根軸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/02 01:19 UTC 版)

初等幾何学における2つの円の根軸(こんじく、英: radical axis)とは、2つの円に接線を引いたときその長さが等しくなる点の軌跡である。根軸は2つの円の中心を通る直線に垂直な直線である。2つの円が交わるときには根軸はその交点を通る直線となり、2つの円が接するときには根軸は接点を通る共通接線となる。
根軸上の任意の点 P に対して、P を中心として2円に直交する円が存在する。逆に言えば、2円に直交する円の中心は根軸上にある。他の言い方をすると、根軸上の点 P における2つの円の方べきは等しい[1]、すなわち以下の式が成り立つ。
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2つの円が交わるとき、根軸はその交点を通る割線となる。 図 2. 与えられた3円に直交する円(橙の円)の中心を根心(橙の点)という。 3つの円の根心
どの2つも同心円でない3つの円 A, B, C があるとする。根軸定理とは、3組の円の根軸が1点で交わるかすべて平行であるという定理である[2]。
簡単な証明は以下のとおりである[3]。A と B の根軸上の点から2円に引いた接線の長さは等しい a=b。B と C の根軸上の点においても同様の関係が成り立つ。よってこの2直線の交点では a=b=c が成り立つ。この交点を r とすると a=c が成り立つので A と C の根軸も r を通る。r を根心(radical center)と呼ぶ。
根心を中心として3円に直交する円(根円[4]、radical circle)が存在する。なぜなら、3つの根軸の交点であるためどの2円に対しても直交する円の半径が等しくなるからである。
幾何学的な作図法
根軸の作図法 2つの円 A, B の根軸を作図するためには根軸上の2点がわかればよい。2つの円に交わる円 C を描けば、 A と C の根軸と B と C の根軸は容易に作図できる。この交点を J とすれば上の節の結果より J は根心であり A, B の根軸上にある。同様に2つの円に交わる円 D を描き根心 K を求めれば、J と K を通る直線が求める根軸となる。
図 3. 与えられた2つの円(C と D を中心とする緑と青の円)と相似の中心から引いた線が交わる点を P, Q および S, T とするとこの4点は同一円周上にある。 この作図の特殊な例として図3がある。外部にある2つの円の相似の中心 E をとる。E から2つの円に交わる直線を引き、内側の2つを P, Q とし、同様に S, T をとる。この4点は同一円周上にある[5]ため、P と S を通る直線と Q と T を通る直線の交点は根軸上にある[6]。また、P と Q を通るそれぞれの円の接線を引くと、その交点と P と Q は二等辺三角形となるためこれも根軸上にある[7]。これによって根軸が作図できる。
代数的な作図
図 4. 根軸の位置を計算によって求める。L を J と K の距離とする。x1 と x2 を K と B および K と V の距離とする。また、d1 と d2 は J と B および J と V の距離とする。 図4によれば、根軸(赤い線)は2つの円の中心 B と V を通る直線(青い線)に垂直である。2つの線の交点 K は B と V の間にある。x1 と x2 は K から B と V への距離なので x1+x2=D と置くと D は B と V の距離となる。
根軸上に J を取り B と V への距離を d1, d2 とすると、方べきの定理より以下が成り立つ。
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- Weisstein, Eric W. "Radical line". mathworld.wolfram.com (英語).
- Weisstein, Eric W. "Chordal theorem". mathworld.wolfram.com (英語).
- Animation at Cut-the-knot
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