ウクライナバロックとは? わかりやすく解説

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ウクライナ・バロック

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/04 16:22 UTC 版)

聖ムィハイール黄金ドーム修道院のウクライナ・バロック建築

ウクライナ・バロックウクライナ語: Українське барокоウクライィーンスィケ・バローコ)は、18世紀ウクライナで発展したバロック様式である。コサックによるヘーチマン国家を中心に栄えたため、コサック・バロックとも呼ばれる。また、ヘーチマンイヴァン・マゼーパの文化振興にちなみ、マゼーパ様式とも称される[1]

歴史

ウクライナは、長らくポーランド王国の影響下にあり、正教国家でありながらカトリック西ヨーロッパの文化的影響を強く受けた[2]。17世紀、コサックヘーチマン国家を形成し、ポーランドやロシアモスクワ大公国)から独立した独自の文化を育んだ[1]。歴代ヘーチマン、特にイヴァン・マゼーパは、文化振興に力を注ぎ、独自のバロック様式を生み出した[3]

18世紀、ガリシアで活躍した彫刻家ヨハン・ゲオルク・ピンゼル英語版は、ウクライナ・バロックの彫刻を代表する人物であり、ルーブル美術館での展覧会(2012年)で国際的に評価された[4]

建築

聖ソフィア大聖堂のバロック装飾
キーウ洞窟大修道院の生神女就寝大聖堂
ポクロフスキー大聖堂のウクライナ・バロック様式

ウクライナ・バロック建築は、西ヨーロッパのバロックに比べ、控えめな装飾と簡素なフォルムが特徴である[1]。ウクライナの伝統的な木造三分割式聖堂の構造を石造で再現し、軽快で調和のとれた外観を持つ[5]。戦災で多くが失われたが、以下のような建築が現存する:

芸術

ウクライナ・バロックの絵画は、三位一体大門教会の壁画に代表される。宗教的テーマに象徴主義アレゴリーを織り交ぜ、鮮やかな色彩と動的な構図が特徴である[1]版画芸術も急成長し、紋章学の記号や壮麗な装飾を用いた複雑な体系が発展した[2]。これらの作品は、ヘーチマン国家の文化的アイデンティティを強化した[3]

影響と遺産

ウクライナ・バロックは、ロシアのナルィーシュキン・バロックに大きな影響を与えた[1]。その装飾技法や建築様式は、モスクワの教会建築に取り入れられた[2]。また、1927年から1932年キーウ旅客駅の建て替えでは、ウクライナ・バロックと構成主義の要素が融合したデザインが採用された[3]。現代でも、ウクライナの文化的アイデンティティの象徴として、建築や芸術作品が保存・研究されている[5]

脚注

  1. ^ a b c d e f g Baroque” (英語). Encyclopedia of Ukraine. 2025年5月4日閲覧。
  2. ^ a b c 伊東一郎「ゴーゴリ - ウクライナ・バロック - 民衆文化 (M・バフチン『ラブレーとゴーゴリ』に寄せて)」『早稲田大学大学院文学研究科紀要. 文学・芸術学編』第39巻、早稲田大学大学院文学研究科、1993年、79-92頁、ISSN 091484932024年3月3日閲覧 
  3. ^ a b c d e f Українське бароко” [ウクライナ・バロック] (ウクライナ語). Міністерство культури України. 2025年5月4日閲覧。
  4. ^ Johann Georg Pinsel, A Baroque Sculptor in 18th-Century Ukraine” (英語). Louvre Museum. 2023年6月29日閲覧。
  5. ^ a b c Харьков. Собор Покрова Пресвятой Богородицы” [ハルキウ。生神女庇護大聖堂] (ロシア語). Sobory.ru. 2025年5月4日閲覧。
  6. ^ Киев. Николаевский военный собор” [キーウ。ムィコラーイ軍事大聖堂] (ロシア語). Sobory.ru. 2025年5月4日閲覧。

関連文献

関連項目

外部リンク

  • Baroque” (英語). Encyclopedia of Ukraine. 2025年5月4日閲覧。
  • Українське бароко” [ウクライナ・バロック] (ウクライナ語). Міністерство культури України. 2025年5月4日閲覧。



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