嫁威谷とは? わかりやすく解説

嫁威谷

読み方:ヨメオドシダニ(yomeodoshidani)

初演 寛政11.8(大坂・山下亀座)


嫁威谷

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/06 18:28 UTC 版)

嫁威谷(よめおどしだに)は、越前国吉崎御坊(現在の福井県あわら市吉崎)近くの嫁威谷(同あわら市嫁威)に伝わる伝説である。「肉付きの面」としても知られている。研究者の膽吹覚によれば、5編の物語が伝承している[1]。『蓮如上人御一代記聞書』に伝わる奇跡を脚色したもので、江戸時代には戯曲として脚色され演じられた[2]

嫁威谷

あらすじ

文明3年(1471年)、蓮如が北国筋の勧化のために、越前国吉崎道場(吉崎観音とも)において、朝夕に化導したとき、加賀国能登国越中国越後国信濃国出羽国奥羽の信者が説教を聴聞するために群衆した。その中で、越前国二袴の百姓である与惣治夫婦は、ひとえに蓮如上人の高徳を慕い、教化によって即得往生の果を得ようと、暇を見ては吉崎に通った。これを見て、与惣治の母は、無信心や邪見の心から、明け暮れの後世願いに通い詰めることは家業の妨げであるとして、吉崎通いを止めさせようと考えた。

文明4年(1472年2月20日の夜、与惣治は外出し、嫁ひとりが参聴した帰途、今日こそ時節到来と、母は、ひそかに氏神奉納のを盗みだし、白いかたびらをまとい、鬼神をまねて脅そうと、竹薮に身を潜ませて待った。そんなことはつゆ知らず、嫁が称名しながら来かかったところに、鬼形の母は現れて呼び止め、「お前は母の意に逆らい、吉崎参りしたが、その不孝の罪からは逃れられない。自分は白山権現の使いだが、今日より母の言葉に従い、改心しなければ許さないぞ」と脅した。しかし、母が薮の中から出ようとした時、服がいばらに引っかかり離れず、嫁は怯えて顧みもせずに逃げ帰った。

事の不首尾に怒った母は、日頃企んだことの失敗を残念がりつつ、被った面を取ろうとしたが、顔に張り付きどうやっても取れない。嫁は我が家に逃げ帰り、帰宅した夫に事の次第を語り、また母の不在を心配して訪ねに出て鬼形の母に会った。

母は我が子に呼びかけ、企んだ恥を泣き叫んだ。与惣治は「懺悔はその罪を滅すと聞いている。この上は吉崎御坊に上人をたずね、御化導にあいなされ」と勧めた。母は御坊を訪ね、上人の前にひざまづいて教化を受け、また先非を悔いて懺悔した。すると肉まで付着したと思われた鬼女の面は、たちまち落ち離れたという。

その時の面と言い伝えられているものが、西念寺に伝わっている。

戯曲

この伝説は1726年享保11年)に操浄瑠璃北条時頼記』にエピソードとして取り込まれた。また1799年寛政11年)には辰岡萬作によって歌舞伎に脚色され、『雪国嫁威谷』と題して大阪で上演されている。

市川斎入右団治の上方狂言では、般若の面を被った母親が鎌で嫁を殺してしまい、面が張り付いたのち自害、後生を蓮如上人が弔ったという内容に脚色された[2]

脚注

  1. ^ 膽吹覚「『嫁威谷物語』の諸本と作者に関する考察」『国語国文学』第51巻、福井大学言語文化学会、2012年3月、1-15頁、hdl:10098/9007ISSN 0288-1446NAID 120005676813 
  2. ^ a b 大百科事典 1939, p. 47.

参考文献

  • 「ヨメオドシダニ」『大百科事典 第26巻 第1冊』平凡社、1939年(原著1934年)、47頁。NDLJP:1246514/38 

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