アル=アフダルとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > アル=アフダルの意味・解説 

アル=アフダル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/10 06:15 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動

アル=アフダルアラビア語: الأفضل‎ Al-Afdal、1170年 - 1225年?)は、アイユーブ朝の王族。アイユーブ朝の建国者サラーフッディーン(サラディン)の17人の男子の一人で、 ダマスカスの統治権を相続した。1187年5月1日のクレッソン泉の戦いにおいて、アイユーブ軍の司令官を務めた。

生涯

1170年にサラディンの子として誕生する[1]

1187年3月にアフダルはカラク包囲に向かったサラディンに命じられてアッカー(アッコン)攻撃に向かい、進軍中にテンプル騎士団聖ヨハネ騎士団の攻撃を退けた[2]。アッカー周辺で略奪を行った後、ティベリアに移動してサラディンが率いる本隊の到着を待った。ヒッティーンの戦いの後、同年7月9日にアイユーブ朝の支配下に置かれたアッカーが、アフダルにイクター(分与地)として与えられた[3]

1193年3月にサラディンはダマスカスで没する。アフダルはサラディンの没前にカーディー(裁判官)を集めて誓約書を作成し、シリアの有力アミール(司令官)に忠誠を誓わせた[4]。しかし、サラディンの死後にスルターンの地位の相続問題は保留され、アフダルはダマスカス、エルサレムバールベック、シリアの沿岸部を相続する[5]。アイユーブ朝の領土はアイユーブ家の一族によって分割され、カイロを中心とするエジプトはアフダルの弟アル=アジーズアレッポはもう一人の弟アッ=ザーヒル・ガーズィー英語版が相続していた[6]

サラディン没時のダマスカスに不在だったエジプト・北イラクのアミールたちはアフダルへの忠誠を誓う誓約書に署名しておらず、アフダルが自身の政権の正統性の保障を求めたアッバース朝カリフナースィルは回答を出さなかった[7]アル=ファーディルら有力な臣下はアフダルを見限り、カイロのアジーズの支持に回った[8]1194年春にアジーズはアフダルに礼拝のフトバ英語版と貨幣に名前を入れるスルターンが有する権限を譲渡するよう要求したが、軍事衝突の直前に両者の間に妥協が成立した[8]

アフダルは統治を宰相のディヤーウッディーン・イブン・アル=アシールに委任し、自身は飲酒と放蕩に耽っていた[9]。また、叔父のアル=アーディルを頼り、アジーズから攻撃を受けた時に援助を求めた。1196年に7月にアフダルはアーディルによってダマスカスを奪われ、サルハド英語版近郊の城塞に追放される[9]。後悔の念に駆られたアフダルはこれまでの生活を改め、禁欲的な宗教生活を送ることを誓った[9]1198年にアジーズが急死したすると、アフダルは復権を試みたがアーディルに敗れ、再び隠遁生活を送った。アイユーブ家出身の歴史家アブ・アル=フィダは、1225年にアフダルはサルハドで没したと記している[10]

脚注

  1. ^ 佐藤『イスラームの「英雄」サラディン』、118頁
  2. ^ 佐藤『イスラームの「英雄」サラディン』、167頁
  3. ^ 佐藤『イスラームの「英雄」サラディン』、172頁
  4. ^ 佐藤『イスラームの「英雄」サラディン』、202-203,211頁
  5. ^ 佐藤『イスラームの「英雄」サラディン』、203頁
  6. ^ 佐藤『イスラームの「英雄」サラディン』、203-204頁
  7. ^ 佐藤『イスラームの「英雄」サラディン』、211頁
  8. ^ a b 佐藤『イスラームの「英雄」サラディン』、212頁
  9. ^ a b c マアルーフ『アラブが見た十字軍』、379頁
  10. ^ Foundation for Medieval Genealogy

参考文献

  • 佐藤次高『イスラームの「英雄」サラディン』(講談社選書メチエ, 講談社, 1996年5月)
  • アミン・マアルーフ『アラブが見た十字軍』(牟田口義郎、新川雅子訳, ちくま学芸文庫, 筑摩書房, 2001年2月)
  • Husain, Shahnaz (1998). Muslim heroes of the Crusades. 

アル・アフダル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/14 04:38 UTC 版)

ジハード (小説)」の記事における「アル・アフダル」の解説

サラディン長子史実のアル・アフダルと同一。自らの責務果たそうとせず、エジプトハーレム酒色耽るような人物。しかし決し無能なではなく、独自の価値観に従って生きているため、周囲理解得られ忌み嫌われ本人人間嫌いであるがヴァレリーには心を開く偽悪者である。

※この「アル・アフダル」の解説は、「ジハード (小説)」の解説の一部です。
「アル・アフダル」を含む「ジハード (小説)」の記事については、「ジハード (小説)」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「アル=アフダル」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「アル=アフダル」の関連用語

アル=アフダルのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



アル=アフダルのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのアル=アフダル (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのジハード (小説) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS