満洲 満洲の範囲

満洲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/01 08:46 UTC 版)

満洲の範囲

山海関

おおむね北辺はスタノヴォイ山脈、南辺は万里の長城、西辺は大興安嶺、東辺は鴨緑江図們江(豆満江)の内側を想定している。しかしながら、歴史的変化に伴いその範囲は伸縮していた[8]

日本で満洲と呼ばれる地域は、満洲国の建国時の地域全体を意識することが多く、おおよそ、中華人民共和国の「東北部」と呼ばれる、現在の遼寧省吉林省黒竜江省の3省と、内モンゴル自治区の東部を範囲とする[9]。この地域は、北と東はアムール川(黒竜江)・ウスリー川を隔ててロシア東シベリア地方に接し、南は鴨緑江を隔てて朝鮮半島と接し、西は大興安嶺山脈を隔ててモンゴル高原内モンゴル自治区)と接している[9]。南西では万里の長城の東端にあたる山海関が、華北との間を隔てている。広義には、モンゴル民族の居住地域であるが満洲国に属していた内モンゴル自治区の東部を含む[注釈 2]

また、スタノヴォイ山脈(外興安嶺)以南、黒竜江以北、ウスリー川以東のロシア領の地域を外満洲と呼び、場合によってはこの地域をも含むことがある。外満洲は満洲と同様に、ネルチンスク条約1689年)で清朝領とされたが、その後、1858年にロシアとの間にアイグン条約を結んで、清領とされてきた外満洲のうちアムール川左岸をロシアに割譲し、ウスリー川以東を両国の共同管理とすることとなった[10]。さらに2年後の1860年には北京条約によって、この共同管理地も正式にロシア領となった[11][注釈 3]。外満洲を含めた面積は、約1,550,000 km2に及ぶ。


注釈

  1. ^ 「満洲」は語源が地名ではなく、本来は民族名であり、国名でもあるところから地名に転用された語なので、「満州」と表記するのは間違いではないにせよ、正式には「満洲」としなければならない[3]
  2. ^ 現在の行政区分では、「東四盟」と呼ばれる赤峰市(旧ジョーオダ)・通遼市(旧ジェリム盟)・フルンボイル市(旧フルンボイル盟)・ヒンガン盟に相当する。
  3. ^ 北京条約はアロー戦争終結のためのイギリスフランスとの講和条約であった一方、ロシアが清と英仏との講和を斡旋したことから、ロシアの要求を受け入れて同国と結んだ条約である[11]
  4. ^ 1950年代以降の中国共産党政府による民族識別工作では、蒙古八旗や漢軍八旗の末裔たちを「蒙古族」や「漢族」に区分するのではなく、「旗人」全体をまとめて「満族」と区分した。
  5. ^ 実際に、近年の中国史の概説書の多くは「満洲」表記を用いている[31][32][33][34][35]
  6. ^ 雍正帝時代の1727年には西方でキャフタ条約を結んだ[41]。ネルチンスク条約・キャフタ条約が正式に破棄されたのは、1860年の北京条約においてであった[41]
  7. ^ 清朝崩壊後、満洲へは社会不安から流民となった漢民族の移入が急増したともいわれるが、清朝崩壊前と後では人口増加率に大きな違いはない。
  8. ^ ただし、人口増加率で見ると満洲建国前と大差はないといわれている。
  9. ^ その被害は8億ドルとも20億ドルともいわれる[56]
  10. ^ この経済圏は中国東北部、華北華東にまたがり、瀋陽市青島市大連市煙台市など黄海沿岸の渤海沿岸地域に隣接する都市も経済圏内に含まれる[63]

