ULTRAMAN (映画) ULTRAMAN (映画)の概要

ULTRAMAN (映画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/10 03:32 UTC 版)

ULTRAMAN
監督 小中和哉
脚本 長谷川圭一
製作 鈴木清
出演者
音楽
主題歌 TMGNEVER GOOD-BYE
撮影 大岡新一
編集 松木朗
公開 2004年12月18日
上映時間 97分
製作国 日本
言語 日本語
前作 ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE
次作 ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟
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キャッチコピーは「銀色の流星…舞い降りる」、「高度3万フィート! 6.5G! 極限の一戦!!」。

概要

テレビシリーズ『ウルトラマン』第1話での出来事が、現代社会において現実に起こった場合を想定する形でリメイクされた作品[2]。また、本作品の公開時に放映されていたテレビシリーズ『ウルトラマンネクサス』と同じ世界観を持ち、テレビシリーズの前史にあたる[1]

特徴

それまでのイメージから大きく外れたデザインや、映像表現の難しい10メートル級の身長など、ウルトラマン自体の表現にも数多くの意欲的な試みがなされた。

スタッフには、小中和哉長谷川圭一など平成ウルトラシリーズメインスタッフから、菊地雄一板野一郎松本孝弘など、それまでウルトラシリーズには馴染みの薄かった人物までが幅広く参加している。CGが多く取り入れており、フルCGによるクライマックスの空中戦シーン(板野サーカス)が大きな見所となった[3]。この技術は、後年の作品にも大きく取り入れられている。また、防衛庁の全面協力を受けており、F-15の離陸シーンなどは全て実物である。

本作品や、後年の『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』などといった映画作品は、ウルトラシリーズ中でも空中戦をメインにしている部分が多い。アニメーションによる空中戦で高い評価を持つ板野一郎がフライングシーケンスディレクター(空中戦担当)を担当することで、CGを中心とした空中戦を最大限に引き出した。CGIには、板野が特技監督を担当したOVAマクロス ゼロ』のCGIチームが参加している[4]

本作品はテレビシリーズ『ウルトラマン』第1話「ウルトラ作戦第一号」のリメイクとなっているため、真木舜一の搭乗しているF-15が赤い発光体(ネクスト)に接触するのは、ハヤタの搭乗したビートルがウルトラマンに衝突するオマージュで、ザ・ワン(特にレプティリア)のデザインは、(青い怪光の演出も含め)同話に登場の怪獣ベムラーを意識したものになっている。

『ネクサス』最終話でのノアVSザギの最終決戦の舞台も映画同様新宿であるため、『ULTRA N PROJECT』の一連の決戦は新宿で始まり、新宿で終わるという形になった。[独自研究?]

未公開シーンが幾つか存在し、後に発売されたDVDの映像特典で視聴できる。

スタッフによるトークやコメンタリー[要文献特定詳細情報]では、『ウルトラマン』との区別のため、「横文字ウルトラマン」などと称されている。

製作経緯

鈴木清は、2002年以降にテレビシリーズを前提としない、映画のみで企画されたウルトラマンの劇場映画のオリジナル作品の企画を練っており、元々は人間心理を重視する方向性を持ってSF属性を突き詰めた真正のSF企画として『ウルトラマン』を組み立て直した、『YELLOW EYES(警告)』というシリアスかつダークな作風の「想像を超えた謎の力(光の力)を手にした青年が不条理な戦いの中で暴力的衝動から脱し、正義に目覚めていく」物語の予定だったが、9.11を見たスタッフらによってストレートに暴力性を描くことが極めて難しくなり、暴力性の表現を調整し、やや別方向に主題を振る必要が出てきたため、リアル・シミュレーションや生物的なニュアンスと初代ウルトラマンのリボーンというコンセプトを構築するためのミリタリー設定を引き継ぎつつ、現在のような「ウルトラマンとなって子供のために戦う父親」が主人公という家庭的なマイルドさを加味した家族向け映画として作られた[5][3]。そのため、リアルな怪獣災害という側面を持ちながら、父親が子供のために戦うストーリーなど、暗くならない配慮がなされている。また、随所に『ウルトラマン』や『ウルトラQ』など過去作品へのオマージュも込められている。『YELLOW EYES』は監督を小中和哉、脚本を長谷川圭一が担当する予定であった[5]初期タイトル『YELLOW EYES』はウルトラマンの目と、危険信号としての黄色のダブルミーニングである。[要出典]

ネオスタンダードヒーローを目指した『ULTRA N PROJECT』の企画は本作品を最初として立てられており(詳細は『ULTRA N PROJECT』の項目を参照)、『ULTRA N PROJECT』の一環として再構成され[3]、本来は『ネクサス』の放映前の2004年夏に公開される予定であった[1][2]

制作当初の題名は『ULTRAMAN THE NEXT』(ウルトラマン・ザ・ネクスト)であった[6]が、途中で題名が変更された。この名前は本作品のウルトラマンの名前や、漫画版のタイトルとして使われている。

制作の背景には『バットマン』や『スパイダーマン』が大人も楽しめるヒーロー映画として成功を収めたことがあり、その日本版を狙って制作された。

本編は2003年10月にクランクインした[6]

評価・影響

ウルトラシリーズの劇場版としては宣伝や上映館数が少なかったことも影響してか[注釈 1]、興行収入は1億5000万円[要出典]と振るわなかった。

続編『ULTRAMAN2 requiem』(ウルトラマン2 レクイエム)の制作も予定され、公開時には本編後に「2005年冬 公開」を知らせる特報も流されたが、その後は公式な告知も行われないまま立ち消えた[注釈 2]。当時の円谷プロダクション社長であった円谷英明は、総製作費2億円ですでに製作に着手していた映画を『ネクサス』の評価を踏まえて同作の放送短縮とともに中止にしたと、自著の中で述べている[8]。監督の小中和哉も2016年の上映イベントで『ULTRAMAN2』がクランクインしていたことを明かしている[9]。中止にあたっては円谷英明と当時の会長であった円谷一夫が製作現場に赴いて中止の説明を行ったが、その後に円谷一夫は撤退は本意ではなかったと周囲に漏らすようになり、後の社長交代の一因になったとされる[8]

ストーリー

太平洋沖に落下した未確認飛行物体を調査中の海上自衛隊深海探査艇が破壊される。探査艇操縦者の有働貴文は奇跡的に生還し、青い発光体に破壊された旨を証言するが、有堂の容貌は次第に凶暴な「ビースト・ザ・ワン」(以下「ザ・ワン」と表記)に変質して逃亡する。

3か月後、航空自衛隊イーグル・ドライバー真木舜一は、赤い発光体の調査のため緊急発進して激突後、やはり生還する。真木はかねての希望により除隊し、民間航空会社へ勤め始める。

有働の前例があったため、陸上自衛隊の対バイオテロ研究機関BCSTはひそかに真木の監視を続け、ある日真木を強制連行して軟禁する。真木をおとりにして「ザ・ワン」をおびき寄せて射殺する作戦であった。ザ・ワンは誘い出されるが、BCSTが準備した毒殺弾が効果なく、作戦は失敗する。ザ・ワンは周辺のトカゲを吸収し巨大化する。陸自施設の地下に監禁されていた真木はウルトラマン・ザ・ネクストに変身し「ザ・ワン」と対峙する。


注釈

  1. ^ 雑誌『宇宙船』では、一般的な幼児向け映画のような午前中のみの上映になるなど、製作意図が興行に反映されなかったことを問題点に挙げている[7]
  2. ^ 板野一郎は自身のトークショーの場で「中止になった」旨を明言した。[要出典]
  3. ^ 『円谷プロ全怪獣図鑑』では青色の超絶火炎光弾[25][13]、『ULTRAMAN ヒーロー ピクトリアル』では超絶火炎光弾[39]と表記。
  4. ^ カメオ出演。
  5. ^ ノンクレジット。
  6. ^ カメオ出演。
  7. ^ エンドクレジットでは、「ザ・ワン(第2・3形態)」と表記。
  8. ^ エンドクレジットでは、「ザ・ワン(第1形態)」と表記。

