子供部屋_(エルガー)とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 子供部屋_(エルガー)の意味・解説 

子供部屋 (エルガー)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/25 14:14 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動

子供部屋』(こどもべや、: Nursery Suite)は、エドワード・エルガーが作曲した管弦楽のための組曲。作曲者晩年の作であり、『子供の魔法の杖』と同様に幼少期のスケッチブックの素材が用いられている。

概要

『子供部屋』作曲のきっかけとなったのは、1930年にエルガーが、子どもの頃の音楽スケッチが収められた箱を最近見つけたと、グラモフォン社のウィリアム・ロードン・ストリートンに語ったことだった[1]。ストリートンは彼に国王の音楽師範として、スケッチを基にマーガレット王女の誕生を記念する作品を書いてはどうかと提案する[2]。完成された組曲はマーガレット王女、その姉エリザベス王女(後のエリザベス2世)、彼女らの母であるヨーク公爵夫人エリザベス妃へと献呈された[2]

この組曲の多くの楽章は『子供の魔法の杖』と同じ様式で書かれており、明るい性格に支配されている。ただし、「The Waggon (Passes)」は別であるとする意見も見られる。エルガーの権威である音楽評論家のマイケル・ケネディは、荷馬車[注 1]がガラガラと近づいてくると、音楽は交響曲第2番のスケルツォの一節を偲ばせるような調子で不吉になっていき、その時、エルガーの言葉を借りるならば「車輪が私の頭を轢く」のだ、と述べている[2]アンソニー・ペイン交響曲第3番の補筆作業を行うに当たり、最後の部分にこの楽章の形式を流用している[3]

『子供部屋』組曲は演奏会場でなくレコーディング・スタジオ[注 2]で初演が行われた最初期の管弦楽曲のひとつである[注 3][注 4]1931年5月23日に行われた初演では、最後の2楽章を除く全曲が作曲者自身の指揮によって録音された。最後の2楽章は同年6月4日に、4歳になるエリザベス王女やその両親などの聴衆を招いて演奏されて際に付け足されたものである。

曲の公開時の評として、『グラモフォン』誌のW.R.アンダーソンは次のように書いている。「印象的なヴァイオリンカデンツァを有する最終楽章は、とりわけ重要であるように思える。記憶をほのめかしているのだが、それは音楽中でも最大限にほのめかされるものの、はっきりと述べられはしない。そうした記憶が傷つけるからではなく、若さとは記憶をそのようにしか理解できないからである。(中略)ここには古い炎がある。少なくとも2つの楽章は他の6つとは異なり『子供の魔法の杖』にはない新鮮さを見せている。(中略)心と精神のありのままの偉大さ―あらゆる天才が与えられる以上のもの―によって、我々の愛するエドワード・エルガーは特徴づけられており、また彼の人生全体を通して特徴づけられてきたのである[5]。」

バレエ『子供部屋』はニネット・ド・ヴァロアの振付け、ナンシー・アレンの舞台装置と衣装によって、1932年3月19日サドラーズウェルズ劇場においてヴィック・ウェルズ・バレエ(現ロイヤル・バレエ団)により初演された。出演者にはアントン・ドーリンアリシア・マルコワ、ジョイ・ニュートンらが名を連ねた[6]

振付師フレデリック・アシュトン1986年の女王の60歳の誕生日を記念し、ロイヤル・オペラ・ハウスで行われたガラ公演のために『子供部屋』組曲の新しいバレエを制作し、これが彼の最後の作品となった[7]

楽曲構成

7つの楽章とコーダから構成される。演奏時間は約25分[8]

  1. Aubade (Awake)
  2. The Serious Doll
  3. Busy-ness
  4. The Sad Doll
  5. The Waggon (Passes)
  6. The Merry Doll
  7. Dreaming – Envoy (Coda)

脚注

注釈

  1. ^ "wagon"であるが、エルガーは古い綴りである"waggon"を用いている。
  2. ^ ロンドンのキングズウェイ・ホール(Kingsway Hall)で行われた。
  3. ^ ただし、1914年2月に行われたエルガーの初期のレコーディング・セッションにおいて、ピアノ小品『カリッシマ』が初演されている。
  4. ^ 1928年コロムビア・レコードが企画した作曲コンクールのために作曲されたクット・アッテルベリ交響曲第6番が、録音で初演された最初の作品であると考えられている[4]

出典

  1. ^ Moore, p. 787
  2. ^ a b c Kennedy, p. 3
  3. ^ Payne, p. 11
  4. ^ Elkin, p. 43
  5. ^ Anderson, W. R. "His Master's Voice", The Gramophone, September 1931, p. 25 [リンク切れ]
  6. ^ Haskell, Arnold (ed.) 'Gala Performance' (Collins 1955) p205.
  7. ^ Levene, Louise. "The people's ballerina", The Sunday Telegraph, 13 March 2005
  8. ^ Kennedy, p. 2

参考文献

  • Elkin, Robert (1944). Queen's Hall, 1893–1941. London: Rider. OCLC 636583612 
  • Kennedy, Michael (1989). Notes to The Nursery Suite and other short pieces. London: EMI. OCLC 36262885 
  • Moore, Jerrold Northrop (1984). Edward Elgar: a Creative Life. Oxford: Oxford University Press. ISBN 0-19-315447-1 
  • Payne, Anthony (1989). Notes to Edward Elgar: the sketches for Symphony No 3, elaborated by Anthony Payne. London: NMC. OCLC 249016825 

外部リンク


「子供部屋 (エルガー)」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「子供部屋_(エルガー)」の関連用語

子供部屋_(エルガー)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



子供部屋_(エルガー)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの子供部屋 (エルガー) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS