芳香族ポリエーテルケトン 芳香族ポリエーテルケトンの概要

芳香族ポリエーテルケトン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/27 10:26 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動

特徴

熱特性

  • 熱可塑性樹脂としては非常に高い耐熱性を有する。(ガラス転移温度は約143℃。非強化状態でPEKの荷重たわみ温度は約186℃、PEEKは約140℃。ガラス繊維などフィラーによる強化グレードでは300℃を超える。融点は約343℃。)
  • 熱伝導率は、室温から固相温度までの間で、温度に対してほぼ直線的に増加する。
  • 難燃性に優れる。(改質しない状態でUL94V-0を満たす。)

力学的特性

  • 機械的特性、耐疲労性に優れる。耐磨耗性や寸法安定性も良好。(ヤング率は3.6GPa、引張強度は90~100MPa)
  • 加工性に優れ、通常の射出成型機での加工やフィルム化・不織布化も可能。
  • 成形時の加工条件によって結晶化度が変化し、機械的特性に影響する。

その他

  • 耐薬品性に優れる。
  • 電気絶縁性や耐放射線性に優れる。
  • 非常に高価。

種類

ポリエーテルケトン
ポリエーテルエーテルケトン

エーテル結合とケトン結合を交互に配置した基本的な直鎖状構造を持つポリエーテルケトン (polyetherketone, PEK) と、エーテル・エーテル・ケトンの順に結合を配置したポリエーテルエーテルケトン (polyetheretherketone, PEEK) が工業的に製造され、特に後者は用途を拡大している。これらの他に、結合の配置を変更したポリエーテルケトンケトン (polyetherketoneketone, PEKK) やポリエーテルエーテルケトンケトン (polyetheretherketoneketone, PEEKK) も芳香族ポリエーテルケトンの一種である。

また、現在は研究段階にあるエステル結合を加えたポリエーテルケトンエステル[1]もこの群に加わる。

製法

5種類の製法に大別される。ただし工業化されているものは求核置換反応法と求電子置換反応法の2種類のみであり、残る3種類は特許開示がなされている。

求核置換反応法

PEKは、フッ素水酸基を置換体として各端に結合させたベンゾフェノン求核置換反応で結合させて製造する。

n HO−C6H4−C(=O)−C6H4−F → [−O−C6H4−C(=O)−C6H4−]n + n HF

PEEKは、ヒドロキノンと、フッ素を置換体として両端に結合させたベンゾフェノンを求核置換反応で結合させて製造する。触媒には炭酸カリウムなどを使用する。

n HO−C6H4−OH + n F−C6H4−C(=O)−C6H4−F → [−O−C6H4−O−C6H4−C(=O)−C6H4−]n + 2n HF

フッ素は置換体としては高価なため、塩素などの利用も研究されている。

求電子置換反応法

PEKは、片方にケトン基を介して求電子剤として塩素を結合させた、すなわちアシル基 −C(=O)Cl としたベンゾフェノンをフリーデル・クラフツ反応求電子置換反応の一種)で結合させる。触媒には塩化アルミニウムなどを使用する。

n C6H5−O−C6H4−C(=O)−Cl → [−O−C6H4−C(=O)−C6H4−]n + n HCl

PEKKは、ベンゾフェノンと、両端に求電子剤として塩素を結合させたケトン基を持つベンゼン環を、塩化アルミニウムなどを触媒として、フリーデル・クラフツ反応で結合させて製造する。

n Cl−C(=O)−C6H4−C(=O)−Cl + n C6H5−C(=O)−C6H5 → [−O−C6H4−C(=O)−C6H4−C(=O)−C6H4−]n + 2n HCl

この製法では分岐構造や異種結合が起こりやすく、反応のコントロールが難しい。

ルイス酸/強酸触媒下、求核性芳香族化合物とチオカルボン酸誘導体との反応

PEEKの製造法。工業化はされていない。

n C6H5−O−C6H4−O−C6H5 + n C2H5−S−C(=O)−Cl → [−O−C6H4−O−C6H4−C(=O)−C6H4−]n + n C2H5SH + n HCl

タイコインターナショナルが特許を所有している。出願はレイケム (Raychem Co.) だが、1999年の同社買収によって所有権が移転した。

フルオロアルカンスルホン酸、あるいは五酸化二リン/メタンスルホン酸存在下での反応

PEEKおよびPEKKの製造法。工業化はされていない。

n C6H5−O−C6H4−O−C6H4−C(=O)−OH → [−C6H4−O−C6H4−O−C6H4−C(=O)−]n + n HCl
n C6H5−O−C6H5 + HO−C(=O)−C6H4−C(=O)−OH → [−C6H4−O−C6H4−C(=O)−C6H4−C(=O)−]n + 2n H2O

インペリアル・ケミカル・インダストリーズ(ICI)が特許を所有。

ニッケル触媒を利用した炭素-炭素カップリング反応

工業化はされていない。ユニオンカーバイド社が特許を所有。

改質

フィラー強化
ガラス繊維や炭素繊維などを充填し、機械的強度とともに耐熱性を高める。高耐熱用途ではガラス繊維30%強化グレードが多用されている。
PEEK-HT
ICI子会社のVictrex plcが開発した耐熱性向上グレード。通常のPEEK比融点が約34℃、ガラス転移点が約14℃それぞれ上昇する。高温環境下での機械的特性保持力に優れ、また耐磨耗性はPEEKの3倍程度にまで向上している。
耐衝撃性改良
Victrex plcが開発したグレード。氷点下から100℃を越える使用環境にて通常のPEEK比2倍以上の耐衝撃性を有する。ポリマーアロイと推測されるが、詳細は明らかにされていない。

  1. ^ 「芳香族ポリエーテルケトンエステルの機能材料化」”. 東京農工大学大学院 前山研究室 研究紹介. 2008年5月14日閲覧。


「芳香族ポリエーテルケトン」の続きの解説一覧




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「芳香族ポリエーテルケトン」の関連用語

芳香族ポリエーテルケトンのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



芳香族ポリエーテルケトンのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの芳香族ポリエーテルケトン (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS