流れ 感覚的な表現

流れ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/03 20:06 UTC 版)

感覚的な表現

ものごとは様々な因果の連鎖のようなもので起きている、という面がある。こうした因果(連鎖)を日本語では「流れ」と感覚的に表現することがある。

人は悪い流れ(悪い因果、悪い連鎖)に陥ってしまった場合には苦しむわけであるが、そうした状況でもそれを変えることができる場合、変わる場合もある。主体的に行動を起こして行動を起こすことを「流れを変える」と日本語では表現している。(さほど主体性がなく、いくぶん他人まかせの気持ちを表現をする時は)「流れが変わる」とか「流れは変わる[9]」などと表現している。

なお、出来ごとを「良い」「悪い」という観点から分類することがあるが、例えば良いことがさらに良いことを起こしている状態はしばしば「好循環」と言い、悪いことがさらに悪いことを起こすことは「悪循環」と呼んでいる。

ある人の人生で起きる一連のできごとを「流れ」と呼ぶことがあるが、それはその人と周囲の世界との絶妙な相互作用で起きていることは多い。人は他人が起こしているものごとには意識を向けても、自分自身が引き起こしているものことのほうは案外と見落とすことがある。自分では気づいていなくても、「流れ」は自分の行動や、自分の心の状態が引き起こしていることがあるのである。

また人生のこうした「流れ」は存外小さなことから起きていることがある。例えば、挨拶をさわやかにそして積極的にする、とか、人と会話をする時は笑顔を見せる、とか、思いやりをもって人に言葉をかける、とか、作業が続いて膠着状態に陥ったら自発的に給湯室や洗面所などでストレッチ深呼吸呼吸法)などをして自分をリラックスさせる、といったことである[10]

例えば、子供の勉学やスポーツなどでは「流れに乗っている」生徒とその周囲を観察すると、親や教師が褒め上手ということも多い。親や教師が、生徒の小さな成果でも積極的に褒める→やる気が出る→努力する→さらに褒められることが増える、という好循環が起きるわけである。大人でも良いコーチに恵まれると伸びるものだが、一流の人になると、依存心から抜け出して、たとえ周囲に褒めてくれる人がいないような状態になっても、自分で自分の良いところを褒めて自力で自分を伸ばす、という技術を用いる人もいる。

競技や勝負事では、実力がさほどなかったチームがひょんなことで一試合に勝ったことで、その後の試合も破竹の勢いで次々と勝つ進むことがある。こうしたことを「流れ」とか「流れに乗っている」と表現することがある。これも一試合に勝って「勝ち」を得たことで、メンバーひとりひとりが(ちょうど勉学に励む生徒のように)「褒められた」ような状態、前向きの精神状態、気力が充実した状態になり、それがまた好結果を生むという連鎖が起きているわけである。競技と言っても、実はほとんどのプレーヤーは、普段は精神状態(気力)が不十分で、技術的に見て実力の6~7割程度の力しか出さずに戦っている。そんな中で、ひとつのチームが、突出した精神状態で戦う状態になると、実力で比較したのでは予想できないような、好結果が出続けることがあるわけである。スポーツの世界ではよく「心・技・体」と言うが、一般に、監督は選手の「技」「体」にももちろん気を配るものだが、それに加えてその時々の選手の心の状態にも注意を向け、心に働きかけることでも、よい流れを作ろうとし、流れに乗ろう、流れを絶やさないようにしようとする。[注 1] [注 2][注 3]

次に社会的な事象に着目してみると、例えば、政治の世界では、世論の傾向やそれに伴う一連の出来事を「流れ」と表現することがある。「流れに乗る」「流れに乗ろうとしている」などと言う。人々の意見を、空気の流れ、つまりに喩えて「あの政治家は"風向き"を見て判断した」とか「風見鶏(かざみどり)」などと表現することもある。

強い者に取り入ろうとする者が、強い者に寄ってきて何らかのもの(票、金銭、労力 等々)を提供し、結果として強者がさらに強化される、というようなことが起きることがある。政治力学がからむこうした事象も「流れ」と表現されることもある(「流れに乗ろうとした」などと表現する)。 ただし「流れ」に乗っている政治家も、病気になったりしてそれが人々に知れると、往々にして支持者やとりまきも将来に不安を感じて去ってゆき、この「流れ」は変わる。

上述の、日本語で「流れ」と感覚的に表現されていることの中には、多数の要素が連鎖的にある状態になっていることも含まれるが、それは物理学の世界で言う「」の概念と重なることがある。何かのきっかけで個々の要素の状態がすっかり変わることがある。これは「相が変わった」と言う。


注釈

  1. ^ 野球監督の中には、選手に対して働きかけるだけでなく、選手の(配偶者)の誕生日などにプレゼントをすることで、そうした流れを根底からつくるという高等な技を使う人もいる。
  2. ^ ただし、バスケットボールにおいては、一度シュートを決めた選手は他の選手に比べてその後もシュートを決めやすくなる(「ホットハンド」)が信じられていることがあるが、 これに関しては、アメリカ心理学者トーマス・ギロビッチが、実際にNBAフィラデルフィア・セブンティシクサーズの1980-1981年シーズンのフィールド・ゴール、およびボストン・セルティックスの1980-1981年、1981-1982年シーズンのフリースローを統計分析したところ、シュートが連続して決まる確率に偶然の域を出るものは無く、シュートは完全なる独立試行であることが明らかとなった。(ただし近年ではトーマス・ギロビッチの行った統計の不備を指摘したり、積極的に「ホットハンド」の存在を支持する研究もある。詳しくはホットハンドの誤謬を参照のこと。)
  3. ^ このように本当は何ら意味の無い情報の中から何らかのパターンを見出してしまう現象のことをクラスター錯覚en:clustering illusion)と呼ぶ。クラスター錯覚は認知バイアスの一種であり、統計データから誤った解釈を導き出す原因となる。また、クラスター錯覚のような「まやかしの有意性」から理屈を組み立ててしまうことを「テキサスの射撃手の誤謬」(en:Texas sharpshooter fallacy)と呼ぶ。

出典

  1. ^ a b 広辞苑 第五版 p.1979
  2. ^ 大辞林
  3. ^ 広辞苑 第五版  p.1979「流れる」
  4. ^ 日本人に馴染みのある有名な作品では例えば『方丈記』など。他にも多数あり。
  5. ^ フィリップ ボール『流れ: 自然が創り出す美しいパターン』早川書房、2011
  6. ^ Suzuyo、物流とは
  7. ^ [1]
  8. ^ Spedding, G. R., Rayner, J. M. V., and Pennycuick, C. J. (1984). “Momentum and Energy in the Wake of a Pigeon (Columba Livia) in Slow Flight”. J. Exp. Biol. 111: pp. 81-102. 
  9. ^ 樋口広太郎『だいじょうぶ!必ず流れは変わる』2000年
  10. ^ 植西聰『「悪い流れ」がガラリと変わる魔法の習慣』PHP研究所、2013


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