腕時計
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/16 22:24 UTC 版)
性差・着用方法
腕時計は利き腕と反対側の腕に着用することが多い。また日本女性の場合、盤面を腕の内側に向けて着用する例も比較的多いが(世界的に見ると極小数)、男性においてはまれである。女性用腕時計は男性用腕時計に比べて小型に設計されているが、中には必要以上に小型化されている例もある。男性用サイズと女性用サイズの中間的なサイズの腕時計はボーイズサイズと呼ばれる。
なお腕時計成立の経緯から腕時計登場当初は懐中時計に比べて略式とみなされ、礼装時に着用しない習慣があったが、現在ではそのような習慣は消滅した。
ブレスレットとベルト
女性のアクセサリーとして、ブレスレットに時計のケースを取り付けたものがあった。また実用的な道具として腕時計は強度と装着感が要求され、革ベルトにワイヤーを通してワイヤーの両端をケース本体に溶接するスタイルが生まれた。しかしベルトの損傷時などに取り外しが不便であることから、ばね棒をベルトの接合部に通しておき、このばね棒をラグにはめ込むスタイルが確立し、現代まで続くことになる。これと併行してコマをつないで装着感と強度を両立させたブレスレットも登場・発展していた。NATOストラップのように引き通し式のベルトをばね棒に直接通すベルトも普及している。
ブレスレット
ブレスレットの素材は安価でメンテナンスが容易なステンレスが現在の主流である。その他に金や真鍮に鍍金したもの、チタニウムやセラミックなどが使用されている。まれに貝や骨、アクリル樹脂などのブレスレットも存在する。ブレスレットの形状には次のようなタイプと、特徴がある。ブレスレットはピンを調整することで腕周りを調整することができる。
- ソリッドブロック
- 1個の金属塊から削りだされるブロックタイプのコマを、お互いにピンやネジで留める。比較的高価であるが、耐久性は高い。
- ロールブロック
- 1つの金属板に、もう1つの金属板を巻き付けて、ブロック状に仕上げる。ソリッドブロックに比べると安価。加工が巧みで、一見してソリッドブロックのように見えるものもある。
- メッシュ
- キメの細かい帯状のパーツを絡み合わせて作られる。加工が難しく廃れていたが、装着感に優れクラシカルなことから近年人気が復活してきている。
- アジロ
- 「コ」状のコマを噛み合わせるように重ねて連結する。手の込んだ作りであるが、近年はあまり見られなくなった。
- S字
- S字型のプレートを板ばねを介して連結し、伸縮する構造となっている。サイズ調整の面倒が少なくて済む。最近ではスウォッチが採用している。
現在の主流は、ケースと同素材のソリッドブロックか、ロールブロックである。横へ単連から10数連まで、ブロック=コマをピンやネジで繋ぎ留める。コマ数が多いほど、可動部分が多いために柔らかで装着感も良く、豪華な外観になるが、コストや手入れのし易さ、強度などの理由で、3連から7連が主流である。人間工学を駆使した独自の形状により、装着感を向上させるなどの工夫を施すメーカーもある。
ベルト
「バンド」「帯」ともいう。高級時計の場合、ベルトは伝統的に爬虫類、ほ乳類の動物の天然皮革が用いられる。耐水性や見た目の豪華さで爬虫類の皮革が高級とされるが、装着感や安価という点では、ほ乳類の皮革が勝る。高級感を持たせるために鰐皮のような紋様を型押ししたり、カーフやラバーなどの裏打ちをすることが多い。いずれにしても表面は見た目の良い素材や部位を使用し、裏面は柔らかな素材や部位を用いて縫い合わせるのが一般的である。
装着感を良くするためなめし方に工夫するメーカーもある。また、縫い合わせの糸のカラーがデザインのエッセンスとなる場合もある。近年では人造皮革が採用される例が多い。正装では金属より皮革ベルトの方が向いている。
欧米と比較すると、日本では革ベルトよりもメタルブレスレットが好まれる傾向にある。これは、日本では夏場の蒸し暑い気候により、多く汗をかくため、革ベルトが痛みやすいことが、大きな理由だと考えられる。
