光害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/26 19:53 UTC 版)
光害への対策
他の公害と同様で、光害を防ぐのは非常に難しい。明かりを消せば、暗い空がすぐに戻ってくる。しかし実際には、光害は社会の工業化および治安対策と深く関わっている。
街灯は、上部に反射材を伴う覆いを付けるなどして、不必要な方向への漏れ光を防ぐとともに、それらを適切に反射し、必要な方向だけに効率よく光が当たるようにした街灯への切り替えが求められる。また、使用光源に関しても、水銀灯に代表されるエネルギー効率の悪い[11]光源の使用を避け、効率の良い光源の利用の促進が求められる。しかし、まだまだそのような対策が全くなされていない照明も多い。
光害は、屋外での不要な照明を消すなどしても防ぐことができる。例えば、スポーツ場などの照明を、人が中にいるときにだけつけるなどの対策をとれば、その分光害を防ぐとともにエネルギーを節約できることになる。また、より暗い照明を使うことで、グレアを軽減させることができる。
アメリカ
アメリカでは、主な天文台の周囲に、直径数十kmの、光の放射が厳しく制限されている地域が設けられていることがある。1980年には、カリフォルニア州のサンノゼで、近くにあるリック天文台への影響を防ぐために、全ての街灯が低圧ナトリウムランプに取り替えられた。アリゾナ州ツーソン市では条例により市内全域に光源規制を行っている。特に、キットピーク国立天文台(Kitt Peak National Observatory)の半径35マイル及びマウントホプキンス天文台(Mount Hopkins Observatory)の半径25マイルについては屋外照明として石英灯(quartz lamp)、メタルハライドランプを使用禁止としているほか、その他の光源についても完全遮光、あるいは上方光束の遮光を求めている。似たような事業がハワイ州などでも行われている。
日本
日本でも、1988年から、光害と大気汚染問題に関心を持ってもらおうと、全国の一般市民に参加を募り全国星空継続観察が開始された。また、1998年3月30日には、環境庁(現環境省)により、「光害対策ガイドライン」が策定された。 全国各地の自治体でも、パチンコ店などから発せられる無駄なサーチライトを禁止する条例が制定されている。岡山県美星町(現井原市)で、1989年11月22日に、美しい星空を守るための「光害防止条例」が制定されたのをはじめ、岡山県、佐賀県、熊本県では県としてサーチライト禁止条例を制定している。また、群馬県では群馬県立ぐんま天文台の設置を機に「星空憲章」を制定し、群馬県高山村では「高山村の美しい星空を守る光環境条例」を1998年3月10日に制定している。
また、国内では初めての星空保護区として、2018年3月30日に八重山諸島「西表石垣国立公園」が、IDA国際ダークスカイ協会米国本部より星空保護区国際認定地「ダークスカイ・パーク」としてとして登録認定された。2020年12月1日には神津島村が「ダークスカイパーク」に登録認定された。2021年11月1日には岡山県井原市美星町が「ダークスカイコミュニティ」に登録認定された。
漁火の問題への対策としては、青色発光ダイオードを用いた集魚灯が試験中である。従来のメタルハライド灯を用いる集魚灯と比較して消費電力は1/50~1/100程度で、指向性が高いために必要外の方向への漏れ光も少なく、機器の寿命も長い。現段階では必ずしも従来のメタルハライド灯と同等の漁獲を得られるわけではないといった問題点もあるが、実用化されればイカ漁業者の経費の大幅削減、イカ漁船による二酸化炭素排出量の大幅削減、周辺地域の星空の改善といった効果が期待されている。
- ^ “星が見えない!光害ってなに?”. 環境省. 2023年9月7日閲覧。
- ^ “美しい星空や生態系にも影響を与える、身近な「光害(ひかりがい)」の実態を専門家が解説”. 東洋大学. 2023年9月7日閲覧。
- ^ “「光害」理由に住宅用太陽光パネルの撤去命じる判決”. 日本経済新聞社 (2012年4月20日). 2012年10月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月26日閲覧。
- ^ CASBEEあいち 3.3 光害の抑制 - 3.3.2 昼光の建物外壁による反射光(グレア)への対策 愛知県
- ^ Falchi, Fabio (10 Jun 2016). “The new world atlas of artificial night sky brightness”. Science Advances 2 (6). doi:10.1126/sciadv.1600377 .
- ^ “日本人の7割、天の川見えず 人工光が影響”. 日経新聞(共同通信). (2016年6月14日) 2017年9月11日閲覧。
- ^ 文・Michelle Z. Donahue/訳・堀込泰三 (2016年6月15日). “天の川見えない人口、欧州60%、北米80%”. ナショナル ジオグラフィック日本版 2017年9月11日閲覧。
- ^ わかばだい天文同好会:グローブ型水銀灯は本当に適切な屋外照明であろうか?
- ^ 「ツイッター本社の巨大「X」看板、市民から苦情 市も調査着手」『Reuters』、2023年7月31日。2023年8月1日閲覧。
- ^ Edmonds, Lauren (2023年8月1日). “エックス社の新しい看板がまぶしすぎる…近くの住人が動画を投稿、その後に撤去”. BUSINESS INSIDER JAPAN. 2023年8月1日閲覧。
- ^ “効果的な屋外照明”. International Dark-Sky Association (1996年10月6日). 2010年12月16日閲覧。
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