スクールバス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/25 01:36 UTC 版)
アメリカ合衆国におけるスクールバス
アメリカ合衆国では、19世紀末期から20世紀初頭にかけて、都市近郊から遠く離れた地域の生徒のために運行が開始された。しかし次第にスクールバス導入は、広い国土や通学の安全性よりも、人種問題の解消が目的とされるようになってきた。20世紀半ばまでアメリカは白人の通う学校と黒人の通う学校に分かれていた。1954年に合衆国連邦最高裁が人種で学校を分けることを違法としたが、郊外化が進む中で白人は郊外に、黒人はインナーシティにという人種の住み分けが起こってしまい、学校における人種の偏りは改善されないままであった。
その解決法として考案されたのが、人種統合バス通学(Desegregation busing)である。1971年に連邦最高裁が合憲としたもので、「強制バス通学」とも呼ばれる。白人とマイノリティーの割合が一定になるように、黒人を郊外へ、白人を都心部へ通学させたため、多くの子どもたちが自宅から遠く離れた学校へ通うことを余儀なくされた。その後マグネット・スクール、チャーター・スクール、越境通学、ホームスクーリングなど多様な教育形態が生まれたことで、ようやく1990年代に強制的なバス通学は終わった。
近年は人種統合という目的よりも、ますます郊外が広がり徒歩や自転車による通学が長距離となり困難または犯罪や交通事故に巻き込まれるのを防ぐため、そしてマグネットやチャーター・スクール、ESL、特別支援教育といった学区全体(日本の都道府県に相当する面積のものもある)の生徒を対象にした学校が様々な場所に位置するため、通学にバスが利用されている。
その一方、バスの代わりに自家用車で通学する子どももいる。いわゆる「カギっ子」状態は、アメリカにおいては保護者が児童虐待の疑いを受ける可能性があり、バスの到着時刻前に両親ともに出勤する共働き家庭では、親が出勤途中に学校で子どもを降ろして、始業時間まで早朝学童保育 (Before school Program) に預けるのが一般的である。また少数だが、小学校低学年ではスクールバスでの喧嘩やいじめを避けるために、親が車で送り迎えをする家庭もある。このほか、学区を越えた通学はバスのサービスを受けられないことが多く、車で通学する。
スクールバスは、小・中・高校の始業時間を時間差にして使い回しすることもある。一般的には高等学校の始業時間が最も早い。理由の一つとして、小学生以下の放課後のカギっ子状態を避けるため、中高生の兄や姉が先に帰宅して迎えられるよう配慮されているためである。高校の校区は広大であるためバス路線も長く、午前6時前後に到着するような地域もあるため 運転免許証を取得して自分の車で通学する高校生も多い(路線バスが発達した地域では、高校生がスクールバスではなく一般のバスを利用する学区もある)。また、登下校以外(遠足など)にもスクールバスを利用する。
車両
アメリカ合衆国では単に「スクールバス」といった場合、黄色い車両のことを指すことが多い。スクールバスはすべて黄色(スクールバス・イエロー)でなければならないと連邦統一安全規格によって決められている。トラックのシャシーにコーチビルダーが車体を架装したものが主流で、大きさや外観によってA, B, C, Dの4つの規格区分が存在する。
また道路上での立場は、自家用車と比較するとかなり高い。その一例として、スクールバスが学生の乗降を扱っている際のルールが挙げられる。乗降扱い中は、運転席上部のライトが点滅、車両側面からSTOPと表記された赤い八角形のサインボードが出て、子どもがむやみにバスの前を横切らないよう遮断バーが前方に飛び出す。この時、後続車はたとえ片側に何車線あっても追い越しを行なってはならない。また中央分離帯がない場合は、対向車も停止しなければならないことになっている。このため、アメリカで自動車を運転する場合は、特にスクールバスに対する注意が必要となる。
注釈
- ^ 厚岸町デマンドバスのように地域交通が限定されているため一般旅客にスクールバスを利用するように案内している場合もある。
- ^ a b 特別支援学校とは、養護学校、盲学校、聾学校が法改正により同一名称となったものである。
- ^ この場合、運行するバス事業者が元々路線バスや観光バスとして使用していた車両をスクールバス専用に転用させることも多く、特に特別支援学校のスクールバスに転用させる場合は8ナンバーでの再登録が行われることが多い。
- ^ 道路交通法第20条の2 の適用を受ける。
- ^ 都営バス学バス系統や東武バス系列に多い。
- ^ 獨協埼玉中学・高校の文化祭「蛙鳴祭」のパンフレットにはバス時刻表が掲載されており、有料便と無料便の双方が存在する旨の注意書きがある。
出典
- ^ “● 企業の従業員やお客様向けの送迎バス・・・貸切バスで企業の専用車として”. さくら自動車株式会社. 2022年5月18日閲覧。
- ^ a b “一般貸切旅客自動車運送事業者と旅行業者等との間で締結する年間契約等に対する取り扱いについて”. 国土交通省 中部運輸局. 2022年5月18日閲覧。
- ^ “カリタス小、5日再開 市バスチャーターし乗り場も変更”. アサヒ・コム. 朝日新聞社. (2019年6月4日) 2019年6月22日閲覧。
- ^ “道路交通法”. e-Gov. 2020年1月10日閲覧。
- ^ “道路運送車両の保安基準”. e-Gov. 2020年1月10日閲覧。
- ^ 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 (PDF)
- ^ “一般貸切旅客自動車運送事業によりスクールバス運送を行う場合における運賃及び料金について”. 公益社団法人 広島県バス協会. 2022年5月19日閲覧。
- ^ “最近のガザ情勢について”. 外務省 外務報道官談話 (2011年4月11日). 2018年8月19日閲覧。
- ^ “子ども40人の命奪った爆弾、米国が供与と判明” (2018年8月18日). 2018年8月19日閲覧。
- 1 スクールバスとは
- 2 スクールバスの概要
- 3 日本におけるスクールバス
- 4 アメリカ合衆国におけるスクールバス
- 5 事件・事故
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