呰見大塚古墳
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呰見大塚古墳 | |
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所在地 | 福岡県京都郡みやこ町大字呰見 |
位置 | 北緯33度40分39.90秒 東経130度59分39.90秒 / 北緯33.6777500度 東経130.9944167度座標: 北緯33度40分39.90秒 東経130度59分39.90秒 / 北緯33.6777500度 東経130.9944167度 |
形状 | 円墳 |
規模 | 直径13m |
埋葬施設 | 横穴式石室 |
出土品 | 耳環・玉類・単鳳環頭大刀・鉄鏃馬具・須恵器 |
築造時期 | 6世紀後半 |
史跡 | 福岡県指定史跡「呰見大塚古墳」 |
有形文化財 | 出土品(福岡県指定文化財) |
特記事項 | 装飾古墳 |
地図 |
呰見大塚古墳(あざみおおつかこふん)は、福岡県京都郡みやこ町呰見にある古墳。形状は円墳。福岡県指定史跡に指定され、出土品は福岡県指定有形文化財に指定されている。
概要
福岡県北東部、祓川中流域東岸の河岸段丘上に単独で築造された古墳である[1]。東九州自動車道建設工事の際に大部分が破壊された状態で発見され、2009・2011年度(平成21・23年度)に発掘調査が実施されている。
墳形は円形で、直径約13メートルを測る[2]。墳丘は破壊が著しいが、2段築成の可能性があり、地山整形後に地山の土やそれと客土を混ぜた土を10センチメートルずつ積んで構築される[2]。墳丘の墓道際では装飾付須恵器や須恵器蓋坏4セットが出土し、葬送儀礼の痕跡とされる[2]。また墳丘周囲には二重の周溝(内周溝・外周溝)が巡らされており、外周溝を含めた古墳全体としては直径約33メートルを測る[2]。埋葬施設は横穴式石室で、南西方向に開口した(現在は埋め戻し)。玄室・前室からなる複室構造の装飾石室で、玄室・玄門部には赤色・黒色顔料を使用した文様が認められる。石室内は盗掘に遭っているが、調査では副葬品として耳環・玉類・単鳳環頭大刀・鉄鏃・馬具・須恵器などが出土している。
築造時期は、古墳時代後期の6世紀後半(小田編年IIIB期)頃と推定され、7世紀初頭頃までの追葬や葬送儀礼が認められる[3]。京築地方で最初に発見された装飾古墳として重要視されるとともに、副葬品・儀礼痕跡が確認されたことで装飾古墳における葬送儀礼を考察するうえでも注目される古墳になる。
古墳域は2019年(令和元年)に福岡県指定史跡に指定され、出土品は2022年(令和4年)に福岡県指定有形文化財に指定されている。現在では石室部分は埋め戻されたうえで、古墳域への立ち入りは制限されている。
遺跡歴
- 2009年度(平成21年度)、東九州自動車道建設工事の際に古墳として発見、発掘調査:第1次調査(福岡県教育庁総務部文化財保護課、2015年に報告)[2]。
- 2011年度(平成23年度)、古墳保存に向けた計画変更に伴う発掘調査:第2次調査、石室保護処置・埋め戻し(九州歴史資料館、2015年に報告)[2]。
- 2019年(令和元年)9月13日、福岡県指定史跡に指定。
- 2022年(令和4年)3月25日、出土品が福岡県指定有形文化財に指定。
埋葬施設
埋葬施設としては両袖式横穴式石室が構築されており、南西方向に開口した(現在は埋め戻し)。玄室・前室からなる複室構造の石室である。石室の規模は次の通り[2]。
- 玄室:長さ3メートル、幅2メートル
- 前室:長さ約1.5メートル、幅約1.5メートル
- 羨道:長さ約2メートル
- 墓道:長さ約6メートル、幅2.2-2.9メートル、深さ約1.3メートル
石室の石材は花崗岩。玄室の平面形は長方形、前室の平面形は正方形である。
玄室の奥壁・両側壁、玄門部両袖石には赤色・黒色の顔料を使用した文様が認められる。玄室奥壁の右側には赤色の大型二重同心円文が、左側には複数の同心円文が描かれたとみられる(調査時点ですでに不鮮明)。玄室左側壁には赤色の複数の大型三角文などが、右側壁には赤色の複数の三角文などが描かれる。玄門左袖石は前面・側面・背面の3面に、右袖石は前面・背面の2面に施文が認められる[1]。
出土品
発掘調査で出土した遺物は次の通り[3]。
- 玄室出土
- 耳環
- 管玉
- ガラス玉
- 前室出土
- 単鳳環頭大刀
- 鉄鏃
- 馬具 - 雲珠、辻金具など。
- 須恵器 - 坏蓋。
- 墳丘上・周溝内出土
- 装飾付須恵器
- 須恵器 - 蓋坏4セット。
文化財
福岡県指定文化財
- 有形文化財
- 呰見大塚古墳出土品 409点(考古資料) - 九州歴史資料館保管。2022年(令和4年)3月25日指定。
- 史跡
- 呰見大塚古墳 - 2019年(令和元年)9月13日指定。
関連施設
- 九州歴史資料館(小郡市三沢) - 呰見大塚古墳の出土品を保管。
脚注
- ^ a b 福岡県の装飾古墳 2025.
- ^ a b c d e f g 東九州自動車道関係埋蔵文化財調査報告17 2015.
- ^ a b 京都平野と豊国の古代 2022.
参考文献
(記事執筆に使用した文献)
- 史跡説明板
- 「呰見大塚古墳現地説明会資料」 (PDF) (福岡県教育委員会、2010年) - リンクは九州歴史資料館。
- 『東九州自動車道関係埋蔵文化財調査報告17 -福岡県京都郡みやこ町呰見所在遺跡の調査 呰見大塚古墳・カワラケ田遺跡2次調査3(IV区)-』九州歴史資料館、2015年。 - リンクは奈良文化財研究所「全国文化財総覧」。
- 坂本真一「呰見大塚古墳」『京都平野と豊国の古代』九州歴史資料館〈特別展図録〉、2022年。
- 「呰見大塚古墳」『福岡県の装飾古墳』福岡県教育委員会〈福岡県文化財調査報告書第288集〉、2025年。
外部リンク
- 呰見大塚古墳出土品 - 福岡県教育庁教育総務部文化財保護課「福岡県の文化財」
- 呰見大塚古墳のページへのリンク