華厳滝 自殺の名所

華厳滝

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/15 13:39 UTC 版)

自殺の名所

1903年明治36年)5月22日、高校生の藤村操がこの滝の付近にある樫の木を削り、「巌頭之感(がんとうのかん)」と題する遺書を残して、投身自殺した。この出来事や遺書は大きな話題となり、講師であった夏目漱石などにも影響を与えたが、その後数年のうちに藤村に追随する自殺が相次いだため、自殺の名所という評判が立ってしまった[1][12]

なお、自殺の遺体は滝つぼまで落下せず回収が困難となることがある。2019年(平成31年/令和元年)の例では、9月1日に滝から60m下の岩場で遺体が発見されたが、現場へ到達できず、10月4日に周囲を通行止にしたうえで大型クレーンを数台現地に運び込み遺体回収が行われた。過去には、遺体収容費用として遺族に約300万円が請求されたケースがある[13]

大尻川

中禅寺湖から華厳滝上流側までの流れは、厳密には大谷川とは別の川とされ、大尻川(おおじりがわ)と呼ばれている。中禅寺湖から華厳の滝までの距離はごく短いため、大尻川は日光でも特に短い川の一つである[14]

華厳渓谷

華厳滝の下流側には、大谷川に沿って華厳渓谷と呼ばれるV字谷が続いている[15]。男体山の噴出物でできた谷は崩れやすく危険であることから、現代においては無断での立ち入りが禁じられているが[15][2][10]、渓谷上流域や渓谷へと注ぐ支流の沢には阿含滝(あごんのたき)、涅槃滝(ねはんのたき)、白雲滝(しらくものたき)といった幾つかの滝がかかっている[16]。なお白雲滝は明智平の展望台から華厳の滝の隣にその姿を[17]、大谷川本流にかかる涅槃滝は華厳滝観瀑台の足元直下にその姿を見ることができる。

渓谷は、華厳滝と阿含滝が崩れやすい谷を浸食することによって形成されたといわれる[2]。かつて渓谷の上流域には遊歩道が設けられており、1950年代頃まではハイキングコースとして用いられ[2][10]、古くは渓谷の途中には茶屋や、岩壁を登って白雲滝の観瀑台へと至る道などもあったという[18]。現代においては、この旧遊歩道は渓谷内にある馬道発電所の管理用通路として用いられており、立ち入るには馬道発電所の許可が必要となっている[2]

渓谷の下流部は第一いろは坂となっており、この辺りからは大谷川支流にかかる方等滝(ほうとうのたき)、般若滝(はんにゃのたき)などの滝を見ることができる[19][20]。渓谷は第一いろは坂と第二いろは坂の分岐・合流点である「馬返」と呼ばれる場所まで続いており[2]、馬返という地名は奥日光地域が女人牛馬禁制であったことに由来している[1][21](詳細は「いろは坂」を参照)。

ギャラリー


  1. ^ a b c 日光観光協会 1998, p. 123, 華厳ノ滝
  2. ^ a b c d e f g 奥村 2000, p. 79
  3. ^ a b 奥村 2000, p. 8
  4. ^ 中禅寺ダム”. 栃木県. 2023年11月15日閲覧。
  5. ^ 「華厳の滝はなぜ1年中美しく見える?」「飛行機はなぜ左から乗り降りする?」プロが自慢したいうんちくを完全プレイバック!”. テレ東プラス. テレビ東京. 2023年11月15日閲覧。
  6. ^ “日光・華厳の滝 水量55倍に 台風24号影響”. 毎日新聞. (2018年10月2日). https://mainichi.jp/articles/20181003/k00/00m/040/074000c 2023年11月15日閲覧。 
  7. ^ 奥村 2000, p. 88
  8. ^ 栃木と周辺の渓谷散歩と湧水めぐり, p. 47
  9. ^ 華厳の滝の岩盤が落下、四人が圧死『下野新聞』昭和10年7月7日(『昭和ニュース事典第5巻 昭和10年-昭和11年』本編p505 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年)
  10. ^ a b c 栃木と周辺の渓谷散歩と湧水めぐり, p. 46
  11. ^ a b 砂防事業 一級河川 大谷川(平成20年3月完成)”. 栃木県. 2023年11月15日閲覧。
  12. ^ 奥村 2000, p. 90
  13. ^ 華厳の滝「自殺」遺体、収容費用は遺族に請求へ…重機9台・75人作業”. 読売新聞 (2019年10月5日). 2019年10月5日閲覧。
  14. ^ 奥村 2000, p. 92
  15. ^ a b 奥村 2000, p. 77
  16. ^ 奥村 2000, pp. 79, 84–88
  17. ^ 日光観光協会 1998, p. 122, 白雲ノ滝
  18. ^ 奥村 2000, pp. 86–87
  19. ^ 日光観光協会 1998, p. 123, いろは坂
  20. ^ 奥村 2000, pp. 79, 81–83
  21. ^ 奥村 2000, p. 81


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