大地の歌 楽曲構成

大地の歌

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/25 04:59 UTC 版)

楽曲構成

全6楽章からなる。テノールとアルト(またはバリトン、以下同じ)が楽章ごとに交互に独唱する。柴田南雄は全体の構成を、第4楽章を中心とし、第3楽章と第5楽章、第2楽章と第6楽章(前半)、第1楽章と第6楽章(後半)がそれぞれ対応する対照的配置であるとしている。これに対し、諸井誠は第3・4・5楽章をスケルツォ楽章の三部形式と見なすことで、音楽的には全体を伝統的な4楽章制交響曲として捉えることができ、詩的内容からは、第1楽章と第5楽章、第2楽章と第6楽章、第3楽章と第4楽章が対応関係になっているので、第3・4楽章を中間展開部とする三部構成と捉えることもできる、としている。しかし第3・4・5楽章を典型的な歌曲集の形としてみなすことも可能である。

第1楽章「大地の哀愁に寄せる酒の歌」

アレグロ・ペザンテ イ短調 3/4拍子

詩は李白「悲歌行」に基づくが、自由に改変されている。テノール独唱。

ホルンの斉奏で始まり、劇的でペシミスティックな性格が打ち出されている。歌詞は3節からなり、各節は「生は暗く、死もまた暗い」という同じ句で結ばれる。この句は最初はト短調、2回目に変イ短調、3回目にはイ調(長調と短調の間を揺れ動く)と半音ずつ上昇して強調されている。

諸井誠はこの第1楽章と次の第2楽章について、ソナタ形式として分析することが可能だとしている。

第2楽章「秋に寂しき者」

Etwas schleichend. Ermüdet(やや緩やかに、疲れたように) ニ短調 3/2拍子

詩は銭起「效古秋夜長」とされてきたが、近年は疑問視されており、張籍もしくは張継との説がある(これについては第2楽章「秋に寂しき者」の問題を参照)。ソナタの緩徐楽章のようである。アルト独唱。

第3楽章「青春について」

Behaglich heiter(和やかに、明るく) 変ロ長調 2/2拍子

詩は李白「宴陶家亭子」に基づく。テノール独唱。ピアノ稿の題名は「陶製の亭」であり、ベートゲの題名をそのまま使っている。ベートゲは原詩の「陶家」(陶氏の家)を「陶器の家」と誤訳している。

音楽は五音音階を用いて東洋的な雰囲気を醸し出している。

第4楽章「美について」

コモド・ドルチッシモ ト長調 3/4拍子

詩は李白「採蓮曲」に基づく。アルト独唱。ピアノ稿の題名は「岸辺にて」であり、ベートゲの題名をそのまま使っている。蓮の花を摘む乙女を描く甘美な部分と馬を駆ける若者の勇壮な部分が見事なコントラストを作っている。

第5楽章「春に酔える者」

アレグロ イ長調 4/4拍子

詩は李白「春日酔起言志」に基づく。唐詩の内容に最も忠実とされる。

ここでも管弦楽の間奏部分などに五音音階が顕著に用いられている。テノール独唱。

第6楽章「告別」

Schwer(重々しく) ハ短調 4/4拍子 拡大されたソナタ形式。アルト独唱。

この楽章のみで演奏時間にして約30分、全体の4割以上を要する長大な楽章である。詩は前半部分が孟浩然の「宿業師山房期丁大不至」、後半部分が王維の「送別」によっている。ベートゲの詩は唐詩に忠実だが、マーラーが2つの詩を結合させた上、自由に改変、追加している。

曲の最後は「永遠に」の句を繰り返しながらハ長調の主和音(--)に至るが、和音に音階の第6度音のイ音が加えられて(ハ-ホ-ト-イ)となっているため、ハ長調ともイ短調ともつかない、閉じられない印象を残す(この和音は、ベルクヴァイオリン協奏曲変ロ---)でも結尾に使われているほか、後にはシックスス・コードとしてポピュラー音楽でも多用される)。マーラーはこの部分にGänzlich ersterbend (完全に死に絶えるように)と書き込んでいる。


  1. ^ EAM: World Premiere of Krzysztof Penderecki's Symphony No. 6 with the Guangzhou Symphony Orchestra”. www.eamdc.com. 2020年7月14日閲覧。
  2. ^ 柴田 (1990), pp. 192-193.
  3. ^ ダイヤの玉






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