伊予鉄道7000系電車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/07 04:08 UTC 版)
伊予鉄道7000系電車 | |
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基本情報 | |
製造所 | 近畿車輛 |
運用開始 | 2025年2月21日[1] |
投入先 | 高浜線・横河原線・郡中線 |
主要諸元 | |
編成 | 3両編成2本(MT比1M2T) |
軌間 | 1,067 mm |
電気方式 | 直流 600/750 V (架空電車線方式) |
最高運転速度 | 65 km/h |
設計最高速度 | 80 km/h |
編成定員 | 340人 |
車両定員 | 110人(クハ7300・クハ7500) 120人(モハ7100) |
車両重量 | 28.3 t(クハ7300) 33.2 t(モハ7100) 27.5 t(クハ7500) |
編成重量 | 89.0 t |
全長 | 18,000 mm |
全幅 | 2,779 mm |
全高 | 4,079 mm |
台車 | インダイレクトマウント 積層ゴム片側支持式 (電動車:KD328A 付随車:KD329B) |
制御方式 | SiCハイブリッド素子採用IGBT素子VVVFインバータ制御 |
保安装置 | ATS |
伊予鉄道7000系電車(いよてつどう7000けいでんしゃ)は、伊予鉄道の鉄道線用電車。
老朽化が進む700系の置き換え用として、2025年2月より投入が進められている。2027年2月までに3両編成6本(18両)が投入される予定[2]。鉄道線(郊外線)向けに投入される完全新造車は実に67年ぶりである。
編成は制御車のクハ7500形およびクハ7300形、電動車のモハ7100形から構成される。
車両来歴
当車両は車齢平均が55年以上となり、老朽化した京王からの譲受車輛である700系の置き換え用として導入された[3]。
導入に当たっては多くの問題があった。まず「車両の大型化」である。大手私鉄は乗車定員を増やすためなどで、昔に比べ車体を大きく製作する傾向がある。伊予鉄の線路は狭軌であり、規格も低いため、大型化した車両の走行は難しい。さらに電圧の問題もあった。JRや大手私鉄の多くは変電所が少なく済む1500ボルトだが、伊予鉄は大手町駅前で600ボルトの市内電車と郊外電車の高浜線が平面交差している関係で、高浜線が直流600ボルト、郡中線と横河原線が直流750ボルトとなっている。車両の機器類は精密化しており、対応電圧が大きく違う車両を使用する際は、大幅な更新が必要になる。中古車探しは難航し、67年ぶりとなる「完全」新設計の車両導入へとかじを切った。2022年夏ごろより車両メーカー各社と交渉を始め、最終的に製造元に決まったのが大阪の近畿車両であった。伊予鉄の責任者にあたる車両部長の三好学は「お付き合いがなく、代表電話にかけて、担当者を紹介してもらうところから始まりました」と振り返る[4][5]。
2022年11月新型車両のプロジェクトチームが発足し、同年秋ごろ「乗ってみたくなる未来型、流線形のフォームで、オレンジ色のカラーリングで愛媛らしさを表現したい」とのコンセプトを伝達。何度も修正を繰り返し、2023年1月にデザインがまとまった。約1年半後の2024年5月、車両の制作を担う近畿車輛の工場にて、車体単独の6面体が完成し、鋼体検査が行われた。そして2024年10月、完成した出荷前の最終検査が行われ、工場内を様々な速度で走行テストし、特に車両の安全性能、耐久性、各機器の動作、電気系統の問題、さらには車両全体の外観に至るまで、細部にわたる確認が行われた[6][7]。
2024年11月2日、近畿車輛を出場。甲種輸送が行われた。徳庵 - 大阪 - 岡山 - 高松(貨) - 松山(貨)のルートを通り、2024年11月3日未明、松山貨物駅へ到着。JRの線路は伊予鉄と同じく狭軌のため、自らの車輪で走った。松山貨物駅では最終的な点検と調整が行われた後、松山運転所まではキハ32形が牽引。11月4日21時、古町車庫へ向けて陸送が始まった。同月4日から三日連続で、深夜にトレーラーなどを使い2両ずつJR松山駅近くに輸送。初日はクハ7301・モハ7101。伊予鉄市内電車の軌道に下ろし、牽引車で約800メートル先の古町車両基地に搬入された。古町車両基地にはトレーラーで直接乗り付けられるスペースがない。ため、路面電車の搬入も同様に道路上で実施している。全国的には珍しく、近畿車輛も道路上での作業は初めてで、大阪で入念にリハーサルを実施したという[8][9][10][11]。
搬入後12月より試運転を開始[12]。2025年2月21日には松山市駅にて出発式が行われた。なお、出発式の前に古町駅 - 松山市駅間で、 式典参加者や報道関係者向けの試乗会も同時に行われた[13]。
完全自社設計のステンレス製構体を用いる3扉・18m級車体であり、前面は普通鋼製で流線型の非貫通構造を採用している。この設計にはメーカーと何度も協議を重ね、「乗ってもらいたい都会的なフォルム」にしたく、特に流線型の角度にこだわったという[14]。
可変周波数駆動インバーターと回生ブレーキを使用し、700系と比べて約50%の電力で走行することができ、一部は再生可能エネルギー由来[2][15]。
