ミサ ミサの式次第

ミサ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/04 22:41 UTC 版)

ミサの式次第

以下、ローマ典礼における現行のミサ式次第を解説する。

開祭の儀

司祭が入堂し、祭壇についてミサを開始する。信徒・修道者など会衆がいる場合、ミサの初めには「入祭の歌」として聖歌が歌われることが多い。入祭の歌は義務ではないが、歌わない場合は入祭唱を唱えなければならない。初めに司祭と会衆の間で挨拶が交わされ、初めの祈りが唱えられる。次に悔い改めの祈りと司祭による「集祷文」という短い祈り、続いて「あわれみの賛歌」(キリエ)が唱えられ、待降節及び四旬節以外の主日と祭日には「栄光の賛歌」(グローリア)が唱えられる。

ことばの典礼

次に「ことばの典礼」といわれる部分に入る。ここでは平日には2つ、主日と祝日には3つの聖書からの部分が朗読される。それらの朗読は第一朗読、第二朗読(主日と祝日のみ)、福音朗読と呼ばれる。

第一朗読では通常、旧約聖書が読まれるが、復活節に限って『使徒言行録』か『ヨハネの黙示録』が朗読される。第二朗読は使徒の書簡(主にパウロの手紙)が朗読される。第一朗読の後には、「答唱詩編」という先唱者と会衆による章句の繰り返しと「詩編」の朗読が行われる(交読という)が、通常のミサでは歌われることが多い。「アレルヤ唱」(四旬節の期間は「詠唱」)の後で行われる福音朗読はその名前の通り、福音書が朗読される。第一朗読、第二朗読は信徒が朗読することが多いが、福音朗読は司祭もしくは助祭が行うことになっている。福音朗読の時、会衆は起立することになっている。なお、「ことばの典礼」(聖書朗読)の際、現代の日本のほとんどのカトリック教会では新共同訳聖書が用いられている。

福音朗読に続いて、司祭(あるいは助祭)による説教が行われる。説教では通常、その日の福音や聖書朗読の解説がされることが多い。主日と祭日には説教の後で「信仰宣言」が行われる。ミサの国語化以来、日本の教会は洗礼式に用いられる略式の信仰宣言を用いるか、ごくまれに文語訳のニケア・コンスタンチノープル信条クレド)を用いてきたが、2004年に口語訳のニケア・コンスタンチノープル信条が司教団より公式に発表された。従来の使徒信条を唱えることもできるが、略式の信仰宣言は廃止された。

信仰宣言に続き、そのときに応じて意向で唱える「共同祈願」という祈りが唱えられる。

感謝の典礼

カトリック教会聖公会、及び一部プロテスタントで用いられる、「ホスチア」とも呼ばれる無発酵パン。写真のように薄い形状をしたものがよく用いられるが、稀に煎餅のように厚い無発酵パンを用いる教会もある。大きいほうは司式者用、小さい方は会衆用であるが、不足時は必ずしもこれによらない。

ことばの典礼が終わると、パン(「ホスチア」と呼ばれる、小麦粉を薄く焼いた食べ物。これが聖体になる)とぶどう酒、そして水が祭壇へ準備される(これを奉納という)。ここから始まる「感謝の典礼」はキリストの最後の晩餐に由来するものとされ、ミサの中心的部分である。次に司祭によって「奉納祈願」と「叙唱」という祈りが唱えられ、会衆と共に『黙示録』に由来する賛美の祈り「感謝の賛歌」(サンクトゥス)が唱えられる。

次に司祭によって「奉献文」が唱えられ、この中で聖変化が行われる。ここでは司祭がパン(ホスチア)とぶどう酒を取って、キリストが最後の晩餐で唱えた言葉を繰り返す。これによってパンとぶどう酒がキリストの体(聖体)と血(御血(おんち))に変わる、というのが伝統的なカトリック教会の教義である。神学用語では「実体変化(全実体変化)」(: transsubstantiatio)といわれ、これについては歴史上多くの議論が行われてきた。(プロテスタント諸派では、宗教改革以降、パンとぶどう酒が本当にキリストの体に変わる訳ではなく、単なるシンボルに過ぎないと考えたが、カトリック教会はトリエント公会議での議論によって改めてこれを否定、現代に至っている。)

