交響曲第4番 (ブルックナー) 楽器編成

交響曲第4番 (ブルックナー)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/18 01:40 UTC 版)

楽器編成

フルート2(1888年稿ではフルート3、ピッコロ持ち替え1)、オーボエ2、クラリネット(B♭管)2、ファゴット2、ホルン(F管)4、トランペット(F管)3、トロンボーン3(アルト、テナー、バス)、チューバ1(1874年稿では使用されない)、ティンパニシンバル(1888年稿のみ)、弦5部

ただし1888年稿では、ホルン・トランペットの調性(移調記譜)は曲中でしばしば変わる。

演奏時間

演奏時間は、演奏により差があるが、いくつかの演奏実例を元に、演奏時間を以下のように紹介した例がある。

  • 第1楽章=17-21分程度
  • 第2楽章=14-18分程度
  • 第3楽章=10-11分程度(初稿:12-14分)
  • 第4楽章=19-23分程度

全楽章通して、初稿が約72分で、第2稿が約66分と紹介した例もある。

全曲の構成

以下の記述は、最も頻繁に使用される1878/80年稿に基づく原典版(ハース版、ノヴァーク版第2稿)による。既述のとおり、1874年稿では第3楽章スケルツォは全く別の音楽であり、その他の楽章でも多くの違いがある。

第1楽章

音楽・音声外部リンク
第1楽章
Bewegt, nicht zu schnell (Allegro)
ロンドン交響楽団 - フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮。ロンドン交響楽団公式YouTube。

1878/80年稿:Bewegt, nicht zu schnell(運動的に、しかし速すぎずに)/1874年稿:Allegro

変ホ長調、2/2拍子(2分の2拍子)。ソナタ形式

3つの主題を持つ。第1主題の冒頭部分で、ブルックナーの得意な弦のトレモロ(これをブルックナーの“原始霧”という)が森林の暗い霧の中を連想させる。ホルンの伸びやかなソロが奏でられ、やがてフルートやクラリネットに確保されつつ経過してゆく。ブルックナー自身によれば、朝に町の庁舎から一日の始まりを告げるホルンを意図しているという。やがて第1主題第2句とも言える、独特な「ブルックナー・リズム」(2+3連音符)が刻まれ、全合奏による頂点を迎える。この第1主題は、全曲にわたって循環主題的に用いられる。第2主題は変ニ長調で小鳥が囀るようなリズムを持つ。この第1ヴァイオリンの音形をブルックナーは「四十雀の“ツィツィペー”という鳴き声」であると説明している。変ト長調で確保され、発展して行くうちにゼクエンツで高揚し、変ロ長調の第3主題がユニゾンで豪放に出る。ただし、この主題は第1主題内において予告されており、いくらか形を変えたものとなっている。コラール風の楽句によって第3主題が遮られると、小結尾に入り第2主題が静かに戻る。半音階の下降動機がヴァイオリンで奏され、ティンパニとトランペットが弱奏される響きの中に提示部が終わる。 展開部ではまず第1主題を中心に展開し、次第に荒々しい雰囲気となる。やがて厳かなコラール(合唱曲風の合奏)が登場し、明るい雰囲気となりつつ再現部に移行する。ほぼ型どおりに再現され、コーダでは第1主題が壮麗に奏でられる。

第2楽章

音楽・音声外部リンク
第2楽章
Andante quasi Allegretto
ロンドン交響楽団 - フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮。ロンドン交響楽団公式YouTube。

Andante quasi Allegretto

ハ短調、4/4拍子(4分の4拍子)、A-B-A-B-A-Coda のロンド形式

2回目のAの前半は展開部ともとれる内容で主要主題が展開的に扱われるので自由なソナタ形式とも見ることができるが、3回目のAが長大でコーダと分離されているのでここではロンド形式として扱う。主部はヴァイオリンとヴィオラに導かれてチェロにより主要主題が提示される。主要主題部後半には付点リズムの動機が置かれ、後ほど発展に大きくかかわる。副主題はヴィオラで提示され、後半はクラリネットやフルートの鳥のさえずりが聞こえる。主部の回帰で主要主題が対位法的に扱われて発展する。この短い展開部が終わると、主要主題が元通りの形で現れるが、新たな動機がオーボエにも現れている。副主題もほぼ元通り再現され、主部が回帰する。最後の主要主題部では大きなクライマックスが形成される。これが収まると、コーダとなり、冒頭の落ち着いた雰囲気を取り戻して静かに消えてゆく。

第3楽章

音楽・音声外部リンク
第3楽章
Scherzo. Bewegt - Trio. Nicht zu schnell …
ロンドン交響楽団 - フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮。ロンドン交響楽団公式YouTube。

