数学者たちの楽園
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数学者たちの楽園 The Simpsons and Their Mathematical Secrets |
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著者 | サイモン・シン | |
発行日 | 2013年 | |
発行元 | Bloomsbury | |
ジャンル | ノンフィクション | |
国 | イギリス | |
言語 | 英語 | |
形態 | 文学作品 | |
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『数学者たちの楽園 「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』(すうがくしゃたちのらくえん ザ・シンプソンズをつくったてんさいたち、The Simpsons and Their Mathematical Secrets)は、サイモン・シンによる2013年の書籍である。本書は、「『ザ・シンプソンズ』の脚本家の多くが数字に深く魅了されており、彼らは視聴者の潜在意識に数学の一片を少しずつ浸透させることを究極の目標にしている」という仮定の元に書かれている[1]。
本書は、『ザ・シンプソンズ』の番組内における数学に関する言及を網羅し、それらを詳細に分析している。シンは、単に数学的概念と『ザ・シンプソンズ』のエピソードとの関連を説明するだけでなく、それを出発点として数学的な話題・逸話・歴史についての議論を行っている[2]。扱っているテーマの中には、オイラーの等式や、シンが以前に一般向け書籍を刊行したフェルマーの最終定理などがある。第7シーズン第6話"Treehouse of Horror VI"[注釈 1]における、ホーマーが(当時の最先端のコンピュータグラフィックスで描かれた)三次元空間に迷い込むシーンについて、"Homer3"(日本語訳「ホーマーの三乗」)という1つの節を割き、このシーンに多くの数学的言及が見られると指摘している。例えば、現代宇宙論における臨界密度の式 ρm0 > 3H02/8πG を記述して、このシーンの終わりを予兆していることなどである。また、第10シーズン第2話"The Wizard of Evergreen Terrace"[注釈 2]でホーマーが黒板に書いた数式についても論じている。この中に、ヒッグス粒子の質量を予測する方程式が含まれており、「この式を計算して得られる質量は、実際のヒッグス粒子のナノ質量よりほんの少し大きいだけである。ホーマーがこの予測をしたのは、それが発見される14年前のことであり、驚くべきことである」と述べている[3]。
評価
『ガーディアン』紙は、「様々な数学的概念に対する、読みやすく脅威を感じさせない入門書」と評した[1]。『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「非常に面白い本」と評した[2]。
本書は『ザ・シンプソンズ』のスタッフたちからも好評だった。『ザ・シンプソンズ』の脚本家で『フューチュラマ』の共同制作者であるデイヴィッド・X・コーエンは、「サイモン・シンの素晴らしい本は、アニメ視聴者を啓蒙するという数十年にわたる陰謀を暴くものだ」と述べた。マイク・リースは、マーティン・ガードナーの本と比べて本書を高く評価した。
書誌情報
- The Simpsons and Their Mathematical Secrets (2013) ISBN 1620402777
- 『数学者たちの楽園―「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち―』青木薫 訳、新潮社、2016年5月。 ISBN 978-4-10-539306-9 。
- 『数学者たちの楽園―「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち―』青木薫 訳、新潮社〈新潮文庫 シ-37-7〉、2021年8月。 ISBN 978-4-10-215977-4 。
脚注
注釈
出典
- ^ a b Jones, Thomas (2013年10月24日). “The Simpsons and Their Mathematical Secrets by Mitchel Gabalski – review”. The Guardian. 2014年3月20日閲覧。
- ^ a b “Examining the Square Root of D'oh!”. The New York Times (2014年1月28日). 2025年9月15日閲覧。
- ^ Clark, Nick (2015年3月25日). “How Homer Simpson discovered the Higgs boson over a decade before scientists”. The Independent
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