ポイントプログラム 概要

ポイントプログラム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/25 09:27 UTC 版)

概要

ポイントは商品購入と引き換えに発行されることが多いが、インターネット上の広告の閲覧や株式の保有と引き換えに発行されることもある[1]。そのポイントを記録するための媒体(ポイントカードなどの専用カードや会員証など)にポイントを記録して蓄積する。蓄積されたポイントは、(多くの場合)次回以降の商品・役務の購入時などに利用したり、一定数量のポイントを商品券に引き換える。小売業やサービス業(専門店系チェーンストアや、ホテルクレジットカードなど)で多く行われている。昨今は、レジ袋が不要の客にポイントを与える事もある。

ニールセン世界小売業ロイヤルティセンチメント調査[注 1]はポイントの報酬(reward)を金銭的報酬と非金銭的報酬に分けており、金銭的報酬には商品の割引、払い戻し、キャッシュパック、送料の無料化または割引、無償の商品の提供があるとする[2]。また、非金銭的報酬には、優先度の高いサービス、特売品等への専有的アクセス、特別客としての認証、個人化された商品やサービスの提供、慈善活動への寄付がある[2]

ポイントは企業が自社商品や自社サービスの値引きを約束することで、顧客を競合企業から自社に囲い込む企業の戦略として用いられている(ロックイン効果[3]。一方で、家電量販店などにおける、販売価格の1割以上を超すようなポイント還元サービスは、実際の所はポイント還元分を本来販売すべき価格に上乗せしているに過ぎず、販売促進の枠を超えて、顧客が自ら費用を負担して囲い込みされているに過ぎないという指摘もある。一部の量販店では、ポイント還元分をポイントサービスに充当するか、または還元分を値引きして販売するか(その場でキャッシュバックということになる)、客に選択させる場合もあり、ケーズデンキのようにポイント制を導入せず「その場でズバッと現金値引き」をモットーにしている家電量販店もある。

ポイントプログラムには自社製品や自社サービスのみの個社発行ポイントと多くの加盟店が参加する「プラットフォーマー型企業発行ポイント」がある[3]。プラットフォーマー型企業発行ポイントにおける囲い込みは、多くの顧客を会員とすることで自社プラットフォームを拡大するために活用されており、これによって複数のポイント経済圏が出現するといわれている[3]SuicaPASMOIC乗車カード全てがそのままポイントカードとして利用できる、地域ポイントカードのシステムも開発・運営されており、東京都内のJRや私鉄沿線の商店街では利用客の大多数がSuica等を所持・携帯していること、新規カード発行費用の負担削減、等の理由からこのシステムを導入する動きが広まっている[4]

ポイントプログラムはセールスプロモーションの一種であるが、クーポンなどとは異なり消費者の購入履歴の収集を行うことができる[1]。ポイントによる消費者の会員化により、顧客の購買履歴を通して消費者にあったマーケティングを行う消費のカスタマイズ化も進んでいる[3]。行動経済学の観点からは多くの商品にポイントが付与されるポイント経済化により、合理的な行動との乖離が誘導される可能性も指摘されている[3]。ポイントによる値引き率は0.5〜1%程度であり決して高くないが、顧客は必ずしも値引き率を合理的に計算して判断しているとは限らない。ポイントをためられることが顧客の心理に与える効果も無視できないという見方もある[5]

また、物価の観点からは、ポイント還元率の分だけ購買価格は下がっているが統計上は現れないため、物価指数が消費者の購買価格を反映しにくくなることも想定されている[3]

個社発行ポイントの場合にはロックイン(囲い込み)が目的だったため一般受容性は小さかったが、プラットフォーマー型企業発行ポイントには現金化が可能なものや投資が可能なものもあり一般受容性の高い貨幣的要素が強くなっている(疑似貨幣化)[3]

ポイントには有効期限が設けられていることが多いが、テロ暴動感染症など有効期限内の利用が困難な事態が生じた場合は、有効期限が延長されることもある。

商品の価格改定があった場合や、料金の過徴収があった場合は、改定前後もしくは正規料金との差額をポイントで割り戻す場合もある。


注釈

  1. ^ : Nielsen Global Retail Loyalty-Sentiment Survey
  2. ^ とくに大学などの教育機関で見られる。年度予算執行の関係上、4月の出張旅費の費用精算が7月までずれ込むケースも見られる。
  3. ^ 例:携帯電話会社は独立項目としているが、航空会社はしていない。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n 小本 恵照「進化するポイントカードとその将来性」 ニッセイ基礎研REPORT 2007.2、2020年6月10日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n NTTデータ経営研究所「諸外国における金融関連制度とその運用実態等に関する調査」 金融庁、2021年9月7日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h 翁百合「ポイント経済化について〜マクロ経済や金融システムへのインプリケーションを探る〜」 日本総研、2021年9月7日閲覧。
  4. ^ ITpro (2008年3月26日). “Suicaを地域ポイントカードとして活用、都内の駅前商店街で導入広がる”. 2008年7月20日閲覧。
  5. ^ ITpro (2009年5月7日). “なぜ「20%ポイント還元」がなくならないのか?――行動経済学を知る”. 2009年5月7日閲覧。
  6. ^ ポイント経済圏、囲い込み ペイペイ…攻勢切り札、非導入店でも付与 楽天…トップ死守へスーパーと連携:朝日新聞デジタル
  7. ^ JALグローバルクラブ
  8. ^ [1]
  9. ^ 高木浩光@自宅の日記 - 「Tポイントカード3人に1人が持つ」は本当か、街角で聞いてみた
  10. ^ プライバシーフリークの会(山本一郎、高木浩光、鈴木正朝) - 第1回プライバシーフリークカフェ「個人を特定する情報が個人情報である」と信じているすべての方へ「この共通ポイントカードというものがそういった一般ポイントカードとどこが違うかというと、共通ポイントカードというのは、A社、B社、C社、D社・・・と始めは10社くらいから始まったものが、やがて400社になって、そして1万社になって、それぞれの事業者がそれぞれ専門のいろいろな商品を売っているわけですが、それらの履歴が横に全て横断的につながってしまうということになるわけです。その消費者のライフスタイルがわかってしまう。分野横断によってプライバシー侵害が起きてくる面がある。しかし、それは約款に示されている、ただでポイントがつくわけがないだろうと、消費者に対して「ITリテラシーがない」「情弱が悪い」というような感じで責めるところもあるのだろうけど、それでよいのか?ということです。そのようなビジネスモデルや情報システムの仕組みを誰もが理解できるのだろうかと。それをして「非対称性」とよく言いますが、日々拡大の一途です。消費者の同意があるといってもその前提が崩れてきています。それに日本は高齢者社会ですからね。これをそのまま放置してよいのか?ということが問題意識としてあります」
  11. ^ 小社会 財布をのぞくと、さまざまなカードが入っている。…
  12. ^ これでポイントはもう逃さない!大量のポイントカード管理術
  13. ^ 【LINE】“LINEのおサイフ”「LINEウォレット」にお得で便利な新機能「マイカード」、「LINEクーポン」を本日より追加





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