圏 (数学) 関手

圏 (数学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/29 16:22 UTC 版)

関手

2 つの圏 C, D があったとき、

  • C の対象 X に対し D の対象 F(X) を与える
  • f : XY に対し射 F(f) : F(X) → F(Y) を与える

という対応 F で射の合成や恒等射を保つものは(共変 (covariant))関手 F とよばれる。一方、似たような対応で射の定義域と余定義域とを入れ替え、合成の順番を反対にする対応は C から D への反変関手 (contravariant functor) とよばれる。C から D への反変関手を考えるということは C の双対圏 Cop から D への共変関手を考えるということと同じになる。

自然変換

自然変換 (natural transformation) は 2 つの関手間の関係である。関手はしばしば「自然な構成」を記述し、そして自然変換はそのような 2 つの構成の間の「自然な準同型」を記述する。時に 2 つの全く違う構成が「同様の」結果をもたらすことがある。これは、2 つの関手間の自然同型 (natural isomorphism) にて表現される。 2 つの関手 F, G に対し、F から G への自然変換が存在して ηxC に含まれる全ての対象 x に対して同型射となるとき、この自然変換は自然同型 (naturally isomorphic) であるという。

圏の種類

高次圏

圏が与えられているとき、そこからより複雑な高次圏を考えることができる。簡潔には、2 つの対象の間の射を「一方の対象からもう一方への対応関係」とみなすならば、これを高次圏において「高次の対応関係」を考慮することで、より有益な一般化が可能となる。

例えば、「二次元の圏」である双圏英語版bicategory) もしくは 2-圏英語版 (2-category)[注釈 2] は「射の間の射」、つまり、ある射を別の射に変換する対応関係によって得られる圏である。これらの「2-射」(2-cell) は水平・垂直に「合成」することができ、かかる 2 つの合成則においては 2 次元の「交換則」(exchange law) が成り立つ。この最も標準的な例は Cat、つまり全ての(小さな)圏から成る 2-圏であり、この例において、射には関手が、2-射には、関手の自然変換が当てはまる。もう 1 つの基本的な例としては、対象 1 つから成る 2-圏である—これは(狭義)モノイド圏である。

この手法を任意の自然数 n で拡張し、n-圏(n-categoryn 次圏)を定義することができる。さらに順序数 ω に対する ω-category と呼ばれる高次圏もある。このアイデアに関する堅苦しくない入門文献としてJohn Baez: The Tale of n-categoriesが挙げられる。

空間を圏で表す

(O, ≤) が順序集合のとき、これを次のような圏 CO と同一視することができる:obj(CO) = O とし、p, q ∈ O = obj(CO) について pq のとき、およびそのときに限り p から q への射がただ 1 つ存在する、として CO における射を定める。ここで順序関係の推移律が射の合成に、反射律が恒等射に対応している。特に位相空間 X に対してその開集合系 O(X) を圏と見なすことができる。

G が群のとき、対象 Y ただ 1 つからなり、Hom (Y, Y) ≡ G であるような圏を G と同一視することができる。また、位相空間の基本亜群や「被覆」のホロノミー亜群など、様々な亜群による幾何学的な情報の定式化が得られている。

これらは様々な種類の数学的対象を圏によって言い換えていることになる。トポスの概念によってこれらを共通の文脈の中におくことが可能になる。


注釈

  1. ^ この目的でz記法の太いセミコロン (U+2A1F) が用意されている
  2. ^ これら語法にはやや注意が必要である。通常双圏には定義に現れる等式的公理において、等号の代わりに同型に緩めた条件を課す。厳密に等式として成り立つものは「厳密な 2-圏英語版」と言う。2-圏がどちらの意味であるかは文脈による。より高次の圏ではさらに状況が面倒である(どの等号を同型に緩めるかで定義の数は組合せ爆発する)。[1][2][3] などを参照。

出典

  1. ^ a b Eilenberg, S.; Mac Lane, S. (sep. 1945), “General Theory of Natural Equivalences”, Transactions of The American Mathematical Society 58 (2): 231-294, doi:10.2307/1990284 
  2. ^ Barr & Wells 2005, Chapter 1.
  3. ^ Awodey 2006, Definition 1.12.
  4. ^ Weibel 1994, Definition A.1.1.
  5. ^ Borceux 1994, Definition 1.2.1.






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