介護保険 介護サービス事業者と介護サービス

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > ビジネス > 金融 > 保険 > 介護保険の解説 > 介護サービス事業者と介護サービス 

介護保険

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/30 14:52 UTC 版)

介護サービス事業者と介護サービス

介護サービス事業者は以下の7つに分類される。

  • 指定居宅サービス事業者(70条から78条)
  • 指定地域密着型サービス事業者(78条の2から78条の17)
  • 指定居宅介護支援事業者(79条から85条)
  • 介護保険施設(86条から115条)
  • 指定介護予防サービス事業者(115条の2から115条の11)
  • 指定地域密着型介護予防サービス事業者(115条の12から115条の21)
  • 指定介護予防支援事業者(115条の22から115条の31)

事業者の特例

みなし指定

介護事業所でなくても介護サービスを行うことで市町村からサービス費の支給を受けることができる。これを「みなし指定」と呼ぶ。

病院
健康保険法第63条第3項第1号の規定による保険医療機関又は保険薬局の指定があったときは、その指定の時に、当該病院等の開設者について、当該病院等により行われる居宅サービス(病院又は診療所にあっては居宅療養管理指導その他厚生労働省令で定める種類の居宅サービスに限り、薬局にあっては居宅療養管理指導に限る。)に係る第41条第1項本文の指定があったものとみなされる(71条)。
病院又は診療所は上記のほか、訪問看護、短期入所療養介護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションが適用される[14]
保険施設
介護老人保健施設又は介護医療院の開設者について、介護老人保健施設又は介護医療院により行われる居宅サービス(短期入所療養介護その他厚生労働省令で定める居宅サービスの種類に限る。)に係る第41条第1項本文の指定があったものとみなされる(72条)。

共生型サービス

2018年4月より、児童福祉法障害者総合支援法の指定を受けている事業所から介護保険法のサービスについて指定の申請が行われた場合、都道府県または市町村の条例で定める基準を満たしているときは、都道府県知事又は市町村長は当該基準に照らし「共生型サービス」としての指定を受けることができる(72条の2、78条の2の2、115条の2の2、115条の12の2)。これにより、同一の事業所で介護保険と障害者福祉の両方のサービスを一体的に提供することができる。

各サービスの対応は以下の通り。

  • 居宅サービス - 訪問介護、通所介護(72条の2)
  • 地域密着型サービス - 地域密着型通所介護(78条の2の2)
  • 介護予防サービス - 介護予防短期入所生活介護(115条の2の2)
  • 地域密着型介護予防サービス - 介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護、介護予防認知症対応型共同生活介護(115条の12の2)

サービス費用

介護報酬

厚生労働省が定めた報酬である介護報酬は介護保険適用対象となる介護サービスを事業者が利用者に提供した際に、その対価として事業者に支払われるサービス費用である[15]。最初の改定が2003年で[16]、以降一部例外を除き3年おきに改定が実施される[17]

利用費

介護サービス事業者は、利用料の1割(2割)自己負担を利用者から徴収し、残り9割(8割)を各都道府県に設置されている国民健康保険団体連合会へ請求し、給付される[18]。国民健康保険団体連合会は9割(8割)の給付費を保険者から拠出してもらい運営する仕組みとなっている。滞在費、食費については原則自己負担となる[18]

自己負担の割合は、市町村から被保険者証とともに負担割合が記された証(負担割合証)が交付される[19]ことにより確認できる(施行規則第28条の2)。

低所得者は在宅介護サービスを受ける場合は自己負担金の上限額設定、施設介護サービスを受ける場合は食費と居住費の減免、在宅でも施設でも世帯合算した医療費と介護費の自己負担の上限額設定により(要介護者の収入・貯蓄・財産)+(介護保険と健康保険の自己負担分)+(行政からの助成金)で費用負担できるように制度設計されている[20]

高額介護サービス費制度により、利用者が支払う月々の利用費には上限が設けられている[19]

  • 現役並み所得者:世帯全員で44,400円(2015年8月利用分より新設)
  • 一般:世帯全員で37,200円
  • 世帯全員が市町村税非課税:世帯全員で24,600円
    • 老齢福祉年金の受給者、前年の合計所得金額と公的年金等収入額の合計が年間80万円以下の者:利用者個人で15,000円
  • 生活保護受給者:利用者個人で15,000円

