「猫の墓」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/09 15:20 UTC 版)
「早稲田へ移ってから、猫が段々痩せて来た。一向に子供と遊ぶ気色がない。」猫が死んだのは晩で、朝になって古い竃の上で倒れて、もう固くなっていた。妻はそれまでの冷淡に引き更えて、出入りの車夫に頼んで、四角な墓標を買ってきて、何か書いて遣ってくれという。自分は猫の墓と書いて、裏にこの下に稲妻起こる宵あらんと認めた。子供も花を飾り、茶碗を置いて水を備えた。猫の命日には妻が一切れの鮭と鰹節を掛けた飯を墓の前に供えたが、ただこの頃は庭まで持って出ずに大抵は茶の間の箪笥の上に置くようになった。
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