信玄堤 竜王四ヶ村堰

信玄堤

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/19 08:51 UTC 版)

竜王四ヶ村堰

竜王四ヶ村堰(甲斐市竜王・竜王河原宿付近)
竜王信玄堤対岸の南アルプス市上高砂地区に点在する九頭龍神祠

竜王四ヶ村堰(りゅうおうしかむらせぎ)は登美台地の高岩(竜王鼻)下の隧道(穴水門)から取水し、本竜王・竜王新町・篠原・富竹新田の4か村を灌漑する用水堰(井堰)。通称は四ヶ村堰。

甲斐国志』に拠れば、江戸時代の寛永年間に代官触頭平岡和由(次郎右衛門)が開削し、河原間であった飛竹河原間が開発され富竹新田が成立した。このため当初は富竹新田堰と呼称されていたが、享保13年(1728年)には竜王村・竜王新町が、元文2年(1737年)には篠原村が加わり4ヶ村堰と呼称されるようになった。

竜王信玄堤の絵図

竜王信玄堤や将棋頭、石積出などの堤防の構造物を描いた絵図類は江戸時代から出現する。

1829年(文政12年)8月作成の「信玄堤絵図」(山梨県立博物館所蔵)は原図が1688年(貞享5年)6月に作成された写で、法量は縦79.1センチ・メートル、横263.6センチ・メートル。原図は1688年(貞享5年)に龍王村・竜王新町の名主・長百姓により作成され、1829年(文政12年)に富竹新田の保坂家により写が作成された。画面左右が南北となり釜無川・竜王信玄堤と竜王村の集落、用水路が俯瞰で描かれており、堤防や石積出、三社神社の存在が確認され、道は朱線で描かれている。「御本丸様書上」によれば1688年(貞享5年)に竜王村では甲府藩に対して戦国期以来の特権継続を願い出ており、本図は村の由緒を記した書上に添付された絵図であると考えられている。

1824年(文政7年)作成の「信玄堤絵図」(保坂家文書、甲斐市指定文化財)は富竹新田の保坂家により作成された絵図で、法量は縦41.1センチ・メートル、横108.6センチ・メートル。江戸後期段階の信玄堤の構造が描かれ、1688年に作成された図と比較すると竜王村の集落や用水路等が省略され、竜王信玄堤と水門や蛇籠のみが描かれ、純粋に信玄堤の構造のみを描く意図であったと考えられている。また、その図と比較すると廃止された取水口や新規に設置された水門の存在など構造の変遷が見られることから、往古の姿を記録する目的で作成されたものであると考えられている。

この他にも信玄堤を描いた絵図や村絵図なども存在している。

釜無川流域の堤防群

釜無川の両岸とその周辺には竜王信玄堤防以外にもさまざまな堤防・治水施設・用水路などが存在する。竜王信玄堤の所在する釜無左岸の甲斐市竜王から下流へ向かうと、前御勅使河・釜無川中央流路を防いだ下川除があり、対岸の南アルプス市下高砂には百間堤がある。下川除に連続して甲斐市西八幡には西八幡堤があり、御勅使川南流路を防いだ。さらに下流では昭和町山之神付近において括りの堤があり、その東側には霞堤が築かれている。括りの堤から対岸の南アルプス市鏡中条には八幡下堤がある。さらに下流へ下ると将監堤がある。


  1. ^ a b 『水の国やまなし』、p.6
  2. ^ 勝俣(2007)、p.417
  3. ^ a b c d e f 『水の国やまなし』、p.110
  4. ^ 平山(2005)、p.4
  5. ^ a b c d 『水の国やまなし』、p.111
  6. ^ a b c 平山(2005)、pp.11 - 12
  7. ^ 山梨県立博物館寄託・今沢家文書
  8. ^ a b c d e f g h 平山(2007)、p.561
  9. ^ 平山(2007)、pp.560 - 561
  10. ^ 植松又次「甲斐の石造鳥居概観」(『甲斐路』26号、1975年)
  11. ^ 安達満「初期『信玄堤』の形態について-最近の安芸・古島説を巡って-」(『日本歴史』335号、1976年)
  12. ^ 柴辻俊六「戦国期の築堤事業と河原宿の成立」(『甲斐史学』特集号、1965年)
  13. ^ 笹本正治『武田信玄-伝説的英雄像からの脱却-』(中公新書、1997年)
  14. ^ 安達満「釜無川治水の発展過程」(『近世甲斐の治水と開発』山梨日日新聞社、1993年)
  15. ^ 川﨑剛「釜無川の流路変遷について」(『武田氏研究』13号、1994年)
  16. ^ 今福利恵「御勅使川流路の変遷と地域の諸相」(信玄堤の再評価実行委員会編『信玄堤の再評価』2004年)
  17. ^ 平山優「中近世移行期甲斐における治水の発展」(信玄堤の再評価実行委員会編『信玄堤の再評価』2004年)






信玄堤と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「信玄堤」の関連用語

信玄堤のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



信玄堤のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの信玄堤 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS