夕方の影あいまいに春障子
作 者 | |
季 語 | 春 |
季 節 | 春 |
出 典 | |
前 書 | |
評 言 | この句は、作者のどの句集に所収されているか、さがしても見当たらない。 一読して、春の夕方の静かな家のたたずまいを想像する。 作者は、障子の外に居るのか、内に坐して、ふと障子に差す影に夕刻の近づいていることに気付いたのであろうか、静と動・明と暗を、対比させた句である。 谷崎潤一郎は、「障子のもつ美しさは、まぶしさの感じられない夢のような明るさ」と書いている。 障子は日本人の美意識である。 春障子のもつ白いやわらかな美しさと、夕方のあいまい模糊とした景色の描写にひかれる句である。 この句の作者の自筆色紙を、作者より、長門みすゞ俳句大会の席で頂いた。 毎年春になると掛けている、この句を掛け、作者の伸びやかな字に向うと、いつも一年経ったなと思う。 作者の句集『象』の中に 春障子開け閉てのたび歳をとる 喜代子 を見つけた時、まさに女の一生が詠まれていると思った、結婚して子供を育て齢を重ねてゆく絶対後戻り出来ない人間の宿命を感じる。 |
評 者 | |
備 考 |
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