分配関数 分配関数の概要

分配関数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/21 14:29 UTC 版)

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分配関数

系の取りうる全ての状態の集合を Ω とし、系が状態 ω∈Ω にあるときのエネルギーを とするとき、分配関数 Z(β)

によって定義される。和の中の ボルツマン因子と呼ばれる。カノニカルアンサンブルは熱浴と接触する閉鎖系を表現するアンサンブルである。パラメータ β は熱浴を特徴づける量で、熱浴の温度と解釈される。熱力学温度 T とは β=1/kT の関係にあり、逆温度と呼ばれる。kボルツマン定数である。分配関数に定数を乗じることはエネルギーの基準値をずらすことに等しい。分配関数の大きさそのものには意味がない。

量子系

量子系においては、系の状態はヒルベルト空間上の状態ベクトル で表される。ある状態における物理量は量子論的演算子で与えられ、特にエネルギーはハミルトン演算子 で与えられる。したがって、分配関数は

となる。 状態ベクトルはパラメータ n で指定される正規直交完全系 により

と展開される。状態ベクトルに対する和は展開係数に関する積分に置き換えられるので

となる。分配関数の大きさそのものには意味がないので係数 C を除くことができて、最終的には

となる。トレースを用いれば

と表現できる。

量子系では通常はハミルトン演算子を対角化するエネルギー固有状態を用いて表現される。エネルギー量子数 i と対応するエネルギー固有値 Ei により

となる。 ここで i は全てのエネルギー固有状態についての和であり、縮退などがある場合には注意を要する。

古典系

古典系では、状態変数は連続的に変化するので、状態毎の和をとることが出来ない。そこで、粗視化を行い、位置と運動量が「あまり変わらない」状態を同一の状態と考える。

例えば、1次元空間内の1粒子からなる系では、量子状態が位相空間において「面積」に1つの割合で分布すると考え、ボルツマン因子e-βEの位相空間上の積分をで割ったものを分配関数と定義する。

ここで、H(p,q)は位相空間上の点(p,q)におけるハミルトニアンである。

これは系がd次元空間内のN個の同一粒子からなる場合にも簡単に拡張できて、

ここで、N!は、粒子が区別出来ないことによる状態の数え過ぎを補正するための項である。

大分配関数

系の取りうる全ての状態の集合を Ω とし、系が状態 ω∈Ω にあるときのエネルギーを 、粒子数を とするとき、大分配関数 Ξ(β,μ)

によって定義される。グランドカノニカルアンサンブルは熱浴、粒子浴と接触する解放系を表現するアンサンブルである。パラメータ μ は粒子浴の化学ポテンシャルである。

分配関数との関係

集合 Ω を粒子数 N によって

非交和に分解する。これを用いて大分配関数を変形すれば

となる。ここで λ=eβμ活量である。大分配関数は粒子数 N の分配関数の母関数と見ることができる。


  1. ^ W. グライナー(1999)
  2. ^ 鈴木彰; 藤田重次 『統計熱力学の基礎』 共立出版、2008年、179-180,184頁。ISBN 978-4-320-03456-3 


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