官能小説 表紙の装丁

官能小説

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/30 08:05 UTC 版)

表紙の装丁

単行本の表紙の多くはエアブラシなどを用いた写実的な女性の絵である。芸術的に見て優れた絵も多く、画家(西村春海、村山潤一、新井田孝など)にも少数だがファンが付いているほどである(画家達の表紙絵作品だけを集めてJPEGデータ化したCD-ROMアルバムが販売されている)。

装丁は、新書より大きな判で発売される時には、銀や金などの金属光沢のある素材によって飾られることもある。しかし、この独特の装丁では買いにくいという声や(アダルトビデオのパッケージと同じである)、読者の嗜好の変化などから、主に官能小説専門以外のレーベルにおいて、それよりも少し柔らかな画風の絵が、表紙に用いられることが増えている。

また、官能小説専門のレーベルでも、一般書店用に従来と同じ装丁のものを発売する一方、煽動的な文言の帯をのぞき、明るめの色を使ったカバーに差し替えたバージョンの本を作成し、コンビニエンスストアや駅売店等で販売するなどということも行っている。

内容

各話毎に性描写を入れなければならないため、また、(出版者側が想定している)読者の要求に応えるため、話の展開や設定に無理が生じやすく、現実感に乏しい事が多い。このため、官能小説が「男のファンタジー」と呼ばれたりする事がしばしばある。ただし、官能小説は後述するようにリアリズムを追求するジャンルではないので、この事が評価を下げる点とはならない場合が多い。

また、オリジナリティよりもステレオタイプな表現(例えばヒロインのキャラクター設定を「性的な関心が無い貞淑な女性」としたり、「無関心を装っても心中は欲求不満な『淑女』」としたり、「ツンデレ」としたりする、など)が優先される事が多い。いわゆる「ご都合主義」や紋切り型の表現、マンネリズムがあっても、他の文学ジャンルと異なり低い評価を与えられないのが大きな特徴である。とはいっても、オリジナリティが無ければ人気が出るというものではなく、作家にとってオリジナリティとステレオタイプの匙加減が重要といえる。

狭義の官能小説では現代社会を舞台とすることが多く、主として江戸時代を舞台にした時代小説の形を取るものも書かれている。また、週刊誌や男性誌の連載などではサスペンスや経済小説の形式を取る事も多い。その一方で、SFやファンタジー、ミステリーを採用する事は少ない。

これは読者に前提知識を要求するような要素を加えると、内容が散漫となり話に集中出来なくなる恐れがあるからだと考えられる。ただし、過去には当局の取り締まりを避けるために「核戦争後の日本」といった荒唐無稽な未来小説や魔女狩りの横行した中世ヨーロッパを舞台にしたSM小説などの作品も書かれていた。

このような状況ながら、中にはあそびごころ的にちらりとSFやファンタジーの芽を見せる作家も存在する。過去には、一部の作家には、有名なアニメパロディを行ない、トンデモ本扱いされて日本トンデモ本大賞を受賞した作品もあった。また、ごく稀に社会問題を取り上げる作品も存在する。ただし、ほとんどの場合は添え物レベルに留めるのが常であり、官能小説の範囲を逸脱すると読者から低評価を受ける事が少なくない。

近年のメジャー系出版社で刊行される小説はサスペンス青春小説の要素が強い物が多い[いつ?]。逆にある程度マニア傾向にある出版社で刊行される作品はストーリーそのものは単純で下記のようなジャンルをはっきりと書く作品が多い。

こうした官能小説のうち数少ない例外として、三島由紀夫渋沢龍彦が賞賛した沼正三家畜人ヤプー』がある(ただし、内容から官能小説ではなくSF小説の一種とする向きもある)。

視点

多くの官能小説は三人称で描かれるが、一部の作品や下記の告白本・実話物では一人称が使われる事がある。一人称の場合は女性側の視点のものもあれば男性側の視点のものもあり、時間や場所に応じて視点が時々男女に入れ替わるものもある。稀に第三者からの視点の作品もある。

独特な用語

官能小説では卑猥さを演出するため(また、かつては取り締まりを回避するため)、独特な用語が使われている。

  • 陰茎:肉樹
  • 膣:蜜壷
  • 小陰唇:花弁
  • 肛門:菊座 等
  • 生殖器・排泄器官に関する医療用語(いわゆる横文字

2006年にはちくま文庫から官能小説の用語や表現を集めた辞典が刊行されている[3]

また、近年の作品ではオノマトペが多用される傾向にある[いつ?]

規制

性的な主題を扱った他のジャンルと同様に、官能小説にも検閲・規制の問題があり、表現の自由等をめぐって様々な論争があった。中でも

などは有名である(これらが官能小説にあたるかどうかも異論がある)。 しかし、その是非とは別に、摘発や規制がかえって官能小説独特の比喩などの表現方法を発展させたという事実もある。近年ではアダルトビデオ成人向け漫画など、より刺激の強いメディアが登場したこともあり、小説の性描写が問題になる事はごく稀である。

ただし、スポーツ新聞週刊誌などでの掲載においては、性描写が表現の自主規制で厳格に管理されている。








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