バンドギャップの生じる理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 01:09 UTC 版)
「クローニッヒ・ペニーのモデル」の記事における「バンドギャップの生じる理由」の解説
ポテンシャルの無い自由電子モデルにおいては波動関数は ψk(x) = u(x)exp(ikx) の形を持つ。一方、周期 a のポテンシャルを持つモデルにおいては、これに対応する波動関数はブロッホの定理より波動関数は ψ k ( x ) = ∑ m c m e i ( k − 2 π m a ) x {\displaystyle \psi _{k}(x)=\sum _{m}c_{m}e^{i(k-{\frac {2\pi m}{a}})x}} の形を持つ。各項の係数 cm の絶対値(その2乗が波動関数への寄与と考えられる)は m = 0 が最大である。 クローニッヒ・ペニーのデルタ関数型のポテンシャルでは係数 cm は大雑把には (k−2πm/a)2−k2 の絶対値が小さいほど大きくなる。もっとも大きい係数 c0 の項と二番目に大きい絶対値を持つ項 cm の2項を用いて波動関数を ψ k ( x ) = c 0 e i k x + c m e i ( k − 2 π m a ) x {\displaystyle \psi _{k}(x)=c_{0}e^{ikx}+c_{m}e^{i(k-{\frac {2\pi m}{a}})x}} と近似できる。 k>0, U0 > 0 の条件を前提とすると、0 < k < π/a においては、c0 と cm (m=1) は反符号であり、cm の絶対値は 0 から k が増加するにつれて増加し、π/a で c0 と等しくなる。π/a < k < (5/3)π/a においては、c0 と cm (m=1) は同符号であり、cm (m=1) の絶対値は 2(n+1)π/a において c0 と等しく、k が増加するにつれて減少する。k = (5/3)π/a において (k−2πm/a)2−k2 の絶対値が m=1 と m=2 で等しくなり、これより k が大きくなると m=2 の項の寄与の方が大きくなる。 (5/3)π/a < k < 2π/a においては c0 と cm (m=2) は反符号であり、cm (m=2) の絶対値は k が増加するにつれて増加し、2π/a で c0 と等しくなる。 2π/a < k < (13/5)π/a においては c0 と cm (m=2) は同符号であり、cm (m=2) の絶対値は 2(n+1)π/a において c0 と等しく、k が増加するにつれて減少する。k = (13/5)π/aにおいて (k−2πm/a)2−k2 の絶対値が m=2 と m=3 で等しくなり、これより k が大きくなると m=3 の項の寄与の方が大きくなる。(13/5)π/a < k < 3π/a においては c0 と cm (m=3) は反符号であり、cm (m=2) の絶対値は k が増加するにつれて増加し、3π/a で c0 と等しくなる。3π/a < k < (25/7)π/a においては c0 と cm (m=3) は同符号であり、cm (m=1) の絶対値は 2(n+1)π/a において c0 と等しく、k が増加するにつれて減少する。 以上のように波動関数は変化していくが、k = nπ/a においては2つの波動関数が解となっている。すなわち k を小さい側から k → nπ/a に近づけた場合の解 ψ k ( x ) = c 0 e i k x − c 0 e − i k x {\displaystyle \psi _{k}(x)=c_{0}e^{ikx}-c_{0}e^{-ikx}} と k を大きい側から k → nπ/a に近づけた場合の解 ψ k ( x ) = c 0 e i k x + c 0 e − i k x {\displaystyle \psi _{k}(x)=c_{0}e^{ikx}+c_{0}e^{-ikx}} がある。差の形式の解においては波動関数はポテンシャルが値を持つ x = na の位置で 0 となりポテンシャルの影響を受けず、自由電子モデルの場合と同じエネルギー固有値を持つ。一方、和の形式の解においては、x = na の位置で波動関数は値を持つのでポテンシャルの影響を受けた分だけ高いエネルギー固有値を持つ。これにより k = nπ/a においてエネルギーが不連続にジャンプすることになり、バンドギャップが生じることになる。
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