高額介護サービス費制度は健康保険高額療養費の介護保険版。その他、類似するものとして「高額医療合算介護(予防)サービス費」があり、「高額医療・高額介護合算療養費」制度から介護保険分として支給されるもの(医療保険分は高額介護合算療養費)。[21]

業務管理体制

介護サービス事業者は義務の履行が確保されるよう、厚生労働省令で定める基準に従い、業務管理体制を整備しなければならず(115条の32)、地域密着型サービス事業又は地域密着型介護予防サービス事業のみを行う介護サービス事業者は市町村長に、それ以外の介護サービス事業者は市が中核市および指定都市であれば、それぞれの市長に、そうでなければ都道府県知事に業務管理体制の整備に関する事項を届け出なければならない(115条の32第2項1号から5号)。また指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設及び介護医療院の場合は厚生労働大臣に届ける(115条の32第2項6号)。

届け出を受理したものは届け出を行ったものに対して必要がある場合、報告若しくは帳簿書類の提出若しくは提示を命じたり、立ち入り調査をすることができる(115条の33)。その結果適正な業務管理体制の整備をしていないと認めるときは、当該介護サービス事業者に対し、期限を定めて、当該厚生労働省令で定める基準に従って適正な業務管理体制を整備すべきことを勧告することができる(115条の34)。また期限内に従わなかった場合、その旨を公表することができる(115条の34第2項)。

介護サービス情報の公表

利用者が介護サービスを探す際に適切な事業所を選択できるように、介護サービスの情報を公表する制度がある[22]

そのため介護サービス事業者は介護サービスの提供を開始しようとするときは都道府県知事に報告しなければならず(115条の35第1項)、都道府県知事はそれを受けて当該報告の内容を公表しなければならない(115条の35第2項)。必要があると認めるときは、介護サービス事業者に対し、調査を行い(115条の35第3項)、介護サービス事業者が報告を怠ったり虚偽報告や調査妨害をする場合は調査を受けることを命ずることができる(115条の35第4項)。

調査をした結果、指定地域密着型サービス事業者、指定居宅介護支援事業者、指定地域密着型介護予防サービス事業者又は指定介護予防支援事業者を処分をした場合や事業者の指定取り消しが妥当な場合はそれら介護サービス事業者を指定した市町村長に通知しなければならない(115条の35第5項、第7項)。また指定居宅サービス事業者若しくは指定介護予防サービス事業者又は指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設若しくは介護医療院の開設者の場合は許可の取り消しや一部の効力を停止することができる(115条の35第6項)。

調査は都道府県知事が指定する調査機関が行い(115条の36)、調査員(115条の37)は調査で得た秘密を保持し(115条の38)、調査機関は調査事務に関する事項を保持し(115条の39)、都道府県知事に報告しなければならない(115条の40)。また都道府県知事の許可なく業務を停止することはできない(115条の41)。なお介護サービス情報の報告の受理及び公表並びに調査機関の指定に関する事務に関しても、都道府県知事が指定する情報公表センターが行う(115条の42)。

介護サービス開始時に公表する内容は以下の通り(施行規則第140条の45および別表第1)

