フリーター 対策

フリーター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/16 17:40 UTC 版)

対策

政府は2010年までに、フリーターをピーク時の8割(約174万人)に減少させるという目標を掲げている。政府がフリーター対策として検討しているものには、以下のようなものがある。

但し、最近までは若年者が35歳未満に限定されていて、35歳以上になると何ら対策がされていないも同然だった状態が長く続いていた。そのような批判もあったのか、最近では若年者を30歳代までに緩和する傾向が一部で見られており、40歳代以上への対策が今後課題になるものの、35歳以上のフリーター減少にも力を入れている。

就業支援

内閣府はフリーターに対する就業支援策として、職業能力の開発に主眼をおいた制度の拡充に取り組んでいる。しかし、多くのフリーターは「学習時間が固定されている」・「通学時間を確保できない」・「経済的なゆとりが無い」[注釈 5]等の理由から、こうした制度を活用する事ができず、さらに踏み込んだ内容の支援策が求められている。

インターンシップ

学生が在学中に企業に赴き、職場体験を行う制度。フリーターになる要因の一つとして、働くことの意味を考える機会が少ないことが指摘されており、インターンシップ(インターン)で職場体験の機会を得ることによって、職業観を醸成することができるとされている[31]

トライアル雇用

原則3ヶ月の試用期間を経験し、その後、雇用主と求職者の双方の合意によって、正社員に採用されるという制度。2001年12月より実施。対象者は35歳未満、45歳以上、母子家庭の母などの求職者で、申し込みはハローワークを通じて行う。雇用主には奨励金が支給される等の利点があり、求職者には就職の機会が広がるという利点がある。ちなみに2004年度はこの制度を利用した人の8割(約3万人)が正社員として採用された。

ジョブカフェ

若年者を対象とする就業支援施設。ハローワークや都道府県、市町村、企業との連携による就職面接会「ジョブカフェスタ」や「就職基礎能力速成講座」など、就職に役立つセミナーなども開催されている。

雇用における年齢制限の禁止

雇用対策法や平成16年12月に施行された高年齢者雇用安定法などにより、企業には雇用の際の年齢制限をしないという努力義務があったが、年齢制限による門前払いを防ぐため、自民・公明党による与党協議会で、雇用対策法改正案で年齢制限の禁止を努力義務から禁止事項にすることで合意している[32]。この改正によって平成19年10月1日から労働者の募集・採用時に年齢制限を設けることが禁止された[33]

しかし、日本において応募者の年齢制限を設けない求人が義務付けられても、実際にどの応募者を採用するかは従来通り企業側の裁量に委ねられており、あくまでも若い人物だけを優先的に採用しようとする企業側の姿勢は従来と全く変わっていないため、募集・採用時の年齢制限の禁止が高年齢求職者の採用増加に結び付いているとは考えられないとする批判が強い。実際にも、新聞の求人広告や求人雑誌では、改正雇用対策法施行以降は具体的な年齢制限を記載していなくても、たとえば「20-30代活躍中」などと記載したり、若い従業員だけが働いている写真を求人広告に掲載することで、求人の年齢制限を間接的にアピールしている企業は極めて多く、また電話による求人の問い合わせの際にも、ほとんどの企業は例外なく応募者の年齢を尋ねており、一定以上の年齢の応募者に対しては年齢を聞いた時点で応募を拒否したり、形式だけは面接を行っても実際には色々な理屈を付けて採用しない等の差別行為を公然と続けている。また、公共職業安定所ハローワーク)に提出される求人についても、「長期勤続によるキャリア形成のため」などの名目で合法的に年齢制限を設けることが可能であるため、改正雇用対策法は何の意味もなしていないとする批判も強い。

これに対し、年齢よりも本人の能力やキャリアが重視されるアメリカの社会においては、見た目や年齢を基準とする求人の差別を防ぐため、履歴書に応募者の年齢・生年月日・性別などを記入する欄はなく、また応募者の写真を貼る欄も存在しない。また、正式に採用が決まるまでは、企業側が応募者の年齢や生年月日を尋ねたり、応募者の年齢や生年月日を書面に書かせたり、応募者の年齢や生年月日が分かる物(身分証明書など)を提出させたりすることも法律で禁止されている[注釈 6]。このようにアメリカと同じく「履歴書における年齢や生年月日の欄を撤廃すること」および「採用決定前に企業側が応募者の年齢や生年月日を尋ねる行為を禁止すること」を法律で定めない限り、日本の社会から年齢を基準とする求人の差別が減ることは有り得ないとする意見も存在する。

教育

文部科学省はフリーター増加の問題を受けて、学校教育における職業観の醸成や、職業能力の向上に注力している。その一例については後述するが、文部科学省が教育面を重視しているのは「若年層の就業意識の低下がフリーター増加の原因である」という考え方に基づくものである。

キャリア教育

文部科学省は、フリーター・ニートの増加が、若者のモラルの低下が主因であるとの判断から、通常の授業時間を削減し、企業側の要請に応じ、「職場体験」をはじめとしたキャリア教育を推進している。

代表的なものとして、同省の委託事業として小・中・高校の主に総合的な学習の時間などで「フリーター・ニートになる前に受けたい授業」と題する予防授業が2005年度・2006年度に専門学校講師・鳥居徹也によって実施されていた。しかし、このようなキャリア教育は不適切であるとする指摘もあり、現在は同省の委託事業ではなくなっている(ただし、助成金は付与されなくなったものの、この人物が個人で継続している)。


