腕時計
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/16 22:24 UTC 版)
宝飾腕時計
美術工芸品としての腕時計もある。材料に金や銀などの貴金属をふんだんに用い、ルビーやダイヤモンドといった宝石を散りばめた華美な装飾品としての腕時計である。極端なものでは、風防に数カラットの大粒ダイヤモンドを用いるなど、数億円の腕時計まで存在する。メーカーで製造されるものもあるが既存の時計を加工して作る場合もあり、アフターダイヤなどと呼ばれて区別されることもある。
こうした時計は、クオーツ式ではなく機械式であることが多い。
視覚障害者用時計
視覚障害者が時間を確認できるように、指で直接針や文字盤を触れるようにした腕時計。文字盤には突起が設けられており、時間を確認する時には、文字盤を覆っているカバー部分を開いて指で触れるようになっている。無論通常の腕時計としても使用可能である。手法自体は先行して出現していた視覚障害者用の懐中時計からの踏襲である。
またこのような腕時計とは別に、音声で時刻を知らせるデジタル式の視覚障害者用時計も存在する。
防水機能は施されていないことが多い。
なお日本において視覚障害者用の腕時計および懐中時計は、針や文字盤への触覚で時間を知る形式のものについて、消費税法施行令で「身体障害者用の物品」として消費税の課税対象外となっている。また消費税導入以前、多くの腕時計・懐中時計に課税されていた物品税も、視覚障害者用時計は課税対象外であった。いずれも福祉的用途を配慮した措置である。
複雑腕時計
時刻表示に加えてさまざまな機能を有する機械式・針式腕時計のことを「複雑腕時計」あるいは単に「複雑時計」と呼ぶ。機械式腕時計のトゥールビヨン、ミニッツリピーター、永久カレンダーは評価が高く、非常に高価である。一方で永久でないカレンダー機能、サン&ムーン表示および電子音の時刻音(リピーター、ソヌリ、アラーム)機能はこれに含めないことが多い。単純なカレンダーや電子アラームを除いては、実用よりも趣味性が強いものである。また、複雑腕時計は機能が複雑になるほど文字盤(ケース)の厚さが増す傾向がある。
- クロノグラフ
- 時刻を表示する機能に加えストップウオッチの機能も組み込んだ時計のことをいう。詳細は「クロノグラフ」を参照
- ムーンフェイズ
- 月の満ち欠けを表す機構。太陰暦の名残りであるが、間接的に海の満ち引きを表し、漁業、海運、貿易および天体観測、占術などの分野で月齢は重要な指標とされる。
- オーソドックスなデザインは文字盤に空けられた半円の窓内で円盤に描かれた月が見え隠れすることで満ち欠けが表現される。円盤には2つの月が描かれ59日で1回転する。このアイデアは18世紀の天才時計師アブラアム=ルイ・ブレゲの発明である。月の満ち欠けの1周期は平均29.530589日であるため965日で約1日の誤差が生じるが、特に精巧なものではより誤差を少なくしたものがある。このデザイン以外には、デイトカレンダーに似たシャッター表示式、複数の月が描かれた盤面上を月齢針または月盤で示すポインター表示式、金と黒に塗り分けられたボールが回転するものなどがまれに存在する。
- 24時間計のバリエーションとして、ムーンフェイズと同じような外観で円盤には太陽と三日月が描かれたものがあるが、これは24時間で1回転し昼夜の区別をする「サン&ムーン」機能と呼ばれている。「月相#時計の「ムーンフェイズ」」も参照
- プラネタリウム
- ムーンフェイズ以外で、天体の運行を追尾する腕時計をプラネタリウムあるいは天文腕時計と呼ぶ。占星術の道具であるアストロラーベを自動表示をするもの、惑星の位置を表示するもの、月食や日食を予告するもの、月の位置を表示するもの、星座を自動で表示するものなどが存在する。機械式で有名なメーカーはユリスナルダン、クォーツ式を手がけるメーカーとして、シチズンやアストロデアが挙げられる。
- トゥールビヨン
- アブラアム=ルイ・ブレゲが発明した技術で、脱進機に掛かる重力による誤差を補正するため、脱進機を回転させて重力の影響を分散する機構である。本来時計本体に固定されている部品を回転させるために非常に複雑な機構と高度な技術が要求され、脱進機の回転軸が2軸のものも開発されている。最近では中国製のムーブメントが量産化されていて価格が低下している。詳細は「トゥールビヨン (時計)」を参照
- リピーター
- 時計の側面のレバーを引くと、鐘の音色や回数で現在時刻を知らせてくれる機構。機械式腕時計でこれを実現するためには非常に高度な技術が必要とされる。分単位まで時刻を教えてくれるミニッツリピーターの他、5分単位までを教えてくれるファイブミニッツリピーター、15分単位までを教えてくれるクォーターリピーターも存在する。詳細は「リピーター (時計)」を参照
- ソヌリ
- 毎時ゼロ分になるとその時刻の数だけ鐘を鳴らして時報する機構。さらに15分単位で時報するものをグラン・ソヌリと呼ぶ。時報と同時に文字盤などに配されたカラクリ人形などのギミックが作動するオートマタと組み合わされることもある。
- カレンダー
- 日(デイト)および日と曜日を示すもの(デイデイト)が一般的で、日・曜日・月を示すものはトリプルカレンダーと呼ばれる。数字による表示方法と盤面上を針(ポインター)で表示する方法がある。大型の日付針(デイトポインター)が時分針と共にセンターに配置されたものは識別のため針先が三日月型をしている。
- 月、日、曜日、暦年が表示でき、4年に1度の閏年でも、2月末日から3月1日にかけての手動による日付補正の必要がないカレンダー機構を永久カレンダー(パーペチュアル)と呼ぶ。なお、閏年の2月末のみに日付補正が必要なセミ永久カレンダー、毎年の2月末のみに日付補正が必要な年次カレンダーも存在する。
デジタル化による付加機能
機械式時計と比較して、デジタル時計には時間計測(ストップウォッチ)、カレンダ、アラームといった機能の他電卓やゲームといった計時とは関係のない機能の付加がはるかに容易であり、初期の頃からそういった付加機能付きの製品があった。さらに、各種センサー類を取り付けることによって、従来の時計とは異なる機能(気温、気圧測定、電子コンパスなど)といった、いわゆる「デジタルガジェット」的機能が付け加えられた。 デジタル時計は機能が複雑になるほど文字盤(ケース)の厚さが増す傾向がある。