出典

  1. ^ 杉山(2008)p.238
  2. ^ 読むページ | 生活の中の仏教用語 | 満洲”. www.otani.ac.jp. 大谷大学. 2021年1月14日閲覧。
  3. ^ a b 小林(2008)pp.16-17
  4. ^ 中見立夫(2012)『二〇世紀満洲歴史辞典』解説p.2
  5. ^ 中見立夫(2012)『二〇世紀満洲歴史辞典』解説p.4
  6. ^ 精選版 日本国語大辞典『満州・満洲』「清初、中国を支配した満州族が旧俗称女真を廃して用い」「その居住地域をもさした」[1]
  7. ^ 大谷大学東洋史助教授の浅見直一郎によれば、満洲とは元はマンジュリという仏であり、中国ではこれに文殊師利、満殊尸利、曼殊室利などの漢字をあてた『文殊菩薩』のことであり、ヌルハチが女直(女真)人の国を建てたときの国名をマンジュ国と言い、これが当時女直人の間に広まっていたマンジュシリ(マンジュ)に対する信仰を背景にし、それに由来して命名されたものであることは間違いがない、とする。読むページ | 生活の中の仏教用語 | 満洲”. www.otani.ac.jp. 大谷大学. 2021年1月14日閲覧。。なお異説もある→(#呼称としての満洲
  8. ^ 塚瀬進『マンチュリア史研究 「満洲」六〇〇年の社会変容』吉川弘文館、2014年11月1日、ISBN 978-4-642-03837-9、1頁。
  9. ^ a b 満州』 - コトバンク
  10. ^ a b 愛琿条約』 - コトバンク
  11. ^ a b c 北京条約』 - コトバンク
  12. ^ 綿貫哲郎 2021, p. 57.
  13. ^ 松村(2006)pp.156-159
  14. ^ 松村(2006)pp.159-160
  15. ^ a b c d 岡本隆司 2017, p. 99.
  16. ^ a b c 綿貫哲郎 2021, p. 58.
  17. ^ a b 神田信夫 1992, p. 98.
  18. ^ 中見立夫 2006, pp. 17–20.
  19. ^ a b 綿貫哲郎 2021, p. 62.
  20. ^ a b 中見立夫 2006, pp. 17–22.
  21. ^ 綿貫哲郎 2021, p. 64.
  22. ^ a b 中見立夫 2006, pp. 25–26.
  23. ^ 綿貫哲郎 2021, pp. 65–68.
  24. ^ 中見立夫 2006, pp. 20–22.
  25. ^ 綿貫哲郎 2021, pp. 68–69.
  26. ^ 大蔵省印刷局(編)「敍任及辭令」『官報』第2410号、日本マイクロ写真、1920年8月13日、317頁。 
  27. ^ 海軍大臣官房(編)「第三編 海軍:第一 軍艦」『昭和5年度海軍省年報』、1924年。 
  28. ^ 神田信夫 1992, pp. 98–99.
  29. ^ 綿貫哲郎 2021, pp. 63–64.
  30. ^ 綿貫哲郎 2021, p. 67.
  31. ^ 増井経夫『大清帝国』講談社〈講談社学術文庫1526〉、2002年。 
  32. ^ 上田信『海と帝国 : 明清時代』講談社〈中国の歴史9〉、2002年。 
  33. ^ 神田信夫『明-清』山川出版社〈世界歴史大系〉、1994年。 
  34. ^ 岡本隆司 著「清」、冨谷, 至、森田, 憲司 編『概説中国史 下』昭和堂、2016年。 
  35. ^ 岡本隆司『「中国」の形成 : 現代への展望』岩波書店〈中国の歴史5〉、2020年。 
  36. ^ a b 満洲族』 - コトバンク
  37. ^ a b 河内(1989)pp.230-232
  38. ^ a b c 三上(1975)pp.819-823
  39. ^ a b 石橋(2000)pp.131-132
  40. ^ 加藤(1989)pp.454-456
  41. ^ a b c 岸本(2008)pp.345-347
  42. ^ 麻田(2008)pp.38-44
  43. ^ 麻田(2008)pp.46-50
  44. ^ 麻田(2008)pp.50-55
  45. ^ a b c 小林(2008)pp.49-51
  46. ^ 鈴木(2021)pp.116-118
  47. ^ 酒寄雅志渤海史研究と近代日本」『駿台史學』第108巻、明治大学史学地理学会、1999年12月、7頁、NAID 120001438972 
  48. ^ 小林(2008)pp.56-61
  49. ^ 小林(2008)pp.71-72
  50. ^ 鈴木(2021)pp.118-120
  51. ^ 小林(2008)pp.90-92
  52. ^ a b 小林(2008)pp.92-95
  53. ^ a b 鈴木(2021)pp.129-132
  54. ^ 鈴木(2021)pp.170-172
  55. ^ 黄(2006)p.56
  56. ^ a b c d 小林(2008)pp.248-249
  57. ^ 鈴木(2021)pp.302-304
  58. ^ 鈴木(2021)pp.307-310
  59. ^ a b 鈴木(2021)pp.310-313
  60. ^ 天児(2004)p.117
  61. ^ 鈴木(2021)pp.314-316
  62. ^ 黄(2006)p.143
  63. ^ 环渤海经济圈介绍:天然的聚宝盆” (中国語). 中国经济网 (2014年6月8日). 2015年11月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年11月2日閲覧。





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