大地の歌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/25 04:59 UTC 版)
「第九」のジンクス
『大地の歌』は、交響曲第8番に次いで完成され、本来ならば「第9番」という番号が付けられるべきものだった。しかし、ベートーヴェンが交響曲第10番を未完成に終わらせ、またブルックナーが10曲の交響曲を完成させたものの、11番目にあたる交響曲第9番が未完成のうちに死去したことを意識したマーラーは、この曲に番号を与えず、単に『大地の歌』とした。その後に作曲したのが純然たる器楽作品であったため、これを交響曲第9番とした。マーラーは続いて交響曲第10番に着手したが未完に終わり、結局「第九」のジンクスは成立してしまった、というのが通説となっている。
これとは逆に、続いて第9交響曲を作曲すれば「10曲」として数えることができるために、交響曲としては破格のこの曲に、あえて「交響曲」の名称を与えてジンクスの「緩衝地帯」としたとする説もある。この説は、ブルックナーが実際には10曲以上書いていることからすると、説得力に欠ける。ただし、『大地の歌』が交響曲として「破格」という点では、明確にソナタ形式を用いた楽章を欠き、強い歌曲的性格と書法に加えて、『亡き子をしのぶ歌』同様にピアノ稿も同時に作曲されていた経過からして、そのような判断がマーラー自身にあったとも考えられる。『大地の歌』に番号が付されていない理由として、上記のジンクス説は、この曲の性格とマーラーの心理の一面を物語るものではあっても、それがすべてとはいえない。
それまでのマーラー作品は、マーラー自身によって初演され、出版までに楽譜に手が加えられる過程で、表現がより明確にされ、標題などの位置づけも練り上げられて完成度が高められてきた。しかし、先述の通り『大地の歌』はマーラーの死によって、それが果たされなかった。このことは、「第九」のジンクスが、現在まで神話的に語られる要因となっている。事実上のアレグロ・ソナタや緩徐楽章を持った歌曲集でもある。
- ^ “EAM: World Premiere of Krzysztof Penderecki's Symphony No. 6 with the Guangzhou Symphony Orchestra”. www.eamdc.com. 2020年7月14日閲覧。
- ^ 柴田 (1990), pp. 192-193.
- ^ ダイヤの玉
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