ロールス・ロイス ペガサス ロールス・ロイス ペガサスの概要

ロールス・ロイス ペガサス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/08 05:11 UTC 版)

構造の概要を示した図。

主にホーカー・シドレー ハリアーおよびその派生型の機体に搭載されており、のべ1,200台が出荷され、2005年までに200万飛行時間を蓄積した[2]

BE 48・53

オリオンからオーフュース、ペガサスに至る構造の変遷。

垂直離着陸可能な重航空機としては、まず第二次世界大戦中にヘリコプターが実用化されたものの、回転翼機では前進時に効率が悪く、固定翼機としての垂直離着陸機(VTOL機)が求められることになった。フランスの航空技術者であるミシェル・ウィボーフランス語版は、エンジンの推力を偏向する手法(ベクタード・スラスト)に着目しており、1956年には、ジロプテール (Gyroptere) という対地攻撃機を提案した[3]。これはブリストル社のオライオン ターボプロップエンジンのシャフトによって、機体の重心付近に自動車の車輪のように配置した4個の遠心式ブロアーを駆動し、その排気ノズルを回転させて垂直離着陸を行うものであった[2]

この案そのものはフランス当局・メーカーともに採用しなかったが、オライオンの製造元であるブリストル社のスタンリー・フッカー技師がこれに注目し、遠心式ブロアーのかわりに軸流ファンと2個の可変ノズルを設けたBE 48エンジンを設計した[3]。ついで1957年に設計されたBE 53エンジンでは、コア(ガスジェネレータ)をオーフュースに変更し、オリンパスから導入した前部ファン(低圧圧縮機)を駆動して、二股ダクト式の推力偏向ノズルを備えていた[2]

この時期、ホーカー社のシドニー・カム技師長はV/STOL技術の研究を進めており、このBE 53に着目して、まず1957年にこれを搭載したP.1127/1を設計した。しかしBE 53で偏向できるのは前段の排気のみであり、後段の排気はそのまま後方に指向されていたため、VTOL用エンジンとしては不完全であった[3]

ペガサス1-5

P.1127/1の試験結果も加味して、BE 53から発展したのがBE 53/2(出力4,080 kgf)であり、1959年9月1日にはベンチ試運転に成功した。これは後にペガサス1と呼ばれるようになったが、コアエンジンの排気ノズル(ホットノズル)も二股に分けることで、前後の計4つのノズルでリフトと推進力を得るという構成、そして前部ファン(低圧圧縮機)とコアエンジンの回転方向を逆転させることで、それぞれのローターのジャイロモーメントを相殺減少するという発想など、後に引き継がれる特徴の多くが既に確立されていた[3]

これをもとに、圧縮比を高めて推力を増強したペガサス2(出力4,990 kgf)が開発され、1960年2月には試運転に漕ぎつけた。これはファン2段、高圧 (HP) 圧縮機8段、キャニュラー燃焼器、高圧 (HP) タービン1段および低圧 (LP) タービンから構成されていた。続いて、HP圧縮機を9段、HPタービンを2段として推力を6,350 kgfに強化したペガサス3が開発され、1961年4月に初運転、1962年4月にはP.1127に搭載されて飛行した[2]

更にファンを3段に増加するとともにアニュラー燃焼器を導入、HPタービン動翼第1段を空冷式としたペガサス5(出力7,030 kgf)が開発されて、1962年6月に初運転を行った。1964年2月にケストレルに搭載されて飛行を行ったほか、ドルニエ Do 31にも搭載された[2]

搭載機

ペガサス6

ペガサス5の発展型であるペガサス6(8,600 kgf)は初の制式モデルとなり、イギリス空軍ではペガサスMk.101と称される。 HPタービン動翼第2段を空冷とし、推力偏向ノズルのベースを2枚方式としているほか、ファンをすべてチタン合金製とし、燃料器を水噴射に対応させた。これは燃料器内およびタービンの冷却空気に冷却水(脱イオン水)を噴射することで、ガス温度は高く保ったままでタービン部品の温度を下げることができ、推力増強が可能になるものである[2]

基本構造はペガサス5以前と同様で、転環式の推力偏向ノズル4個(ファン出口に2個、排気出口に2個)を備える、2軸式でミキシングのないターボファンエンジンである。これらの推力偏向ノズルは胴体側面に配置され、その向きを0度(後方)- 98.5度(真下よりやや前)まで変えることによって、垂直離着陸が可能となる。回転速度は毎秒100度に達し、450ノットで飛行中であっても推力偏向が可能である。一方、ホバリングや極低速時などではラダーエルロンなどの通常の姿勢制御機構の働きが弱くなる[注 1]ため、機首下部・左右主翼の端部・機体後部にバルブ付の補助ノズルを取付け、エンジンから抽出した圧縮空気をそれらに送り込み、機体のピッチング・ローリング・ヨーイング運動を行うRCS(リアクション・コントロール・システム)により機体の姿勢制御ができるようになっている[2]

同機は1966年8月に初運転を行い、ハリアーGR.1の試作1号機に搭載されて飛行を行った。1968年3月に型式証明を取得し、1969年に装備化された[2]

搭載機


注釈

  1. ^ 強い横風に対する機首方位維持には有効であるため、ヨーイングを制御する目的でラダー、エルロンの操作を要する
  2. ^ a b シーハリアーFA.2への搭載も検討されたものの、コスト面の理由から実現しなかったため、海軍仕様は存在しない[5]

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