- ^ たとえば、「シチズン」ブランドのクロック事業を担っているのは「リズム」だ、といったように。
- ^ a b c 中央公論社『時計の社会史』
- ^ a b Marco Richon『OMEGA SAGA』Chap.7
- ^ WATCH WIKI "SANTOS" [1]
- ^ 沿革|セイコーホールディングス株式会社
- ^ a b c d e 『時計史年表』p.180。
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- ^ a b “世界初、人工衛星から時刻情報を受信する光発電時計「エコ・ドライブ サテライト ウエーブ」”. シチズンホールディングス (2011年6月15日). 2013年6月23日閲覧。
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- ^ “カシオ、世界初の3つの時刻取得システムを搭載した「G-SHOCK」”. PC Watch (2017年3月1日). 2020年4月17日閲覧。
- ^ 『軍用時計物語』
- ^ “第一次世界大戦による腕時計の軍隊での普及”. セイコーミュージアム. 2019年12月10日閲覧。
- ^ 長尾善夫・木村好孝『戦後の国産腕時計』(1994年 トンボ出版)p28での長尾の記述による。
- ^ a b c 『世界の特選品 時計大図鑑』p.133。
- ^ “From the roots until today's achievements..”. Federtywfdywoiration of the Swiss Watch Industry. 2007年12月6日閲覧。
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- ^ セイコー クオーツアストロン 35SQ(エプソン マイルストンプロダクツ)
- ^ 一方でマニュファクチュールと呼ばれる、一部の特殊なパーツを除きムーブメントの開発・製造から組み立て、仕上げまでを一貫して行えるメーカーも存在し続けている。
- ^ 成功体験から、産業全体が抜け出せない(10ページ目) | 日経クロステック(xTECH)
- ^ “世界初。全世界39のタイムゾーンに対応。ソーラーGPSウオッチ<セイコー アストロン>衛星シグナルをキャッチし、地球上どこでも現在時刻をすばやく取得”. セイコーウオッチ (2012年3月5日). 2013年6月23日閲覧。
- ^ ソニー×カシオ! 世界初「GPSハイブリッド電波時計」のキーデバイスに迫る!|マイナビニュース(2014年3月26日付 マイナビ)
- ^ ハイブリッドの“G-SHOCK”を発売 - 2014年 - ニュースリリース(2014年6月25日付 カシオ計算機)
- ^ ASCII.jp:カシオ計算機、世界初フルメタルGPS電波やBluetooth腕時計(2014年9月3日付 ASCII.jp編集部)
- ^ “老舗シチズン「アップルと戦わない」時計戦略(世界初のBluetooth腕時計はシチズン製)”. 東洋経済ONLINE (2018年11月11日). 2020年4月17日閲覧。
- ^ 腕時計を着けていても、半数が「携帯電話で時間を確認」 - japan.internet.com デイリーリサーチ
- ^ “Apple Watchが世界を変えた?試験会場への腕時計持ち込み禁止が世界で広まる”. INTERNET Watch (2015年3月23日). 2017年8月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年8月18日閲覧。
- ^ 『ビスカススイープシステムの開発』NAID 110002775858
- ^ SEIKO TECHNOLOGY
- ^ SEIKOのニュース - セイコーウオッチ株式会社
- ^ マリーンマスタープロフェッショナル スプリングドライブ搭載モデル(プロスペックス「海」) プロスペックスについて - セイコーウオッチ株式会社
- ^ SEIKOのニュース - セイコーウオッチ株式会社
- ^ コスパ最高のシンプルウォッチ「チープカシオ(チプカシ)」おすすめ4選&売れ筋ランキング【2022年1月】 - Fav-Log by ITmedia
- ^ チープカシオが世界中で大ブレイク!オススメランキングBEST5|腕時計本舗|公式
- ^ チープカシオが大ブーム中! 1万円前後で買える大人の腕時計「G-SHOCK」のベストモデル | GetNavi web ゲットナビ
- ^ https://news.mynavi.jp/article/20130517-a090/
- ^ http://www.swatchgroup.com/en/services/archiv/2013/swatch_sistem51
- ^ 時計の防水に関する本体記載の表現はかつて統一されていなかった。シチズンの場合、先行して導入した耐震機構を「パラショック」と名付けたため、その後に開発された1960年代の防水時計で「パラウォーター」"Para Water" を呼称していた時期がある。
- ^ ロレックスがいち早く1930年代初頭に高効率の全回転式自動巻き機構を実用化した動機には、竜頭の摩耗を回避して防水性能を長期維持する意図があった。このため防水型の自動巻きロレックスは、「バブルバック」と通称される厚手な構造になっていた。
- ^ オメガの「シーマスター」シリーズは1948年から市販されているが、当初は単純に「防水モデル」を意味するネームであり、1960年代以前は「日常生活防水」レベルの初歩的な防水モデルも含まれていた。従って、すべてのシーマスターが多重ケース構造を用いているわけではない。
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