  1. 事業所又は施設(以下、事業所等)を運営する法人又は法人でない病院、診療所若しくは薬局(以下、法人等)に関する事項
    1. 法人等の名称、主たる事務所の所在地、番号利用法第二条第十五項に規定する法人番号(番号利用法第四十二条第四項の規定により公表されたものに限る。)及び電話番号その他の連絡先
    2. 法人等の代表者の氏名及び職名
    3. 法人等の設立年月日
    4. 法人等が介護サービスを提供し、又は提供しようとする事業所等の所在地を管轄する都道府県の区域内において提供する介護サービス
    5. その他介護サービスの種類に応じて必要な事項
  2. 当該報告に係る介護サービスを提供し、又は提供しようとする事業所等に関する事項
    1. 事業所等の名称、所在地及び電話番号その他の連絡先
    2. 介護保険事業所番号
    3. 事業所等の管理者の氏名及び職名
    4. 当該報告に係る事業の開始年月日若しくは開始予定年月日及び指定若しくは許可を受けた年月日(指定又は許可の更新を受けた場合にはその直近の年月日)
    5. 事業所等までの主な利用交通手段
    6. その他介護サービスの種類に応じて必要な事項
  3. 事業所等において介護サービスに従事する従業者(以下、従業者)に関する事項
    1. 職種別の従業者の数
    2. 従業者の勤務形態、労働時間、従業者一人当たりの利用者、入所者又は入院患者数等
    3. 従業者の当該報告に係る介護サービスの業務に従事した経験年数等
    4. 従業者の健康診断の実施状況
    5. 従業者の教育訓練、研修その他の従業者の資質向上に向けた取組の実施状況
    6. その他介護サービスの種類に応じて必要な事項
  4. 介護サービスの内容に関する事項
    1. 事業所等の運営に関する方針
    2. 当該報告に係る介護サービスの内容等
    3. 当該報告に係る介護サービスの利用者、入所者又は入院患者への提供実績
    4. 利用者等(利用者又はその家族をいう。以下同じ。)、入所者等(入所者又はその家族をいう。以下同じ。)又は入院患者等(入院患者又はその家族をいう。以下同じ。)からの苦情に対応する窓口等の状況
    5. 当該報告に係る介護サービスの提供により賠償すべき事故が発生したときの対応に関する事項
    6. 事業所等の介護サービスの提供内容に関する特色等
    7. 利用者等、入所者等又は入院患者等の意見を把握する体制、第三者による評価の実施状況等
    8. その他介護サービスの種類に応じて必要な事項
  5. 当該報告に係る介護サービスを利用するに当たっての利用料等に関する事項

また事業者は介護サービスの開始以降にも「介護サービスの内容に関する事項」および「介護サービスを提供する事業所又は施設の運営状況に関する事項」を公表する必要がある(別表第2)。


注釈

  1. ^ 厚生労働省が広域化を進めてきたことから、広域連合一部事務組合で運営されているケースも多い。
  2. ^ 後期高齢者医療広域連合はここでいう「医療保険者」には含まれていない。
  3. ^ 40歳以上、死亡まで。
  4. ^ ここでいう「公的年金」とは、老齢基礎年金のみならず障害基礎年金障害厚生年金遺族基礎年金遺族厚生年金も含むが、老齢厚生年金は含まない(老齢厚生年金は老齢基礎年金又は障害基礎年金と併給されるため、老齢厚生年金から天引きされることは無い)。
  5. ^ 船員保険の場合は被保険者負担分の料率を控除できるとされ、実際には事業主負担の割合が高くなっている。
  6. ^ ここでいう「処分」は具体的事実や行為について、行政権または司法権を作用させる行為を指す。『処分』 - コトバンク

