いかけ屋と悪童
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/05/25 00:42 UTC 版)
いかけ屋が商売の準備のため、火を起こしているところに、近所の悪童たちが「いかけ屋のオッタァーン」と奇声をあげてやってくる。悪童たちはいかけ屋を取り囲み、「オッタン。そのプウプウ火ィ起こしてンのは、どういう目的や?」と問う。いかけ屋が「カネを湯ゥに沸かしてる(いかけに使う金属を溶融している)んや」と答えると、ある子は「オッタン、造幣局か?」などと言ってとぼける。悪童たちは他にも「あんさんは、細君(妻)がおわすか?」「お子さんは若子(わこ)さん(=男の子)でやっか? 姫御前(ひめごぜ=女の子)でやっか?」などと、次々と下らない質問をしてからかっては、いかけ屋の反応を楽しむ。 そこへさらに「悪ガキの大将」と称される少年が来て「こら、おやじ!」。いかけ屋は気にさわり、「そういうものの言い方するもんやないで。もっと『おっちゃん』とか『オッタン』とか、可愛らしゅう言わんかい」と叱るが、悪ガキの大将は「何ぬかしやがンねん。このヘタ」と平気なものである。「人間にヘタがあってたまるかい。何の用じゃアホンダラ」と、いかけ屋が聞けば、悪ガキの大将は「石ほじくる(または「塀に穴あける」)さかい、カナヅチ貸せ」という。「そんなもんに貸せるかい。貸したる代わりにな、家帰って、おのれとこの鍋釜の底に、ボーンボーンと、穴あけて来い!」「そんなことしたら、お父っつぁん、お母ん、怖いがな」「それくらいのこともできんで、一人前の悪さになれるか。おっちゃんがおまえらの頃は、カナヅチ持って、よう鍋釜の底に穴あけとったわい」「ははあ、そンで、大きゅうなって(成長して)直しに回ってんのンか」。いかけ屋は完全にやり込められる。 「貸せ。貸せ言うとんのじゃい。貸さんかったら火ィ消すぞ」「おっちゃんが苦労しておこした火、どないして消すねん」「へへへ。ションベン(小便)で消したろか」「ぬかしやがったなこのガキ。消せるもんやったら消してみい」「ああ。何でもないこっちゃ。おい、市松ちゃんに、虎ちゃんに、みな来い。みな来い」悪童たちは炉に向かって、一斉に小便を始める。 「あああ、ホンマに消しやがった!」 いかけ屋の嘆きをあとに悪童たちは次の標的、うなぎ屋をめざして駆けて行くのであった。
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