交わりの儀

奉献文に続いて、福音書の中でキリストが弟子たちに教えたとされる「主の祈り」が唱えられる。そして司祭の祈願に続いて「平和の挨拶」という司祭や会衆同士のあいさつが行われる。さらに「平和の賛歌」(アニュス・デイ)が続き、司祭はパン(聖体)を裂いて一部をぶどう酒(御血)に浸す。司祭が聖体を食べ、御血を飲む。これを「聖体拝領」(聖餐)という。司祭(または助祭)は続いて聖体を信者に配り、信者も聖体拝領を行う(非信者は同席出来るが受けられない)。通常はパン(聖体)のみだが、場合によっては信者もぶどう酒(御血)を飲むこともある。聖体拝領が終わると、司祭が拝領後の祈りを唱えて交わりの儀がおわる。この場合の「交わり」というのは、神と人との交わり、参加者同士が同じ聖体を受けて交わるという意味である。

閉祭の儀

拝領後の祈りのあと、信徒・会衆への連絡などが行われることがある。続いて司祭の祝福とミサからの派遣が行われる。ミサの終わりにも「閉祭の歌」として聖歌が歌われることが多い。なお、司祭と会衆との間に交わされる「最後の交唱」でミサは終わりなので、閉祭の歌そのものは義務ではない。


注釈

  1. ^ "おみさ"ではない。外来語(カタカナ語)に「ご」が付く非常に稀な例である。
  2. ^ たとえばカトリックの葬儀に参列する際の香典の表書きは「御弥撒料」とも書かれる、と紹介されていることが書籍やネットなどで見受けられるが、これは誤りで、そもそも漢字でなくともカタカナの「御ミサ料」も、実際にカトリック信者の間で香典の表書きとして用いられることはない。カトリックの葬儀の際の香典には「お花料」と書かれるのが一般的である。なお、葬儀ミサや追悼ミサなどの依頼・謝礼として遺族が司祭に渡す際の表書きとして「御ミサ料」と書かれることは無くはないが、その場合でも「ミサ御礼」という表書きの方が一般的によく用いられている。(参照:女子パウロ会オンラインショッピング 封筒(お花料、お祝い、お見舞い、お礼他)

出典

  1. ^ a b c d 新要理書編纂特別委員会/編、日本カトリック司教協議会/監修(2003年)『カトリック教会の教え』197頁、カトリック中央協議会、ISBN 9784877501068
  2. ^ a b 及川信『オーソドックスとカトリック―どのように違うのか歴史と多様性を知る』 第二部 三「ミサではないのに」 139頁 - 140頁、サンパウロ ISBN 9784805612279
  3. ^ 「冷水に入るロシア正教の洗礼式」は誤報?”. GoHoo. 日本報道検証機構 (2014年2月6日). 2014年2月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月26日閲覧。
  4. ^ a b 『キリスト教大事典 改訂新版』1033頁、教文館、昭和52年 改訂新版第四版
  5. ^ 日本聖公会 名古屋聖マタイ教会のご案内”. 2014年2月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月26日閲覧。
  6. ^ カトリック要理の友:第25課 ミサ聖祭”. 心のともしび. 2012年5月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月26日閲覧。
  7. ^ 1869年に発行された「弥撒礼拝式」(「プティジャン版集成」(雄松堂書店))など
  8. ^ Et propter hoc etiam Missa nominatur. Quia per Angelum sacerdos preces ad Deum mittit, sicut populus per sacerdotem. Vel quia Christus est hostia nobis missa. Unde et in fine Missae diaconus in festis diebus populum licentiat, dicens, ite, Missa est, scilicet hostia ad Deum per Angelum, ut scilicet sit Deo accepta. IIIª q. 83 a. 4 Ad 8
  9. ^ In fine Missae pro sanctis invitamur ad illam gloriam in qua sancti jam requiescunt, per ite, Missa est, quasi dicat: hostia a patre nobis missa est, vel a nobis ad patrem remissa est, ideo festinate ingredi ad illam requiem. Richardi de Wedinghausen Expositio Missae
  10. ^ 35.最後の晩餐で何があったか?”. オプス・デイ. キリストを知る. 2018年4月6日閲覧。
  11. ^ ミサについて”. ようこそカトリック教会へ. カトリック東京大司教区. 2015年1月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月26日閲覧。


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