Scherzo. Bewegt - Trio. Nicht zu schnell, Keinesfells schleppend

1878年稿
変ロ長調、2/4拍子(4分の2拍子)。
Bewegt”(運動的に)の速度標語がある。A-B-A の3部形式。俗に「狩のスケルツォ」として知られる楽章である。ホルンの重奏に始まり、金管が一斉に鳴り響く。スケルツォ主部だけでも擬似ソナタ形式ともいえる展開が存在する。
トリオ(中間部)は変ト長調、3/4拍子。“Nicht zu schnell, Keinesfells schleppend”(速過ぎず、決して引きずらないように)という発想標語がある。主題提示部には1番括弧、2番括弧が付いている。木管楽器群が主部とは対照的な、田舎風ののんびりした音楽を展開する。ヴァイオリンに主導されて、変ニ長調-変イ長調-イ長調-変ロ長調へと転調してゆく。木管にレントラー主題が再現されて、休止すると、スケルツォ主部にダ・カーポする。
1874年稿
変ホ長調、3/4拍子。“Sehr schnell
トリオは変イ長調、3/4拍子。“Im gleichen Tempo

第4楽章

音楽・音声外部リンク
第4楽章
Finale. Bewegt, nicht zu schnell
(Allegro moderato)
ロンドン交響楽団 - フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮。ロンドン交響楽団公式YouTube。

Finale. 1880年稿:Bewegt, nicht zu schnell(運動的に、しかし速すぎずに)/1874年稿:Allegro moderato

変ホ長調、2/2拍子(2分の2拍子)。ソナタ形式。

3つの主題を持つ。全楽章のうち、もっとも規模の大きい(小節数なら第1楽章のほうが大きいが演奏時間は第4楽章が長い)壮大な楽章である。上記の通り、1874年稿、1878年稿と、1880年稿および初版は序奏部が全く異なる。1880年稿ではチェロ=バスによるドミナントペダルの上に第1主題が暗示されながら、序奏が始まる。第3楽章のスケルツォ主題が回想されるうちに高揚し、第43小節(スコア練習記号A)で第1主題が金管楽器群の力強い合奏により提示される。ここでもブルックナー・リズム(2+3連音符)が第1主題を支配し、やがて第1楽章の第1主題が形を変えて再登場する。ハ短調とハ長調の2つの楽想からなる第2主題は第93小節(スコア練習記号B)から始まり、“Noch langsamer”(やや遅く)という標語がある。第3主題は第155小節(スコア練習記号E)から始まり、強烈な6連音符が第2主題の流れを打ち破る。第183小節から穏やかな小結尾があり、序奏が回帰すると展開部(第203小節~)となる。その後第2主題第2楽句→第1楽句→第1+3主題→第1主題の順に展開していく。第1主題の展開が終わると、型どおりの再現部となるが第3主題は再現されずにそのままコーダに入る。第477小節(スコア練習記号V)から始まるコーダでは、テンポを大きく落とし、弦楽器群が奏でる6連音符のトレモロをバックに、教会で奏でられるような敬虔なトロンボーンの3重奏がコラール(合唱曲)風に高揚を始める。やがてホルンの高らかな音に引き継がれ、第1楽章の第1主題を歌い上げながら全曲を締めくくる。

エピソード

マーラー版

この曲の版問題を語る際に、「マーラー版」が言及されることがある。これは、ロジェストヴェンスキー指揮ソビエト国立文化省交響楽団によるブルックナー交響曲全集で使用されていることで名が知られるようになった楽譜である(1984年録音)。

CDの解説書によると、これは出版されている楽譜ではなく、1900年1月28日のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会のために、マーラーが当時の出版譜(第3稿、初版)に手を加えたものであり、残されたパート譜からロジェストヴェンスキーがスコアに編纂して上記録音に使用したものであるとのことである。このマーラー版の最大の特徴は、第4楽章に極端なカットがなされていることである。

ただし、そもそもマーラーが他の作曲家の交響曲に対して行った編曲・加筆については、必ずしもマーラーが意図した最終形態であるとは限らない、出版を意図したものではないとの指摘もある。


  1. ^ ハンス=ヨアヒム・ヒンリヒセンドイツ語版英語版『ブルックナー 交響曲』高松佑介訳、春秋社、2018年、112頁。
  2. ^ Symphony no. 4 in E flat Major "Romantic - The Several Versions of Bruckner's Symphonies
  3. ^ 『ブルックナー 聖なる野人』ヴェルナー・ヴォルフ 喜多尾道冬、仲間雄三 共訳、音楽之友社1989年
  4. ^ p. 85-86
  5. ^ 第1構と第2稿の比較(第4楽章)





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