ダイバーズなどのスポーツモデルでは耐久性を重視して単一成型のラバーやポリウレタンが用いられることが多いが、経年変化で劣化しやすい。近年では、高級時計でもダイバーズウォッチではラバーやシリコーン製のベルトを採用するメーカーが多い。
天然素材
- 爬虫類
- 哺乳類
- 鳥類
- 魚類
- 植物系
その他の素材
バックル
用語としては「尾錠」「クラスプ」とも呼ぶ、ベルトやブレスの留め金。一般的には、次のタイプが多い。
- 穴留め式
- 革ベルトやゴムベルトで多用され、ピンをベルトに空いた小穴に通して固定する。ピンが幅広な場合には「タン」(舌)と呼ぶこともある。
- 三つ折れ式
- 上板、中板、下板の3枚のプレートを蝶番で繋ぐ。下板に中板を被せ、その上にさらに上板を包み込むように被せて、金具で固定する。
- 観音開き式(両開き式)
- 1枚のプレートの両端に、ジョイントのプレートを繋ぎ、さらにそこへ上板をつないだバックル。2枚の上板を、下部の1枚プレートの両側からセンターへ被せるようにして留める。
- スライド式
- 留め具の片方のストッパー板を起こすとスライド可能となって長さ調節ができる簡易バックル。長さ調節の際にコマを外す必要がなく専用工具も必要ない。クォーツ時計と共に普及した。
- 中折れ式(二つ折れ式)
- 蝶番でつないだ2枚のプレートを開閉して、相手側の尾錠を咥えて装着する。
その他
- NATOストラップ(NATOベルト,G10ストラップ,G10ベルト)
- 引き通し式のベルトをばね棒に直接通すベルト。ベルトが垂れない様に金具が付属しているのが特徴。服の上から装着できるようにベルトが長く作られており、余った場合は二重に折り返すことでサイズの調整が可能。このタイプのベルトをNATOが使用しており、その原型は第二次世界大戦中のイギリス軍用時計ベルトである。1973年にNATOの装備品規格「G1098」として採用され、2013年に一部規格改定が行われた。2013年以降の制式品はナイロン素材のみ(それ以前は皮革もあり)だが、市場に流通しているコピー製品の素材はナイロン、綿、皮革など様々で長さも短く作られている事例が多い。
- レザーブレスウォッチ
- 皮革のブレスレットに革のベルトを合わせた、装飾を兼ねたベルト。
なお、金具にリリース用のボタンを設けたり、さらに小型の押さえ板を設けて、不意の脱落が起こりにくいようにするものもある。またバックル内に収納された板を引き出してブレスの長さを伸ばすことが可能な、エクステンション方式もある。バックルだけを保管しておき別のブレスレットやベルトに用いる方法がある。サイズが商品により異なるのでバックルのサイズを覚えておく必要がある。
脚注・出典
- ^ たとえば、「シチズン」ブランドのクロック事業を担っているのは「リズム」だ、といったように。
- ^ a b c 中央公論社『時計の社会史』
- ^ a b Marco Richon『OMEGA SAGA』Chap.7
- ^ WATCH WIKI "SANTOS" [1]
- ^ 沿革|セイコーホールディングス株式会社
- ^ a b c d e 『時計史年表』p.180。
- ^ a b WATCH WIKI "MEGA1" [2]
- ^ a b “世界初、人工衛星から時刻情報を受信する光発電時計「エコ・ドライブ サテライト ウエーブ」”. シチズンホールディングス (2011年6月15日). 2013年6月23日閲覧。
- ^ “世界初の「GPS+電波受信」、ハイブリッドG-SHOCK発表――カシオ”. ITmedia (2014年6月25日). 2020年4月17日閲覧。
- ^ “カシオ、世界初の3つの時刻取得システムを搭載した「G-SHOCK」”. PC Watch (2017年3月1日). 2020年4月17日閲覧。
- ^ 『軍用時計物語』
- ^ “第一次世界大戦による腕時計の軍隊での普及”. セイコーミュージアム. 2019年12月10日閲覧。
- ^ 長尾善夫・木村好孝『戦後の国産腕時計』(1994年 トンボ出版)p28での長尾の記述による。
- ^ a b c 『世界の特選品 時計大図鑑』p.133。
- ^ “From the roots until today's achievements..”. Federtywfdywoiration of the Swiss Watch Industry. 2007年12月6日閲覧。
