ドライサンプ ドライサンプの概要

ドライサンプ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/20 08:01 UTC 版)

ドライサンプの模式図

概要

ウェットサンプ方式では、ベアリングなどに供給されたオイル(潤滑油)は自重によりエンジン下部のオイルパンに戻り、それをフィードポンプ(供給ポンプ)が再び摺動部に供給する。オイル回収がエンジン内部の自由落下によるため、エンジンコンディションにより回収量が安定しない[要検証]。また、一般にオイルパン形状が垂直方向に浅い皿形式となるため、運転中の横Gによるオイルの傾きなどによりフィードポンプが空気を噛み、オイル圧送が安定しない場合がある。

ドライサンプ方式は、エンジンコンディションの安定のためオイル圧を安定させることを目的とする。対象は主に安全マージンの少ない高性能車である。上記ウェットサンプ同様にオイルパンに戻ったオイルをスカベンジポンプ(回収ポンプ)で強制回収し、専用のリザーバタンクに貯めた後、フィードポンプによってオイルを供給する方式である。スカベンジポンプの能力はフィードポンプ容量以上に設計され、リザーバタンクに安定した油量を確保し、フィードポンプの安定した油圧を保証する。

ドライサンプ方式はつぎのような利点がある。

  • オイルタンクに安定した油量が確保でき、高い旋回Gを受けても安定したオイル供給がなされる前提のエンジン設計が可能。
  • オイルタンク容量を大きくすることが容易である。
  • オイルパンの厚みを薄くして、その分だけエンジンの取付位置(重心)を下げることができる。

これらの利点のため、レーシングカーや高級スポーツカーなどのエンジンでは、ドライサンプ方式が採用されることが多い。いかなる姿勢でも安定してオイルが供給されるため、曲技飛行に使用される飛行機のエンジンにも採用される。

欠点としては、構成が複雑になり部品点数が増すことであり、それに伴いコストや外部に露出したオイルライン・フィッティング部からのオイル漏れ等のトラブル確率が高くなる。

ドライサンプ方式の車には

  • ウェットサンプと同等の容積のオイルパンを使用し、その中にスカベンジポンプを内蔵したタイプ
  • 専用のほとんど容量のないオイルパンを使用し、外部にスカベンジポンプを設置したタイプ

の2種類が存在する。 前者の構造はポルシェフェラーリの量産車、コルベットZ06などに採用されている。(フェラーリでは多少薄い形状のオイルパンではある) 後者の構造は部品点数・信頼性の問題から市販車で採用されるものはほとんどない。

オイルパン部分にタンクを設置し、自由落下によるオイル回収とスカベンジポンプによる強制オイル回収を併存させたセミ・ドライサンプと呼ばれる方式もあり、水冷化以降のポルシェ911/ボクスター/ケイマン日産GT-RレクサスIS-Fなどに採用されている。

オートバイの場合

オートバイ用の場合は、オイルパンの厚さを薄くできる利点を利用して最低地上高を確保することを狙って採用される事が多い。また2輪車の特性上、4輪車と比べて前後左右の傾き量が運用上[要説明]大きく、エンジン直下オイルパンへの自由落下での安定回収が難しい局面[要説明]がある。また、オイルタンクに関しては車体フレーム内の空洞を利用する場合がある。




「ドライサンプ」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ドライサンプ」の関連用語

ドライサンプのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ドライサンプのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのドライサンプ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS