キーストーン・パイプラインの原油流出_(2022年)とは? わかりやすく解説

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キーストーン・パイプラインの原油流出 (2022年)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/21 03:38 UTC 版)

キーストーン・パイプライン原油流出
現場 アメリカ合衆国カンザス州ワシントン郡
座標 北緯39度50分21秒 西経96度53分13秒 / 北緯39.83917度 西経96.88694度 / 39.83917; -96.88694座標: 北緯39度50分21秒 西経96度53分13秒 / 北緯39.83917度 西経96.88694度 / 39.83917; -96.88694
発生日 2022年12月7日
運営者 TCエナジー
流出詳細
流出量 14000バレル

キーストーン・パイプラインでの原油流出2022年12月7日に発生し、原油の漏洩により、14,000バレルの原油がカンザス州ワシントン郡の小川に流出した。アメリカ合衆国においては2013年ノースダコタ州パイプライン流出事故以来最大規模であり、同時にキーストーン・パイプライン史上でも最大である[1][2][3]

背景・前史

キーストーン・パイプライン・システムは、カナダはアルバータ州西カナダ堆積盆地英語版からテキサス州の製油所まで延びている[4]TCエナジー英語版アルバータ州政府英語版が所有しており[5]、使用前にストレステストが行われる[3]

2016年には、約400バレル(64立方メートル)の原油が元のキーストーンのパイプネットワークから漏れによって放出されたが、連邦捜査官は「溶接の異常」に起因するものだとしていた[6]。また2017年11月17日にもサウスダコタ州アマースト付近の農地にパイプラインから約9,600バレル(1530立方メートル)が流出[7]、2018年4月にも1540立方メートルの流出が起こっており2002年以降7番目に大きな流出となった[8][9]2019年10月31日にも1450立方メートルが流出した[10]

流出の発覚

東部夏時間12月7日の午後9時(日本時間8日午前10時)、TCエナジーは圧力低下に伴い、キーストーン・パイプラインの緊急停止を開始した[11]アメリカ合衆国環境保護庁は流出を食い止めるためにフィルダム(土砂のダム)を建設した。流出はカンザス州ワシントン郡付近で検知され、リトルブルー川英語版に直接流れ込む小川、ミル・クリーク(Mill Creek)に流れ込んでいた[3]。避難命令は出なかったという[12]。パイプライン・危険物安全局(Pipeline and Hazardous Materials Safety Administration)は、この漏洩の調査を開始[11]。環境保護庁から派遣された2名はワシントン郡地域の飲料水への影響はないと判断した[13]。8日にはTCエナジーがパイプライン停止を発表し再開は未定とした[14]。11日にも同社は発表を行い原因の特定は未だできていないとした[15]。13日には処理にあと数週間かかる見通しが示されたと地元当局が明らかにした[16]が、14日にはTCエナジーが流出の影響を受けていない区間の稼働再開を規制当局と顧客に通知したと発表した[17]。同年12月15日、アメリカの環境保護局が流出した油は「希釈ビチューメン(ディルビット)」であり浄化作業がより困難になっていると明らかにした[18]が、12月20日にはTCエナジーが全面的な稼働再開に向けた計画を米規制当局に提出したと判明した[19]

影響

経済的影響

操業停止を受け、原油価格は5%上昇したが後に後退した。この急騰は、2021年以降の世界的エネルギー危機を受けた原油価格の売り込みの直後に発生した[20]。TCエナジーは、漏えいのニュースを受けて不可抗力を宣言した[21]。12月11日から12日にかけては、原油先物価格が1%以上高騰した[22]

環境的影響

この漏洩は、原油よりも毒性が強く水に沈みうるオイルサンドという砂岩の一種をパイプラインで移送することから、環境保護団体から懸念の声が上がった[3]

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ Seba (2022年12月9日). “Investigators, cleanup crews begin scouring oil pipeline spill in Kansas”. Reuters. 2022年12月9日閲覧。
  2. ^ Keystone pipeline leaks 14,000 barrels of oil into creek in biggest spill yet”. The Guardian (2022年12月9日). 2022年12月10日閲覧。
  3. ^ a b c d Kansas oil spill is Keystone pipeline's biggest ever, according to federal data”. NPR (2022年12月10日). 2022年12月10日閲覧。
  4. ^ United States Department of State Bureau of Oceans and International Environmental and Scientific Affairs (2013年3月1日). Draft Supplemental Environmental Impact Statement for the Keystone XL Project Applicant for Presidential Permit: TransCanada Keystone Pipeline, LP (SEIS) (Report). United States Department of State. http://keystonepipeline-xl.state.gov/documents/organization/205719.pdf 2022年12月10日閲覧。. 
  5. ^ TC Energy – Keystone XL Pipeline” (英語). www.tcenergy.com. 2022年12月10日閲覧。
  6. ^ November spill from Keystone pipeline larger than first estimated” (英語). UPI. 2022年12月31日閲覧。
  7. ^ "Keystone Pipeline spill in South Dakota twice as big as first thought", Associated Press, April 7, 2018
  8. ^ "The Keystone Pipeline oil spill was nearly twice as big as TransCanada said", Vice News, Sarah Sax, April 10, 2018
  9. ^ PHMSA: Stakeholder Communications – Operator Information”. 2018年7月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年7月6日閲覧。
  10. ^ Kumar, Devika Krishna (2019年10月31日). “Keystone pipeline shut after spilling 9,000 barrels of oil in N. Dakota”. Thomson Reuters Foundation News. 2019年11月1日閲覧。
  11. ^ a b Egan (2022年12月8日). “Keystone Pipeline shuts down after oil leak, halting flow of 600,000 barrels a day”. CNN. 2022年12月9日閲覧。
  12. ^ Mercado (2022年12月9日). “An Oil Spill in Kansas Has Shut Down the Keystone Pipeline”. Gizmodo. 2022年12月10日閲覧。
  13. ^ Bryson Taylor (2022年12月9日). “Oil Spill in Kansas Prompts Shutdown of Keystone Pipeline System”. The New York Times. 2022年12月10日閲覧。
  14. ^ キーストーン・パイプライン停止、カンザス州で原油1.4万バレル流出” (日本語). ロイター通信 (2022年12月8日). 2022年12月30日閲覧。
  15. ^ 「キーストーン」原油送管、流出原因まだ不明 再開時期も未定” (日本語). ロイター通信 (2022年12月12日). 2022年12月31日閲覧。
  16. ^ キーストーン原油流出の処理にあと数週間かかる見通し=地元当局” (日本語). ロイター通信 (2022年12月14日). 2023年1月4日閲覧。
  17. ^ 「キーストーン」原油送管、一部稼働再開を通知” (日本語). ロイター通信 (2022年12月15日). 2023年1月11日閲覧。
  18. ^ キーストーンパイプライン、「希釈ビチューメン」流出で浄化困難” (日本語). ロイター通信 (2022年12月16日). 2023年1月14日閲覧。
  19. ^ 「キーストーン」原油送管、稼働再開計画を米当局に提出=関係筋” (日本語). ロイター通信 (2022年12月20日). 2023年1月21日閲覧。
  20. ^ Egan (2022年12月8日). “Keystone Pipeline shuts down after oil leak, halting flow of 600,000 barrels a day”. CNN. 2022年12月9日閲覧。
  21. ^ Keystone Pipeline Is Shut Down After Oil Spills Into Creek in Kansas”. Bloomberg News (2022年12月8日). 2022年12月10日閲覧。
  22. ^ 原油先物1%超上昇、パイプライン再開やロシア巡る不透明感で” (日本語). ロイター通信 (2022年12月12日). 2022年12月31日閲覧。



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