- ^ a b c 『世界の特選品 時計大図鑑』p.134。
- ^ セイコー クオーツアストロン 35SQ(エプソン マイルストンプロダクツ)
- ^ 一方でマニュファクチュールと呼ばれる、一部の特殊なパーツを除きムーブメントの開発・製造から組み立て、仕上げまでを一貫して行えるメーカーも存在し続けている。
- ^ 成功体験から、産業全体が抜け出せない(10ページ目) | 日経クロステック(xTECH)
- ^ “世界初。全世界39のタイムゾーンに対応。ソーラーGPSウオッチ<セイコー アストロン>衛星シグナルをキャッチし、地球上どこでも現在時刻をすばやく取得”. セイコーウオッチ (2012年3月5日). 2013年6月23日閲覧。
- ^ ソニー×カシオ! 世界初「GPSハイブリッド電波時計」のキーデバイスに迫る!|マイナビニュース(2014年3月26日付 マイナビ)
- ^ ハイブリッドの“G-SHOCK”を発売 - 2014年 - ニュースリリース(2014年6月25日付 カシオ計算機)
- ^ ASCII.jp:カシオ計算機、世界初フルメタルGPS電波やBluetooth腕時計(2014年9月3日付 ASCII.jp編集部)
- ^ “老舗シチズン「アップルと戦わない」時計戦略(世界初のBluetooth腕時計はシチズン製)”. 東洋経済ONLINE (2018年11月11日). 2020年4月17日閲覧。
- ^ 腕時計を着けていても、半数が「携帯電話で時間を確認」 - japan.internet.com デイリーリサーチ
- ^ “Apple Watchが世界を変えた?試験会場への腕時計持ち込み禁止が世界で広まる”. INTERNET Watch (2015年3月23日). 2017年8月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年8月18日閲覧。
- ^ 『ビスカススイープシステムの開発』NAID 110002775858
- ^ SEIKO TECHNOLOGY
- ^ SEIKOのニュース - セイコーウオッチ株式会社
- ^ マリーンマスタープロフェッショナル スプリングドライブ搭載モデル(プロスペックス「海」) プロスペックスについて - セイコーウオッチ株式会社
- ^ SEIKOのニュース - セイコーウオッチ株式会社
- ^ コスパ最高のシンプルウォッチ「チープカシオ(チプカシ)」おすすめ4選&売れ筋ランキング【2022年1月】 - Fav-Log by ITmedia
- ^ チープカシオが世界中で大ブレイク!オススメランキングBEST5|腕時計本舗|公式
- ^ チープカシオが大ブーム中! 1万円前後で買える大人の腕時計「G-SHOCK」のベストモデル | GetNavi web ゲットナビ
- ^ https://news.mynavi.jp/article/20130517-a090/
- ^ http://www.swatchgroup.com/en/services/archiv/2013/swatch_sistem51
- ^ 時計の防水に関する本体記載の表現はかつて統一されていなかった。シチズンの場合、先行して導入した耐震機構を「パラショック」と名付けたため、その後に開発された1960年代の防水時計で「パラウォーター」"Para Water" を呼称していた時期がある。
- ^ ロレックスがいち早く1930年代初頭に高効率の全回転式自動巻き機構を実用化した動機には、竜頭の摩耗を回避して防水性能を長期維持する意図があった。このため防水型の自動巻きロレックスは、「バブルバック」と通称される厚手な構造になっていた。
- ^ オメガの「シーマスター」シリーズは1948年から市販されているが、当初は単純に「防水モデル」を意味するネームであり、1960年代以前は「日常生活防水」レベルの初歩的な防水モデルも含まれていた。従って、すべてのシーマスターが多重ケース構造を用いているわけではない。
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