年、44頁。NDLJP :828448 。
^ a b Weisstein, Eric W., Antihomologous Points , MathWorld --A Wolfram Web Resource, http://mathworld.wolfram.com/AntihomologousPoints.html
^ 宮本藤吉 『英和数学新字典』開新堂、1902年、19頁。NDLJP :826188 。
参考文献
外部リンク