出典

  1. ^ 厚生労働白書 2017, p. 393.
  2. ^ 日本社会保障資料Ⅳ(1980-2000) (Report). 国立社会保障・人口問題研究所. March 2005. Chapt.16 老人福祉.
  3. ^ 介護保険制度の概要』(レポート)厚生労働省老健局、2021年5月、2頁https://www.mhlw.go.jp/content/000801559.pdf2022年6月19日閲覧 
  4. ^ 介護保険制度の仕組み”. 政策について > 分野別の政策一覧 > 福祉・介護 > 介護・高齢者福祉 > 介護保険制度の概要 > 介護保険とは. 厚生労働省. 2013年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月20日閲覧。
  5. ^ 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)制定までの経緯と概要について”. WAM NET. 独立行政法人 福祉医療機構. 2022年9月20日閲覧。
  6. ^ a b 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)パンフレット作成について”. 厚生労働省. 2022年9月20日閲覧。
  7. ^ 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(概要)”. 厚生労働省. 2022年9月20日閲覧。
  8. ^ 厚生労働白書 平成28年版 (Report). 厚生労働省. 2013. 資料編p235.
  9. ^ a b c d e f g 区分支給限度基準額について”. 社保審-介護給付費分科会. 厚生労働省 (2014年6月25日). 2022年6月30日閲覧。
  10. ^ 高額療養費の見直し (PDF) (Report). 厚生労働省. 2022年9月16日閲覧
  11. ^ 高額医療合算介護サービス費の支給”. 立川市役所. 2022年9月16日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g 1-4 社会福祉法人による利用者負担軽減制度について (PDF) (Report). 厚生労働省. 2022年9月1日閲覧
  13. ^ 生計困難者等に対する負担軽減事業”. 東京都福祉保健局. 2022年9月1日閲覧。
  14. ^ 医療系サービスのみなし指定”. 東京都福祉保健局. 2022年6月27日閲覧。
  15. ^ 介護報酬について”. 厚生労働省. 2022年9月21日閲覧。
  16. ^ 平成15年度介護報酬見直しの概要”. 厚生労働省. 2022年6月18日閲覧。
  17. ^ 介護報酬”. 厚生労働省. 2022年6月18日閲覧。
  18. ^ a b 厚生労働白書 2013, 資料編p.229.
  19. ^ a b 介護保険制度の概要”. 厚生労働省. 2015年10月11日閲覧。
  20. ^ 厚生労働白書 2013, 資料編pp.228-229.
  21. ^ 介護保険サービスに係る利用料(厚生労働省)
  22. ^ 介護サービス情報の公表制度”. 厚生労働省. 2022年8月17日閲覧。
  23. ^ a b 総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)”. 厚生労働省. 2022年8月28日閲覧。
  24. ^ 厚生労働白書 2017, p. 397.
  25. ^ a b c 地域支援事業の実施について (Report). 厚生労働省老健局長. 9 June 2006. 2021年10月2日閲覧
  26. ^ 在宅医療・介護連携推進事業の手引き Ver.3 (PDF) (Report). 厚生労働省老健局老人保健課. September 2020. 2021年10月1日閲覧
  27. ^ 認知症対策等総合支援事業の実施について (PDF) (Report). 厚生労働省老健局長. 6 June 2011. 2021年10月9日閲覧
  28. ^ 基本チェックリスト (PDF) (Report). 厚生労働省. 2022年8月30日閲覧
  29. ^ 介護保険法施行令 第百四十条の七十一 - e-Gov法令検索
  30. ^ a b c d e f 地域包括ケアシステム”. 厚生労働省. 2022年9月20日閲覧。
  31. ^ a b c 厚生労働白書 2013, 資料編p.228.
  32. ^ 制度等に関して介護給付費分科会で指摘のあった事項”. 第15回 社会保障審議会介護給付費分科会. 厚生労働省. 2022年7月2日閲覧。
  33. ^ 介護保険制度の概要”. ⑩ 高齢者保健福祉(令和2年版厚生労働白書). 厚生労働省. 2022年7月3日閲覧。
  34. ^ 介護保険制度の概要”. ⑩ 高齢者保健福祉(平成29年版厚生労働白書). 厚生労働省. 2022年7月3日閲覧。
  35. ^ 介護保険制度の概要”. ⑩ 高齢者保健福祉(平成26年版厚生労働白書). 厚生労働省. 2022年7月3日閲覧。
  36. ^ 介護保険制度の概要”. ⑩ 高齢者保健福祉(平成23年版厚生労働白書). 厚生労働省. 2022年7月3日閲覧。
  37. ^ 介護保険制度の概要”. ⑩ 高齢者保健福祉(平成20年版厚生労働白書). 厚生労働省. 2022年7月3日閲覧。
  38. ^ 第8期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について』(プレスリリース)厚生労働省、2021年5月14日https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18164.html2021年6月9日閲覧 
  39. ^ 介護費用と保険料の推移”. 政策について > 分野別の政策一覧 > 福祉・介護 > 介護・高齢者福祉 > 介護保険財政. 厚生労働省. 2013年5月20日閲覧。
  40. ^ 財政安定化基金の基本的仕組みについて”. 厚生労働省. 2022年8月29日閲覧。
  41. ^ “ウオッチ!2015介護報酬改定小規模デイは基本報酬引き下げへ”. 日経メディカル. (2014年11月15日). https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201411/539477.html 
  42. ^ 特別養護老人ホームにおける待機者の実態に関する調査研究” (PDF). 社会保障審議会-介護給付費分科会 > 平成24年5月17日の資料. 厚生労働省. 2013年5月19日閲覧。
  43. ^ 療養病床の再編成と円滑な転換に向けた支援措置について』(PDF)(プレスリリース)厚生労働省、2008年3月https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/hoken/dl/seido01.pdf2013年5月20日閲覧 
  44. ^ a b 2011年2月23日朝日新聞朝刊6面






介護保険と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「介護保険」の関連用語

介護保険のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



介護保険のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの介護保険 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS