最終巻としての夢浮橋
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 01:20 UTC 版)
例外はあるにせよ、『源氏物語』の多くの巻がストーリー上のそれなりの区切りと見られるところで終わっているのに対して、この巻は『源氏物語』の最終巻の終わり、つまり全体の終わりであるにもかかわらず、特にストーリー上の区切りでも何でもないところでいきなり終わっているように見えるので「終わることなく終わりを告げる」などと評されており、作者が構想通りここで完結するように書き進めてきて予定通り完結させたのか、それとももっと先まで書き進める構想をしていたが何らかの事情でここで中断してしまったのか、議論になることがある。また、これに関連して、この巻が「とぞ本にはべめる」(と本に書いてある)という独特の終わり方をしている点も注目されることがある。 現代人から見てこのような終わり方が不自然に思えたとしても、それが必ずしもこの物語が作られた時代においても不自然であったとはいえないものの、鎌倉時代から室町時代にかけて「山路の露」や「雲隠六帖」といった本帖の続編がいくつか書かれたことは、当時の人々がこのような終わり方を不満足に感じたかも知れないから、といわれている。 大団円のような明確な終わり方(「閉ざされた終結」)ではなく、この後にどのようなことが起こるのかを明確には示さず、読者の想像にゆだねる形の終わり方を「開けたままの終結」と呼び、「夢浮橋」の終わり方は作者が明確に意図して描いた「開けたままの終結」とする見解もある。
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