永遠のPL学園
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永遠のPL学園(とわのPLがくえん)は、2017年の書籍。2017年3月に小学館から出版。著者は柳川悠二[1]。
概要
そうそうたるプロ野球選手を輩出しながら2016年夏に突然休部したPL学園高等学校野球部の、その謎の休部の裏側を関係者への取材で明らかにした書籍[2]。
スポーツ全般にわたり幅広く執筆するノンフィクションライターによって、PL学園の創立と野球部の創設から全国屈指の強豪校となるまでの歴史がたどられている。加えて最後の野球部員となった第62期生12人の2年半にわたる活動にも密着して、先輩の栄光を継承できないという苦しい胸の内にも迫っている。PL学園野球部といえば現代史の1ページを飾るほどであったのがなぜ廃部に追い込まれたかという、戦後の高校野球の一断面にまで切り込んでいる[3]。
なぜPL学園高校野球部はあれほど凛として強そうに見えたのかを、パーフェクト リバティー教団という信仰にまでも切り込んで解き明かす。関東にまでもPL学園はヤバいという声は届いており、そのヤバさの中身とは理不尽な上下関係や暴力であり、このことをしつこく掘り下げている。サブタイトルともなっている『三年神様、二年平民、一年奴隷』や『「理不尽」が力の源』など高校の部活動とはかけ離れた実態であったことなども書かれている[4]。
前田健太らを指導した当時の監督にPL学園での暴力事件について取材した際には、逆に監督からどうすれば高校野球から暴力を無くすことができるのかを聞き返されていた。この監督は暴力に対して何もしてこなかったわけではなく、暴力の温床であった寮内での付き人制度を廃止するなど暴力を無くすことに努めていたが、それでも暴力を減らすことはできても無くすことはできなかったということが記されている[5]。
この書籍ではPL学園野球部の指導者は暴力はいけないことであるとした上であるが、苦難を乗り越えて大きな自信になると暴力も含まれていたはずの下級生に厳しくしていた環境を擁護したり、本気で選手と向き合っていたからこそその方法論として手を出していたなど、どこかで暴力のポジティブな側面を信じていたようなことが見られたと記している[5]。
著者はPL学園の衰退の原因を探るためにパーフェクト リバティー教団を取材したものの教団は何も語らなかった。そのような中でのOBの言葉によると、教団の信者が減少していることや、学園の経営が厳しくなっているということを口にするということは、現在の教祖の教えを否定するということになっているということを紹介している[6]。
2016年10月下旬に第23回小学館ノンフィクション大賞の最終選考会が行われる。そこでは候補5作品について論じ合った結果『永遠のPL学園』が大賞に選出された[7]。
脚注
出典
- ^ “永遠(とわ)のPL学園 : 六〇年目のゲームセット | NDLサーチ | 国立国会図書館”. 国立国会図書館サーチ(NDLサーチ). 2025年8月22日閲覧。
- ^ “桑田、清原らを輩出した超名門PL野球部はなぜ廃部に追い込まれたのか? - スポーツ - ニュース”. 週プレNEWS[週刊プレイボーイのニュースサイト]. 2025年8月22日閲覧。
- ^ “高校野球の歴史を彩ったPL学園はなぜ廃部したのか”. Wedge ONLINE(ウェッジ・オンライン) (2023年5月27日). 2025年8月22日閲覧。
- ^ 和真, 早見 (2017年5月29日). “理不尽な上下関係や暴力。PL学園の“ヤバさ”の正体とは?”. 文春オンライン. 2025年8月22日閲覧。
- ^ a b “「どうしたら暴力はなくなるのか」元PL監督が明かす野球部の闇”. BOOKウォッチ (2017年3月26日). 2025年8月22日閲覧。
- ^ “『永遠のPL学園 60年目のゲームセット』 名門野球部はなぜ休部したのか”. J-CAST トレンド (2017年3月23日). 2025年8月22日閲覧。
- ^ “第23回小学館ノンフィクション大賞・柳川悠二氏「逆転のPL」を描いた理由”. NEWSポストセブン. 2025年8月22日閲覧。
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