履行危険
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/16 23:58 UTC 版)
上述してきた危険負担の内容は、双務契約で片方の債務が消滅した場合のもう片方の債務(反対債務)の扱いという「双務契約の牽連性(存続上の牽連性)の問題」であった。これに対して、何をすれば・どの時点で債務者は引渡債務を完了したことになるのか(いつ引渡債務は消滅するのか)という意味で「危険負担」という言葉が用いられることもある。これは双務契約の牽連性の問題としての危険負担を論じる前段階である。よって両者を区別するため、この問題を履行危険と呼ぶ場合がある。国際取引契約におけるFOB(free on board、本船渡し)やCIF (cost, insurance and freight) において「物品が本船の船上に置かれたときに危険が移転する」といわれることがある。これは貿易などにおいて品物が船積されるときに、その品物が本船の船上に置かれた時点で売主は引渡債務を完了したことになる(よって船が沈没しても売主は再び品物を調達する必要はない)という意味であるが、ここでいう「危険」とは履行危険のことなのである。双務契約の牽連性の問題としての危険負担は、「船が沈没して引渡債務が履行不能となった場合、反対債務である代金債権の履行拒絶権が発生するかどうか」の問題であって、「引渡債務が完了したかどうか」という問題とは(密接に関わるものの)別の話である。
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