注釈

  1. ^ 特に1980年代はアイドル全盛期であり、ミュージシャン俳優に憧れる若者が多く、彼らは芸能人を目指したり、就職せずにアルバイトで生計を立てる者が多かった。
  2. ^ バブル期は新卒でさえあれば面接一回のみで大手企業に入社ができたような状況が一変し、求人募集はするが採用者を極力少数に抑える企業が増え始めた。
  3. ^ 2003年度の内閣府「若年層の意識実態調査」により、氷河期フリーターの過半数(男性は90.9%以上)が就職を希望していることが分かっている。逆に、フリーターを続けたいと希望している者は8%に過ぎなかった。「意識」の項に出典へのリンク先あり。
  4. ^ 逆に、仕事を確保するために、安値で仕事を大量に請け、従業員に過酷な薄給激務を負わせる所も多い。月に552時間の労働時間にヤクザまで使う日本の 会社にイギリス人もびっくり!-レインダンス映画祭
  5. ^ 職業訓練を受ける場合、アルバイトを含めて仕事をしていないことが条件となるため、収入が途絶えてしまう。
  6. ^ アメリカでは、応募者の年齢や生年月日について企業側が質問を許されているのは「年齢は18歳以上であるか」「正式に採用が決まった時に、応募者の身分を証明できる物を提出できるか」の2点のみである。

出典

  1. ^ 大都市の若者の就業行動と意識の分化 ―「第3回 若者のワークスタイル調査」から―」『労働政策研究報告書』第148巻、労働政策研究・研修機構、2012年。 
  2. ^ a b c 「フリーター」とは誰なのか」(PDF)『日本労働研究雑誌』第46巻第4号、労働政策研究・研修機構、2004年4月、46-49頁、NAID 40006184798 
  3. ^ a b c d 大都市の若者の就業行動と意識の分化 ―「第4回 若者のワークスタイル調査」から―」『労働政策研究報告書』第199巻、労働政策研究・研修機構、2017年10月20日。 
  4. ^ 日本標準職業分類一般原則 職業の定義より
  5. ^ 『平成15年版国民生活白書』, 内閣府,2003年発行
  6. ^ OECD Labour Force Statistics 2020, OECD, (2020), doi:10.1787/23083387 
  7. ^ [1]
  8. ^ a b c 平成18年度国民生活白書
  9. ^ a b 平成15年版国民生活白書
  10. ^ 2006年12月1日付 読売新聞『フリーター選択の理由は「夢追求」…5年前に比べ増
  11. ^ 氷河期世代ユニオン
  12. ^ 仁井田典子「マス・メディアにおける「フリーター」像の変遷過程 : 朝日新聞(1988-2004)報道記事を事例として」『社会学論考』第29巻、首都大学東京・都立大学社会学研究会、2008年10月、107-146頁。 
  13. ^ ―平成16年雇用管理調査結果の概況― フリーターについて
  14. ^ 2010.4.9 じつは派遣より悲惨!“ブラック化”する外食・小売チェーンの正社員たち|格差社会の中心で友愛を叫ぶ|ダイヤモンド・オンライン
  15. ^ 35歳の平均年収 1997年:500~600万 2009年:300万 「若い頃の将来像と違う」 - newsing(ニューシング)
  16. ^ 年収200万以下、若者の4割強 兵庫県内労組調査 奈労連・一般労組支援
  17. ^ e-stat 一般職業紹介状況 2009年10月
  18. ^ 第1回 なぜいま「農業ブーム」か|農業には日本を変える力がある|WEB連載|新しい日本を創る提言誌 Voice+ ボイスプラス
  19. ^ 《農業労働現場の実情》(上) 農業ブームの陰に隠された低所得・重労働・労災多発の世界 - 日刊ベリタ 2009年08月18日11時01分掲載
  20. ^ 内閣府 (2020). 令和2年版子供・若者白書 参考資料10 巻末5-9 フリーター(パート・アルバイトとその希望者)の数 (Excel) (Report). 2021年5月11日閲覧
  21. ^ 厚生労働省・労働経済白書
  22. ^ 厚生労働省・労働白書
  23. ^ 平成15年版国民生活白書 (PDF)
  24. ^ リクルートワークス研究所
  25. ^ 2006年版 中小企業白書>第3部 少子高齢化・人口減少社会における中小企業>第3章 「子どもを産み育てやすい社会」に向けた中小企業の役割>第2節 若年者雇用の不安定化の概況
  26. ^ a b c d e 週刊東洋経済』2007年6月23日号
  27. ^ 2006年版 中小企業白書中小企業庁
  28. ^ 『新平等社会』 山田昌弘著 文藝春秋 2006年9月[要ページ番号]
  29. ^ 2006年版 中小企業白書』(中小企業庁)
  30. ^ 丸山俊『フリーター亡国論』ダイヤモンド社 2004年[要ページ番号]
  31. ^ 千葉県インターンシップ推進事業について
  32. ^ 2007年1月24日付け朝日新聞 『求人の年齢制限禁止 与党協議会で合意へ』
  33. ^ 雇用対策法及び地域雇用開発促進法の改正について





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