捩れ部分群
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/24 09:04 UTC 版)
アーベル群の理論において、アーベル群の捩れ部分群(ねじれぶぶんぐん、英: torsion subgroup)とは有限の位数をもつすべての元からなる部分群である。アーベル群が捩れ (torsion) 群あるいは周期 (periodic) 群であるとは、そのすべての元の位数が有限であることで、torsion-free であるとは、単位元を除くすべての元の位数が無限であることである[1]。
実際に有限位数の元が加法で閉じていることの証明は加法の可換性によっている(例の節を見よ)。
アーベル群 A の捩れ部分群 T(A) は A の fully characteristic subgroup であり、剰余群 F(A) = A/T(A) は torsion-free である。これらの対応は関手的である:アーベル群をその捩れ部分群に送り準同型をその捩れ部分群への制限に送る、アーベル群の圏から捩れ群の圏への共変関手 T が存在する[2]。アーベル群をその捩れ部分群による商に送り準同型を標準的な誘導写像(well-defined であることは容易に確かめられる)に送る、アーベル群の圏から torsion-free 群の圏への共変関手 F も存在する[3]。
アーベル群 A が有限生成であれば、その捩れ部分群 T と torsion-free 部分群の直和として書くことができる(しかしこれはすべての非有限生成アーベル群に対して正しくない)。A の捩れ部分群 S と torsion-free 部分群の直和としての任意の分解において、S は T と等しくなければならない(しかし torsion-free 部分群は一意的には定まらない)。これは有限生成アーベル群の分類において重要なステップである。
p-冪捩れ部分群
任意のアーベル群
- 非アーベル群の捩れ部分集合は一般には部分群ではない。例えば 無限二面体群 は 表示
- ⟨ x, y | x2 = y2 = 1 ⟩
- をもち、元 xy は2つの捩れ元の積であるが、位数は無限である。
- 明らかに、すべての有限アーベル群は捩れ群である。しかしすべての捩れ群が有限であるわけではない。巡回群 C2 の可算個のコピーの直和を考えよ。すべての元の位数は 2 なのでこれは捩れ群である。有限生成でなければ商群 Q/Z の例が示しているように捩れ群の元の位数に上界がある必要もない。
- A が有限生成でないときでさえも捩れなし部分 (torsion-free part) のサイズは、アーベル群のランクの記事においてより詳しく説明されているように、一意的に定まる。
- アーベル群 A が torsion-free であることと Z-加群として平坦であること、つまり C があるアーベル群 B の部分群であるときにはいつでもテンソル積 C ⊗ A から B ⊗ A への自然な写像が単射であることは同値である。
- アーベル群 A を Q (あるいは任意の divisible group)でテンソルすると捩れが消える。つまり、T が捩れ群であれば T ⊗ Q = 0 である。捩れ部分群 T をもった一般のアーベル群 A に対しては A ⊗ Q ≅ A/T ⊗ Q である。
関連項目
- 捩れ (代数)
- torsion-free アーベル群
脚注
- ^ Fuchs 1970, p. 4.
- ^ Fuchs 1970, p. 25.
- ^ Fuchs 1970, p. 26.
- ^ See Epstein & Cannon (1992) p. 167
参考文献
- Epstein, D. B. A., Cannon, James W. (1992). Word processing in groups. A K Peters. ISBN 0-86720-244-0
- Fuchs, L. (1970). Infinite Abelian Groups. Academic Press. ISBN 978-0-08-087348-0
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