免許維持路線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/07 13:23 UTC 版)
免許維持路線(めんきょいじろせん)とは、路線の維持のみを目的として運行される本数の極めて少ない路線バスの通称である。本項では、特に断りのない限り日本の事例について解説する。
概要
バス路線を開設するには、国土交通省による許認可に3ヶ月程度を要するほか、バス停の設置などのため道路管理者(自治体)、交通管理者(警察)、沿道地権者との調整が必要である[1][2]。一度廃止した路線を再び運行する場合は、これらの手続きを改めて行う必要がある。そのため、運行中の路線に需要がみられない場合でも、将来的な需要を見越して廃止せず、極めて少ない本数で運行を継続する場合があり、このような路線が「免許維持路線」と呼ばれている[3][4][5]。なお、「免許維持路線」について国や事業者による定義は存在しない。極端に少ない便数で路線の運行を続ける意図が事業者から明らかにされることは少ないが、「免許維持を目的としている」と認める例も少数ながら存在する[6][7]。
運行頻度は路線や会社によって異なる。一例として神奈川中央交通では週1便[注釈 1][3][8]の路線があるほか、さらに本数が少ない例として、京都バス95系統は毎年春分の日に1本のみ運行される[9]。京都バスでは「年1便の運行」という希少性がSNSなどを通じてバス愛好家の間で話題となった結果、2012年、2013年には5人程度だった乗客が2014年には満員となり、年1便にも関わらず2台のバスで運行される混雑路線となっている[5]。
運転手不足などの理由で不採算路線が減便され免許維持路線化する場合もあるが[7]、一方で将来需要の回復が見込めずそれらの路線を廃止するケースもある[6]。
一方で、積極的な路線維持のためではなく、手続き上路線の休廃止が間に合わないために極端な減便という形が取られる例もある。バス路線の休止・廃止を行うには半年以上前に届けることが必要であるが、ダイヤ改正は1ヶ月前までの届出で可能であるため、いったん年1便まで減便しておいて、翌年の運行までに休廃止するという形を取ることで、実質的な休廃止日を早めることが可能となる[10]。
脚注
注釈
- ^ 1994年に発行された『神奈中百科2』では週1便の路線の他、1日2便から3便程度の路線も「運行回数激少路線」として紹介されている。
出典
- ^ “どうしてここにバス停が”. 国土交通省中部運輸局 (2017年). 2025年11月7日閲覧。
- ^ “自治体交通担当者のための道路運送法実務マニュアル”. 国土交通省中部運輸局 (2024年). 2025年11月7日閲覧。
- ^ a b “神奈川中央交通「週1便」バス廃止へ 最終運行を前にファンも詰めかけ”. カナロコ by 神奈川新聞. 2025年7月19日閲覧。
- ^ “バスの本数に驚愕!! 神奈中「南01系統」が歩み続けた45年が壮絶すぎる!!”. 自動車情報誌「ベストカー」 (2024年4月26日). 2025年7月19日閲覧。
- ^ a b “京都名物の「年1便・春分の日運行バス」。「乗り遅れたら、次は1年後」のバス成立の背景と、大混雑も「路線は年々減少」のワケ”. 東洋経済オンライン (2025年3月19日). 2025年7月19日閲覧。
- ^ a b 宮武和多哉 (2025年3月31日). “神奈中は一挙に6路線。「免許維持路線」バス廃止が相次ぐ2025年春”. トラベル Watch. 2025年7月19日閲覧。
- ^ a b “「幻のバス路線」が増加、乗り遅れたら次の便は1年後 路線維持へ苦肉の策|社会|京都・滋賀の記事|京都新聞 ON BUSINESS”. 京都新聞 ON BUSINESS (2021年4月1日). 2025年7月19日閲覧。
- ^ 『神奈中百科 2』1994年。doi:10.11501/13310142。2025年7月19日閲覧。
- ^ 西村まさゆき (2016年3月23日). “1年1便片道のみ、運行本数が少なすぎる「京都バス95系統」”. デイリーポータルZ. 2025年7月19日閲覧。
- ^ 具志堅浩二 (2024年3月6日). “京阪バス・休廃止のはずの路線で「ダイヤ改正」ってどういう意味? 掲示物から伝わる乗務員不足の切迫感”. 2025年10月20日閲覧。
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