前面・側面の行先表示器にはフルカラーLEDを採用。車内には全ての乗降扉上部にデジタルサイネージ(ハーフサイズの液晶ディスプレイ)が設置され、車内案内表示および広告表示用として使用されている。また、各車両に防犯カメラも設置されている。照明は随所にLEDが使用されている。窓の寸法を拡大した一方で網棚・中吊り広告は設置されていない。既存車両はマイク放送のみだが、新たに録音音源を流せるようになり、インバウンド(訪日客)増加に対応した英語表記・アナウンスも放送する[16][17][18]。
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車内
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各ドア上部に設置されているデジタルサイネージ(車内案内表示装置)
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7502編成。(石手川公園駅にて)
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梅津寺駅 -高浜駅間(2025年2月)
車両価格は合計約40億円を見込んでおり、同社では購入に際し「環境省並びに国土交通省からの国庫補助金を活用する」としている[1]。
運用
伊予鉄道郊外線の全線でほかの車両と共通運用される。
2025年2月21日[1]より、高浜線・横河原線で、同年月24日により郡中線でも運行を開始した。
編成
2025年6月現在、2編成6両が在籍する。 3両固定編成。 2027年まで、年に2編成のペースで投入し、最終的には6編成18両となる予定。
製造年 | ||||
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クハ7500形 | モハ7100形 | モハ7300形 | ||
車番 | クハ7501 | モハ7101 | モハ7301 | 2025年2月 |
クハ7502 | モハ7102 | モハ7302 |
脚注
- ^ a b c 「新型鉄道車両 7000 系 出発式について (PDF)」(プレスリリース)、株式会社伊予鉄グループ、2025年2月10日。2025年3月9日閲覧。
- ^ a b 『鉄道ピクトリアル 2024年3月号』電気車研究会、2024年、3頁。
- ^ “伊予鉄 来年2月デビューの新車両「7000系」 大阪から鉄路、陸路で車両基地に到着”. 愛媛新聞社. 2025年6月22日閲覧。
- ^ “67年ぶり🎉郊外電車 新型車両 7000系デビューまでの軌跡🚋 │ 伊予鉄公式ブログ”. iyotetsublog.com. 2025年6月22日閲覧。
- ^ “伊予鉄 来年2月デビューの新車両「7000系」 大阪から鉄路、陸路で車両基地に到着”. 愛媛新聞社. 2025年6月22日閲覧。
- ^ “67年ぶり🎉郊外電車 新型車両 7000系デビューまでの軌跡🚋 │ 伊予鉄公式ブログ”. iyotetsublog.com. 2025年6月22日閲覧。
- ^ “伊予鉄 来年2月デビューの新車両「7000系」 大阪から鉄路、陸路で車両基地に到着”. 愛媛新聞社. 2025年6月22日閲覧。
- ^ “伊予鉄道 7000系 甲種輸送/2024年11月5日(火) - 鉄道コム”. www.tetsudo.com. 2025年6月22日閲覧。
- ^ “伊予鉄道7000系,併用軌道区間で搬入|鉄道ニュース|2024年11月7日掲載|鉄道ファン・railf.jp”. 鉄道ファン・railf.jp. 2025年6月22日閲覧。
- ^ “67年ぶり🎉郊外電車 新型車両 7000系デビューまでの軌跡🚋 │ 伊予鉄公式ブログ”. iyotetsublog.com. 2025年6月22日閲覧。
- ^ “伊予鉄 来年2月デビューの新車両「7000系」 大阪から鉄路、陸路で車両基地に到着”. 愛媛新聞社. 2025年6月22日閲覧。
- ^ “伊予鉄道の新型車両7000系、内装を紹介 - 動画も公開、試運転開始”. マイナビニュース (2024年12月24日). 2025年6月22日閲覧。
- ^ “新型鉄道車両 7000 系 出発式について” (2025年2月10日). 2025年6月22日閲覧。
- ^ “電車に“あるはず”のものが無い! 67年ぶりの「思いきった新型車両」ついにデビュー 伊予鉄”. 乗りものニュース (2025年2月26日). 2025年6月22日閲覧。
- ^ “愛媛の伊予鉄道、新型車両7000系を導入へ 2025年2月に - 日本経済新聞”. 日本経済新聞 電子版. 2025年6月22日閲覧。
- ^ “伊予鉄 来年2月デビューの新車両「7000系」 大阪から鉄路、陸路で車両基地に到着”. 愛媛新聞社. 2025年6月22日閲覧。
- ^ “新型鉄道車両 7000 系 出発式について”. 伊予鉄道 (2025年2月10日). 2025年6月22日閲覧。
- ^ “電車に“あるはず”のものが無い! 67年ぶりの「思いきった新型車両」ついにデビュー 伊予鉄”. 乗りものニュース (2025年2月26日). 2025年6月22日閲覧。
参考文献
- 『鉄道ピクトリアル 2024年3月号』電気車研究会、2024年、34頁。
外部リンク
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