出典

  1. ^ a b c ネクサス&マックス 2006, p. 36.
  2. ^ a b ウルトラマン全史 2013, p. 75.
  3. ^ a b c HISTORICA 2022, p. 48, 「ULTRAMAN」
  4. ^ 宇宙船編集部 編 編「メビウス世界の匠たち CHAPTER2 CGI」『ウルトラマンメビウス アーカイブ・ドキュメント』円谷プロダクション 監修、朝日ソノラマファンタスティックコレクションNo.∞〉、2007年6月30日、82-83頁。ISBN 978-4-257-03745-3 
  5. ^ a b c UPM vol.17 2021, pp. 4–5, 「光と絆の物語」
  6. ^ a b DVDのメイキング映像
  7. ^ 「巻末とじこみ付録 宇宙船 DATA BOOK 2005」『宇宙船』Vol.118(2005年5月号)、朝日ソノラマ、2005年5月1日、144頁、雑誌コード:01843-05。 
  8. ^ a b 円谷英明 2013, p. 176.
  9. ^ 日本映画監督協会劇場EVENT REPORT」『宇宙船』vol.152(SPRING 2016.春)、ホビージャパン、2016年4月1日、114頁、ISBN 978-4-7986-1218-8 
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r UPM vol.17 2021, p. 8, 「真木舜一、主要登場人物」
  11. ^ ネクサス&マックス 2006, p. 6.
  12. ^ ネクサス&マックス 2006, p. 7.
  13. ^ a b c d e f ネクサス&マックス 2006, p. 9, 「BEAST」
  14. ^ a b c d e f UPM vol.17 2021, p. 9, 「ビースト・ザ・ワン」
  15. ^ a b HMC 2021, p. 86, 「連なっていく絆の物語 ULTRA N PROJECT」
  16. ^ a b c d e f UPM vol.17 2021, p. 6, 「ウルトラマン・ザ・ネクスト(アンファンス)」
  17. ^ a b STYLE 2005, p. 84, 「STAFF INTERVIEW キャラクターデザイン 丸山浩
  18. ^ a b c ピクトリアル 2005, p. 42-45.
  19. ^ STYLE 2005, pp. 62–65, 「STAFF INTERVIEW 特技監督 菊地雄一」.
  20. ^ a b c デザインワークス 2019, pp. 274–275, 「丸山浩デザイン解説 ULTRAMAN」
  21. ^ 丸山浩2016年1月25日ツイート
  22. ^ a b ネクサス&マックス 2006, p. 39.
  23. ^ STYLE 2005, pp. 26、86.
  24. ^ a b ネクサス&マックス 2006, pp. 4–5, 「ULTRAMAN THE NEXT」
  25. ^ a b c d e f g h i 円谷プロ全怪獣図鑑 2013, pp. 310–311, 「ULTRAMAN」
  26. ^ ネクサス&マックス 2006, p. 4.
  27. ^ STYLE 2005, pp. 28、87.
  28. ^ a b c UPM vol.17 2021, p. 7, 「ウルトラマン・ザ・ネクスト(ジュネッス)」
  29. ^ a b c 必殺技SG 2014, pp. 220–221, 「ウルトラヒーロー主要必殺技リスト」
  30. ^ 全ウルトラマン増補改訂 2018, p. 99.
  31. ^ a b ウルトラマン OFFICIAL DATA FILE 64 2010, p. 22, 「ボディスペック」
  32. ^ a b c d e f g h STYLE 2005, pp. 82–83, 「STAFF INTERVIEW キャラクターデザイン 酉澤安施
  33. ^ STYLE 2005, pp. 30、88.
  34. ^ ウルトラマン OFFICIAL DATA FILE 30 2010, p. 22, 「ボディスペック」
  35. ^ STYLE 2005, pp. 32、89.
  36. ^ ウルトラマン OFFICIAL DATA FILE 59 2010, p. 21, 「プロフィール」
  37. ^ STYLE 2005, pp. 34、90.
  38. ^ ウルトラマン OFFICIAL DATA FILE 45 2010, p. 20, 「ボディスペック」
  39. ^ ピクトリアル 2005, p. 38.
  40. ^ STYLE 2005, pp. 36、91.
  41. ^ 役名および表記はDVDの日本語字幕による。
  42. ^ a b c ピクトリアル 2005, p. 30.
  43. ^ ところどころ初代ウルトラマンのアレンジが流れるところがある。
  44. ^ 「監督インタビューアベユーイチ」『ウルトラマンX超全集』構成・間宮尚彦 執筆・大石真司、小学館てれびくんデラックス 愛蔵版〉、2016年3月16日、83頁。ISBN 978-4-09-105153-0 

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