牧山 (宮城県)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/03 04:44 UTC 版)
| 牧山 | |
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牧山の山中にある零羊崎神社の鳥居。
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| 標高 | 250[1] m |
| 所在地 | 宮城県石巻市[1] |
| 山系 | 北上山地[2] |
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牧山(まきやま)は宮城県石巻市の旧北上川河口の東にある山である。標高は約250メートル[1]。北上山地の支脈に当たる。市街地近傍の山だが一部に自然林が残っており、これはこの地方における原生林の名残であると考えられ、貴重な植物群落であると評価されている[2]。一方で、山の一部は散策路やフィールドアスレチック設備を有する牧山市民の森として整備されており[1]、こちらは明るい雑木林である[3]。地質的な特徴としては、石碑などに用いられる井内石の産地であることが挙げられ、北西側の山麓に石切場がある[2]。零羊崎神社や廃寺跡などの古い寺社、遺跡が存在し、また魔鬼女の伝承が残るなど、歴史的な側面を持つ山でもある[1][4]。山の直下では牧山道路のトンネルが山体を貫いている。
植生
牧山における森林の植生の大部分はスギやアカマツ、クロマツ、ヒノキ、クヌギなど植林によるものと、コナラやクリなどによる二次林であるが、一部は自然林である[2]。
牧山の頂上付近、梅渓寺の裏手付近から西の尾根付近にかけて2ヘクタールほどのモミの自然林がある。このモミの胸高直径は60センチメートルから140センチメートル、高さは25メートル前後である。ここにブナ、イヌブナ、アカシデが混じる[2]。ヒノキやヤブツバキも見られる[3]。標高の低い西側にイヌブナがあり、標高が高い東側ではブナが優占する。林床はスズタケであり、安定した林相である。周囲の二次林やヒノキ植林地の一部では、モミ・ブナ林への遷移が観察される[2]。
北上山地丘陵部の極相はモミ・イヌブナ林だが、現在ではそのほとんどの場所がコナラ・クリ林やスギ・アカマツの植林地となっている。その中にあって牧山は数少ないモミの優占地である[5]。また、この地方で見られるモミ林の多くは、一斉林であるかアカマツとの混交であり、ここのモミ・落葉樹林の姿は自然林として貴重であるという評価がある[2]。ブナについては、現在の宮城県内における北上山地でブナは見られず、この牧山と金華山にブナが見られるのみである。ブナはかつて宮城県内の北上山地にも分布していたが消滅し、牧山や金華山のブナはその名残と考えられている[5]。これらが太平洋側における丘陵や低山の本来の姿だったと考えられている[5]。
また、牧山の山麓、石巻市立湊小学校の裏手にケヤキとシロダモの自然林がある。石巻地方の砂丘地帯にはシロダモがよく生育しているが、ここのシロダモは大きく、中には胸高直径45センチメートル、高さ13メートルを越えるものもある。またその数も多く、石巻におけるシロダモの代表的群落である[2]。
市街地に近い牧山に自然林が残っている理由として牧山の寺社や遺跡の存在が挙げられ、このような歴史と結びついた牧山の自然は、単に植生の観点のみならず、文化財としての観点からも重要であるとされる[2]。
脚注
参考文献
- 海の自然史研究所 『石巻市自然環境確認調査業務報告書』2024年。
- 佐々木豊「石巻市牧山の自然植生と注目すべき植物」『宮城の植物』創刊号、 1973年。
- 佐々木豊「牧山地域の植生について」『石巻市文化財だより』 No.3、石巻市教育委員会、1975年、16-18頁。
外部リンク
- 牧山(石巻観光協会)
- 牧山_(宮城県)のページへのリンク